ORANGE 第11話
【ORANGE 第11話】
3月頭、アスランの父親の四十九日が終わった。
法要だけではなく納骨、実家売却や遺産の整理、寄付の手続きなどもあり、アスランは通常の仕事も並行していて多忙だった。
普通は大きな遺産管理は弁護士に任せるものだが、アスラン自身が弁護士であるためどうしても自分でという思いがあったのだ。
そうしてやっと一段落した翌朝。
いつものように待ち合わせたカガリが私服で、アスランは思わず二度見した。
「あれ…、カガリ、今日学校休み?」
とっさに今日が土日かと思ったが、平日だった。
するとカガリが申し訳なさそうに決定的な一言を言う。
「えーっと…、昨日、卒業した……」
「…ええっ!?」
アスランは珍しく大きな声を出して固まってしまった。
時期的にカガリがもうすぐ卒業だとは分かっていたが、まさか過去形でくるとは思わなかったのだ。
「ご、ごめん、だって…。卒業式が四十九日の法要だったから、言いにくくて」
「あ……」
「卒業式はふつう親が来るものだし、アスランに言っても気にするだけだと思って…。その……」
「ご両親来てくれたの?」
「お母さんだけ。帰りに食事してきたよ」
確かにアスランが知っていても卒業式当日にできることは特にない。
アスランも逆の立場なら言わなかっただろうと思う。
それでも事前に言ってほしかった……と思うのはアスランの我儘だ。
すべては自分に余裕がなかったせいなのだから。
・・・寝不足で、実はここ1か月半の記憶があまりない。
父の遺産は想像以上のもので、どんどんいろんなものが出てくるから単純に仕事量がとんでもなかった。
マスコミの対応はほとんど秘書のホワイト氏がしてくれたが、党の関係者から矢継ぎ早に父の跡を継ぐように言われて断るのが大変だったということもあった。
そして父と母のことでふと考え込んでしまったり―――
思い返すと倒れなかったのが不思議なくらいだった。
「ずっとドタバタしててごめん。だいたい落ち着いたから、ちゃんとお祝いしよう」
「ありがと」
―――そうして、いつものように二人並んで歩き始めた。
カガリは今日は電車には乗らないが、駅までアスランの通勤に付き合ってくれるらしい。
朝一緒に過ごすようになって4カ月。
以前とは逆で今ではカガリの私服姿が珍しくなっていた。
「…あ、でも合宿終わってからでいい?」
「合宿?」
「合宿というか卒業旅行というか…。バスケ部のみんなであさってから2泊行くことになってて。相談や準備もあるから」
「そうか…」
「…あ!もちろんみんな女子だよ!」
慌てるようにそれを付け足したカガリを見て、アスランは思い当たることがあった。