ORANGE 第6話
【ORANGE 第6話】
『男とか女とか、そんな枠は取っ払えよ』
いつかディアッカに言ってもらった言葉。
あれで頭をガツンと殴られたみたいに目が覚めて…。性別も年齢も関係なく、ただ“カガリ”という人間を好きなんだと気づいた。
最初は一緒にいられるだけで幸せで
嫉妬して、彼女の一番になりたいと願って
ようやく、想いが通じ合えた。
関係が友人から恋人に変わっても、俺はディアッカの言葉を自分の都合の良いように解釈して…
男や女なんて関係ないと思っていた。
そんなはずがないのに。
・・躰の変化で、嫌でも自分が男だということを思い知る。
カガリが女性であるということも。
愛する人と一緒にいる以上、セックスの問題は避けて通れないのだと。
「おはよう!」
「おはよう」
二人の間で毎朝のあいさつが当たり前になった。
カガリの学校の話なんかを聞きながら、駅まで一緒に歩く。
ときどき夜に電話をする。
恋人同士として順調に日々を重ねながらも、指先すら一度も触れてはいなかった。
カガリの柔らかそうな躰のラインを、視線で辿る。
朝日に透ける金色の髪。
触りたくて抱きしめたくて…、何度木の影にカガリを引きずり込もうとしたか分からない。
でも人の波と朝日の神聖さで、さすがにそんなことをする勇気はなかった。
夜は…。
今さら思春期が来たみたいに、毎晩躰が反応した。
カガリのことを考えるからダメなんだと、自宅で仕事をするようになったが
それでも頭の切り替えがうまくできない。
どうしても考えてしまうから性的欲求が止まらなくなる。
もう…これは放っておいて収まるものではなくなった。
射精することを覚えてしまったから。
匂いでまたトラウマを呼び起こさないように、シャワーを浴びながら出す。
石鹸の匂いにかき消されていく。体液もすぐに流れていく。
嫌悪感や罪悪感が…一時薄くなって。
でも、気持ちいいと感じてしまったことにまた嫌気がさして…苦しくなって…
それでも
勝手に昂ぶる躰を落ち着かせるには、この方法しかなかった。