ORANGE 第7話
【ORANGE 第7話】
今日はクリスマスイブ。
アスランはもう、この日が来るのを毎日指折り数えてしまうほどだった。
「頼むから今日はトラブルは起きないでくれ」と願いながら、イレギュラーの想定のため休憩もろくにとらず仕事に励んで。
18時過ぎ、ほっとして予定通りの時間に事務所を出たとき、一人の女性に会った。
「ザラさん」
「……」
俺が顧問弁護士をしているアパレル会社の社長の娘…。
どうやら待ち伏せされていたようだった。
以前から社長を通して食事に誘われていたが、すべてハッキリ断っていた。
そしたらその返答が逆に親子共々気に入られ…という煩わしさだ。
今日はクリスマスディナーの誘いらしい。
それを秒で躱して、俺は振り切るように立ち去った。
肩を・・触られた。
ああ、気持ち悪い・・・
躰の奥底から黒いものが這いずってくるようで、嫌でも昔の記憶が蘇る。
―――確か、カガリと初めて会ったときもそうだった。
こうして不快感が頂点のときに、カガリに会って、なぜか心が凪いだ・・。
早くカガリに会いたい。
駅に着いたところでスマホを見ると、カガリからメールが入っていた。
『アスランの事務所の近くまで迎えに行くね』
カガリがここまで来てくれている。
もうそのメールだけで機嫌は直ってしまった。
数分後、カガリの顔が見れて、本当にカガリが自分の中で稀有な存在なのだと…改めて思い知った。
カガリが好きだ。
俺にはカガリだけだ。
絶対離したくない…
恋愛経験が無い上に一般的な感覚すら欠如している自分が
どうしたらカガリを一生繋ぎとめられるのだろう―――と
一瞬よぎった不安に、気づかないフリをした。