Vivid Colors 番外編
「君も1年生ってほんと?」
もし相手が女の子だったら、これはナンパと言うのだろうか。
昔から人見知りしないキラ・ヤマトという少年は、今日初めて会った男に興味本位で声をかけていた。
【Vivid Colors 番外編】
オーブ学園の体育館。
そこでオーブとAA学院の定期試合が行われ、辛くも2点差でオーブが勝った。
その後すぐ、藍色の髪の男は話しかけられ、声の主を見ると
それは先ほどの試合で当たったばかりの男だったのである。
その相手の真意が掴めなくて、アスランは一瞬怪訝な表情になった。
もともと人と関わるのが苦手なのもあった。
しかしすぐに相手の好意によるものだとわかり、そんな表情も消える。
それでもアスランの顔は笑顔とは程遠かったが。
「僕も1年なんだ~。同い年の子がいるなんて、なんか嬉しいな」
「…そう」
「あっ、突然ごめんね。僕キラ・ヤマトって言うんだ」
「……」
「君は?」
「…え?」
「君の名前!」
「俺は…アスラン・ザラ」
「そう、アスランね!」
名乗った直後に人懐っこく名前を呼ばれ、アスランは少しだけ目を見開いた。
こんなことは初めてだった。
そうして2人は他愛ないバスケの話をした。
といっても、ほとんどキラが一方的にしゃべっているだけで
アスランは「ああ」とか「まあな」などと静かに相槌をうつだけだったのだが。
それでもアスランにとっては、初対面の人間とここまで話したのは奇跡かもしれない。
先にバスケを通じて相手を知ったせいか、そんな状況にあまり悪い気がしなかったのだった。
そんな風にしばらく話していると、オーブの制服を着た女子が1人、アスラン達に近づいてきた。
「あの…ザラくん…。ちょっといいですか…」
もじもじと恥ずかしそうに、聞こえるか聞こえないかの小さな声が発せられた。
ザラ君と言われても、アスランはそんな少女に見覚えはない。
女の子の様子で、キラは「ああ…」と思った。
あからさまに頬を染めているので、わからない方がおかしい。
きっとアスランもわかっているだろう。
自分は席を外した方がいいかな、と機転をきかそうと思った。
「あの…その…」
少女の緊張は極限に達しているのか、なかなか本題を言い出せずにいる。
…女はみんなこうだ……
アスランは表情ひとつ変えず、冷たい彫刻のような顔をしていた。
「俺は別に君と話すことはないんだが。用件があるなら早く言ってくれないか」
「…!!」
そこに響いた言葉には、何の感情もなかった。