Vivid Colors 第10話
幸せすぎる恋だった。
“・・・カガリが笑ってる時も泣いてる時も、隣にいるのは俺でありたい”
“こうしてたら誰も入ってこないよ…”
“じゃあ俺は、キラの義兄だな”
泣くことも、不安なことも、ひとつもなかった。
ずっと笑っていられた。
アスランがいつも溢れるくらいの愛情をくれたから……
両親がいなくても、キラと一緒に暮らせなくても、私はずっと笑顔でいられたんだ……。
アスランを失ったら私…もうだめ…。
――――お母さん…
お父さんが出てったとき、お母さんもこんな気持ちだった……?
【Vivid Colors 第10話】
「かっこいい~~~! やっぱカッコイイよー」
「なんか、夏休みで一層かっこよさに磨きがかかったって感じよねっ」
「彼女とラブラブだってわかってるけど~~」
体育館の入り口で、黄色い声をあげる数人の女生徒たち。
視線の先には、藍色の髪をもつバスケ部キャプテンがいた。
一足先に部活が早く終わったカガリは、部室に戻る途中でその後ろを通りかかる。
「しかもアスハさんだなんて、絶対敵わないし…」
自分の名前が聞こえてきて、カガリはふと足を止めた。
……あぁ、アスランのこと見てるのか…。
アスランがモテることなんて、それこそ知り合うまえから嫌と言うほど知っている。
こんなことは日常で。
アスランが見向きもしないこともわかっている。
でも今は、全てが不安に直結してしまうのだ。
胸がざわつくような感覚を覚え、カガリはその女生徒たちの隙間からアスランの姿を見つけた。
…なかなか見ることのできない部活中のアスラン。
ボールを片手に後輩達に指導しているようだった。
ただTシャツを着て立っているだけなのに、綺麗で人目をひく存在。
こんなんじゃ…誰だって好きになっちゃうよな…。
その上、あんなに優しいんだから…。
目の前にいる女の子たちは、相変わらず目でアスランを追いかけ
きゃーきゃーと騒いでいた。
そこに、また違う女の子の声がした。
「アスラン君!」
そう呼びかけてアスランに駆け寄っていく。
アスラン達バスケ部員と同じトレーニングウェアを着た、茶髪の女の子だった。