Red Line 第9話
父の過去を知ってケジメをつけたら
俺は決断せねばならない
未来の選択を
【Red Line 第9話】
その週、カガリは仕事帰りに養父からの電話を受け取っていた。
『最近お前がこっちに顔出さないから、どうしてるのかと思ってね』
「あ…ごめんなさい。お養父さま」
『いや、謝ることはないが』
バツが悪そうに視線を落としたカガリの耳に、とんでもない養父の直球が届いた。
『まさか、いい人でもできたのではないか?』
「!」
フレイに図星をさされたときとほとんど同じ流れだった。
それもそのはず、カガリはアスランと出会ってから週末はいつも彼と過ごしているのだ。
近しい人が勘付くのも当然のこと。
「え…っと、……はい…///」
亡き母にはすぐ報告したものの、ウズミに対してはやはりまだ照れくささが大きくて。
それでもカガリは正直に答えた。
アスランに「いつか会ってほしい」と言ったのだから、養父にも遅かれ早かれ言わなければならなかったのだ。
「すごく真面目で……、私のことを大事にしてくれる、優しい人です…」
真面目すぎて少し困ったところもあるけど、とカガリは笑みをこぼしながら心の中で付け足した。
そういうところも愛しいと思ってしまう自分が重症だと思う。
『そうか…。お前も大きくなったのだな…』
「もう25ですよ」
『そうだな。いや…こういうとき娘を持つ父としてどう返していいか分からなくてな。参ったよ』
「ふふっ、たぶん、どんな立派な男性でも一度は反対するのが一般的な父親像だと思いますけど」
アスランは、ウズミに反対されるような人ではないと確信しているからこそ、カガリが飛ばした冗談だった。
ウズミもそんな娘の性格を分かっていた。
お前が幸せならば、それで……
『また今度家に連れてきなさい。一緒に酒でも飲み交わしたいものだ』
そう言って、ウズミは電話を切った。
このとき―――もしカガリがアスランのフルネームを出していたらどう変わっていたか―――
それはまだ誰も分からなかった。