ORANGE 第2話
【ORANGE 第2話】
アスランは生まれてすぐに母親を亡くし、写真でしか母を知らない。
父親は地元では有名な代議士で、一度も再婚はしなかったが、昔からいろんな女性を家に連れてきていた。
目つきや口調が怖い女、
あからさまに父にしなだれかかる女、
勝手にキッチンを使って妻を気取る女、
高級クラブで働く女・・・
すべての女に共通することは、「やたら香水くさくて服の露出度が高い」だ。
アスランが学校から帰宅して玄関を開けると、もう匂いで女が来ていると分かる。
そして案の定、女物のハイヒール。
小学生時代からそういうものに嫌悪感があったが、現状、アスランが帰って寝る場所はそこしかなかった。
――そして、決定的なことが起きたのは、アスランが中学2年の夏。
部活で遅い時間に帰ると、父は不在で、見知らぬ女だけが家にいた。
父は急な仕事で呼ばれて行ってしまったという。
『ねえ…きみ、何年生?』
『中学2年ですけど…』
『そう…。なら“まだ”よね…?』
含みのある笑みが、赤い口紅が塗られた口元からこぼれる。
なにが“まだ”なのか、当時のアスランには分からなかった。
なぜか近づいてきて、意味深に見つめてくる。
背はアスランのほうが少し高い。
『まだ、女を知らないんでしょ…?』
赤い爪の指がすっと伸びてきて、もともと暑くて第二ボタンまで開いていたアスランの首にキスをした。
『・・!!!』
一瞬で、全身が粟立った――――
身の毛がよだつほどのおぞましさで。