Red Line 第10話
君という光を失くした時
俺はどうやって生きていけばいいのか
まだ答えは見つからない
【Red Line 第10話】
「うーん……」
自宅マンションに帰ってきたカガリの頭を占めていたのは、やはりあの写真の男性のことだった。
今日アスランの部屋で見た…彼の父親の。
どこかで見たことがあるような気がするものの、どうしても思い出せなかったのだ。
どこだっけ……。
アスランの父親は大学の客員教授をしていたというから、その関係だろうか。
彼の論文や講義を、自分は見たことがある…?
いや、アスランの父親がいたというK大学は、自分の大学とはまったく関係ないものだ。
では、一体どこで…?
カガリは人の顔や名前を覚えるのは得意である。
元々そうだったこともあるが、小学校の教諭をしている以上、一度で覚えられなえれば困るのだ。
生徒はもちろん保護者・学校関係者・教育委員会・卒業生…たくさんの人と関わり合う仕事なのだから。
だからこそ、この思い出せない状況が、スッキリしなかった。
喉元になにか引っかかっているような感覚。
インターネットで検索してみる。
“K大学 ザラ客員教授”
ヒットした。
顔写真付きで、パトリック・ザラと名前が出てきた。
やはり、顔には覚えがある。
名前にはあまりピンとこないが。
―――きみが…カガリ・ヒビキさんだね―――
「え……?」
今、頭の中で声の記憶が甦った気がした。
この男性の声だ。
私は、この人の声を知っている。
見たことがあるだけではなく、やはり、私は会っているのだ。
アスランの父親に。
そして、向こうも私のことを知っている。