Red Line 第8話
例えば数年後
きみは他の男と結婚して
子どもを抱いているのだろうか
そのとき 俺は
【Red Line 第8話】
『…安心しろ。俺から彼女に真実を話すつもりなんてない』
『お前らの関係がどうこう以前に、他人の出生の秘密なんて軽々しく口に出すもんじゃないからな…』
『だが、このままでいいとも思っていない。……お前のためにも、だ』
ハイネがそう言って帰った後、アスランは父の一周忌を滞りなく終えた。
ザラ家の墓を見つめながら、「なぜ貴方は隠し子などを…」と父に恨み言を言いたくなった。
しかし、父が浮気をしなければ、カガリはこの世に誕生しなかったのだ。
そして―――兄妹じゃなければ二人が出会うこともなかった。
きっと・・「なぜお前はそのような禁忌を犯している」と責めているのは父の方だろう。
「あれっ、アスラン!? どうしたんだ急に」
一周忌の帰り、アスランが喪服のまま寄ったのは、カガリの住んでいるマンションだった。
今晩は会う予定はなかったため、カガリは驚いていた。
「…ごめん、仕事してた?」
「ううん、そんなのもう昼間のうちに終わったけど。その服…家に帰らずにここに?」
「………」
無垢な琥珀の瞳に、自分が写っているのが、ひどく切なかった。
永遠に一緒にはいられないから…少しでも君と…。
「カガリが…欲しくなって…」
幻に触れるかのように―――
ゆっくりと手を伸ばして、愛しい人を抱きしめた。