「どうもありがとうございました」

行方不明の児童も無事見つかり、深々と頭を下げる保護者と児童の教師である＊＊＊さん。自分は不謹慎ながらも、この数日間、＊＊＊さんに恋心を抱いてしまっていた。
直向きな彼女の児童への気持ち、諦めない芯の強さ。少し離れた場所でもそれは自分にも伝わってきて、いずれ惹かれてしまっていたのだ。

「斉藤さんもありがとうございました…」

深々と下げる頭につられ、自分も頭を下ろしてしまう。

「それでは」

そう言って彼女はにこりと笑って屯所を出て行ってしまう。
待って、待ってください。まだ私は貴方の事が知りたくて。
声をかければいいのか、腕を掴めばいいのか。俺は遠くから彼女の後ろ姿を、見つめることしかできなくて。惜しそうに伸びる腕が、悲しくも下げられていって。

「…………待って」

その声は小さくて、届かない。取り残されるこの気持ちが、心をぎゅうと苦しませる。

貴方の事が好きなんです、もっと貴方の事を、教えてください。