ORANGE 第3話



【ORANGE 第3話】



厳しい暑さが少しずつ息をひそめていく、9月下旬。


アスランは、仕事帰りにカガリと会うことが日課になっていた。

カガリの練習に付き合ったり、ベンチで他愛もない話をしたり。
もちろん仕事が忙しいときや、雨の日などは会えないが、あらかじめメールで断りを入れたりして順調に交流していた。

カガリと会うと、仕事であった嫌なことが吹き飛んでいく。
なんでもできる気がする。
一緒にいるだけで毎日が楽しすぎる。


ディアッカにお礼を言ったら「お前見てるだけでこっちも面白いから礼なんていいよ」などと言われてしまったが。





そして3日間悪天候が続いた、翌日―――


アスランは駅からやや駆け足になってしまうくらい心を弾ませて、そこまでたどり着いた。
3日ぶりにカガリに会える。



「あれ…?」


アスランの脚の勢いが、止まった。
いつもの場所にカガリがいない。

少し奥にある別のバスケットゴールに、4人くらいの学生が集まっていてにぎやかにしている。


そこには金色の髪が―――


「あ、じゃあ私抜けるね。楽しかったありがと!」

「おお、またなーカガリ!」

「また!」


アスランが求めてやまなかった人物が、こちらに向かって駆けてくる。
その光景をアスランは硬直して見つめていた。

カガリがくだけて笑い合っていた3人が、男だったからだ。

アスランは、その衝撃に動けなかった。



「アスラン!」


いつもの、カガリの笑顔。
しかしそれを向けられた方は笑顔からは程遠く。


「あ…、あの人たちは…?」

「ああ、中学の部活で一緒だったんだ。久しぶりにばったり会って」


カガリはここが地元だ。
小中学校が公立だったこともあり、このあたりに旧知の者が多かった。
この都市公園に来ていてもなんら不思議ではない。


「そ、そう…」

「もう推薦で進路決まってるんだって。じゃないとこんなとこで遊んでいられないもんなぁ」


カガリが笑えば笑うほど、アスランの胸はわけもわからず黒く塗られていった。

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