Red Line 第5話
泣きそうなほどの幸せが、そこにあった
逃げ切れない罪悪感と共に
【Red Line 第5話】
・・・指を絡めた二つの手が、力なくシーツに沈んだ。
自分の腕の中で意識を放棄したカガリを見届けて、アスランの獰猛な欲はやっと身を潜めていく。
「…っは、……はぁ、は……」
呼吸を整えながら、眠り姫の瞼と頬にキスを落とした。
ほんの数時間前まで…キスどころか手を繋ぐこともできなかったというのに。
「……カガリ―――…」
―――時計は、まだ日付が変わったばかりだった。
濡れた二人分の衣服はベッドの下で折り重なっている。
…雨の中のキスの後。
自宅マンションに連れ込んで、毎晩カガリのことを思い浮かべていたこのベッドで、彼女を抱いた。
あのキスのままの激しさで。
もう何も…言葉も欲望も抑えなくていいという解放感に満ちて
何度も愛してると囁きながら、柔らかな身体すべてを夢中で貪った。
この世に、こんなに幸せなことがあるなんて思わなかった…。
悦びで全身が震えた。
でも
それはほんのひとときの事だった
行為を終えて、あどけない彼女の寝顔を見ていて、そこから襲いかかってくる苦しみは。
「……っカガリ…」
幸せな気持ちをあっという間に黒く染めていく。
「ごめん…カガリ…、っ……ごめん……」
誰も聞いていないその謝罪は、翡翠からの雫と同時にこぼれ落ちた。