ORANGE 第4話
【ORANGE 第4話】
10月。
ぶかぶかのユニフォームばかり着ていたカガリも、長袖のパーカーなどを着るようになった。
気温のこともあるが、アスランに告白されてからどうしても機能性重視の男の子みたいな恰好ができなくなってしまったからだ。
かといってスカートをはくでもない、無難なトレーニングウエアにしているが。
あれから、引き続き二人で会ったりはしているが、やはり無邪気にわいわいできる空気ではなくなった。
話が何度も途切れて無言になってしまったり、外が冷えてきたからという理由で早めの時間に帰る。
―――あの告白は、“した方”ではなく“された方”に、大きな影を落としていた。
『アスランの隣に立てるようになるまで待っててほしい』
言った本人がその意味を考え込んで、落ち込んで、時間がたてばたつほど深く刺さっている。
・・・それって具体的にいつになるんだろう、と。
大学生になったらバイトなんかもできるようになるけど、まだ学生だ。
大学を卒業して、就職したら・・・隣に立てる?
でも社会人1年目なんて、まだまだアスランには手が届かない。
2年目、3年目・・?
その頃にはアスランも30代半ばで、キャリアを重ねてもっとすごい人になってる。
差なんて縮まらない。
10年たっても並べる気がしない。
最低でも大学を卒業するまであと4年半―――
4年以上も曖昧な返事で引っ張ったまま、アスランを縛りつけるつもり・・?
私にそんなに待ってもらえる価値ない。
・・・いや、違う。
アスランは優しいし、親に挨拶してくれるくらい責任感も強いから、たぶん・・待っててくれるんだ。
そして、その期間ずっと、確実にアスランを苦しめる・・・・!
「……っ…」
期限のない、苦しみ。
Noの返事よりも残酷な。
「……酷すぎる」
アスランの…隣に立てるようになるまで…。
それは、現実には大好きな人を縛り付けて、途方もなく苦しめるものだった。