ORANGE 第5話
【ORANGE 第5話】
アスランは、その夜から自分の体に違和感を覚えた。
強く抱き合ったときのカガリの躰の感触を思い出すと、自分の全身が熱を持つ。
体だけ自分じゃないような…落ち着かない、生まれて初めての感覚だった。
「…?」
カガリと想いが通じ合って浮かれているせいだろうかと、最初は思った。
―――しかしアスランは毎夜この症状に苛まれることになる。
「おおアスラン、おはよう。幸せそうで何より」
翌朝、職場でディアッカにさらっと言われた言葉がこれだった。
「でもまあその緩んだ顔でクライアントの前に出るのもなんだから、これ着けとけ」
そう言われてマスクを渡された。
自分はそんなにも顔に出てるだろうかと、アスランは思わずトイレの洗面台で確認してしまった。
感情が筒抜けなのは弁護士として致命的だ。
でも・・今日くらいは許してほしい。
やっと、やっとカガリからYesの返事がもらえたのだから。
“―――最初から、ずっと…好きだよ…!”
生まれて初めて人を好きになって、自分を好きになってもらえた。
信じられないくらい幸せで、周りの世界が違って見える。
早くカガリに会いたい。
今晩、仕事帰りに会ったらどんな顔をしてくれるだろうか―――
昼休憩の時間、アスランが私用スマホを開くと、カガリからメールが届いていた。
「―――えっ」
その内容に思わず声が出る。
『アスランごめん。今日風邪で熱が出ちゃって、学校休んだんだ。だから公園にも行けない。ごめんなさい…』
驚いて、すぐに返信を打とうとしたが、通話ボタンに切り替えた。
授業中でないのなら電話のほうが早い。
メールを打って返ってくるまでの時間も待てない。
4度目のコール音で、カガリに繋がった。
「カガリ、大丈夫か?風邪って…」
『アスラン…』
小さく呟かれた声は、明らかに喉を潰したガラガラ声だった。