偽りの系譜は 番外編
「ホテルはキャンセルして、カガリはうちに来ればいいよ」
ラクスの結婚式と披露宴が終わったあと、カガリの耳元にアスランが唇を寄せて言った。
“うち”
昨夜過ごしたクライン邸の方ではなく、今アスランが一人で生活しているマンション―――
カガリは真っ赤になって固まった。
【偽りの系譜は 番外編】
一昨日まで、カガリはこんなことになるとは微塵も想像していなかった。
オーブの自室のパソコンからプラントでの2泊分のホテルを予約して、シャトルの往復チケットを取って…
「4年ぶりにアスランの姿を見れるかな」
「遠くからでも見れたらいいな」というくらいの気持ちだった。
―――それがまさか、アスランと再会して、結婚の意思を確認して、さらには夕方から深夜に渡って抱かれ続けるなんて。
とんでもないことが起こりすぎていた。
昨夜の分のホテルはさすがにキャンセルして、そのままクライン邸のアスランの部屋に泊まった。
報道陣の前で二人そろって醜態を晒したのは、昨夜のことで気が緩んでいたせいもあったのだと思う。
そして、ラクスの結婚式が終わって、今夜。
プラント滞在最後の夜。
二人でクライン邸にカガリの荷物を取りに行き、夜8時、アスランのマンションにやってきた。
現在カガリは玄関で緊張して立ちすくんでいる。
「荷物、ここに置いておくよ」
「……あっ、ありがと…」
「遠慮しなくていいから」
「お、おじゃまします……」
カガリは他人行儀な口調でおそるおそる中に入った。
昨日のアスランの部屋は、慣れたクライン邸での中だったし
隠し扉の好奇心や、ラクスが屋敷内にいると思い込んでたこともあって、何も考えずはしゃいでしまった。
でも、こっちのアスランの部屋は、まったく知らない空間だ。
男の人の部屋に入るという意味は、昨夜、動けなくなるまでこの身に思い知らされた・・・。
もうあんな風にはしゃげるわけがない。
「カガリ、疲れた…? 先にシャワー使って」
昨夜と打って変わって静かなカガリを、アスランは疲れているのだと思い込んでいた。
長旅から到着したばかりのカガリを何度も抱いていたのだから当然だった。
最初は、一晩に二度も求めていいのか分からずためらいもあったが、
2回したらもう3回も4回も同じだと思って、ついタガが外れてしまった…。
アスランにとっては存分に愛を解放して幸せすぎる夜だったが、女性の躰への負担がどれほどかは男には分からない。
さすがにもう今夜は…
愛し合えない、か…。
こんな口数が減るまで疲れ切っているカガリに迫るなんて。