「……わ……美味しそう……」
＊＊＊さんがメニュー表を開いてじっとあるメニューを見つめていた。自分もメニュー表を開き＊＊＊さんが見ているであろうページを見ると、そこには表紙に大々的に書かれている、ミックスフルーツクレープなのだそう。期間限定でこの時期しか食べられないらしく＊＊＊さんはそのスイーツをじっと見つめていたのだ。
［注文します？］
「へっ！？ …あ……いや……いい、です」
すると＊＊＊さんはそのメニュー表を閉じてオムライスを頼んだ。何故好きなものを注文しないのだろう。不思議に思いながらも自分も注文する。

「……」
＊＊＊さんがオムライスを食べながらよそ見をしている。その視線の先は店員の持っているミックスフルーツクレープで、その料理がカップルの席へと運ばれていく。
メニュー表を開いて店員をボタンで呼ぼうかとすると＊＊＊さんが猛烈に俺の手を阻止した。
「いや！いいんです！いいんです！」
［でも好きなんでしょう？食べたらいいじゃないですか］
「っ……、…ぃ…………と」
「？」
「……ダイ、エットしたい、から」
「……」
ああ、と納得した。だから＊＊＊さんは見るだけでいたのか。
［じゃあ僕だけ頼みます」
「えっ」
ボタンを押し店員を呼び、先ほどのクレープに指を差す。かしこまりました、と紙に書き込んだ店員は厨房に入っていく。
しばらく待つとお待たせしましたと、店員が件のクレープを持ってくる。うん、確かに美味しそうだ。生クリームも多く、そこには様々なフルーツが散りばめられている。フォークで小さく切り、それを口に運ぶ。甘く、フルーツとチョコレートの甘さと苦味が合う、絶妙なバランスだった。その美味しさに顔を綻ばせていると、＊＊＊さんがクレープを食べる俺をじっと見つめていた。
食べたそうな顔で。
「…………」
「…」
そのクレープを小さく切って、それを＊＊＊さんの口元へ運ぶ。所謂あーんなのだが、＊＊＊さんは驚いたような顔をする。クレープと俺の顔、交互に見遣った後、思い切ってそのクレープを食べた。
［美味しいですか？］
「……うん……おいひぃ……」
ふ、と笑ってしまった。甘い味に顔を蕩けさせ、幸せそうな表情を浮かべる＊＊＊さんに。やっぱり、＊＊＊さんには常にそんな顔をしていて欲しい。皿を彼女の前に動かすと、＊＊＊さんはそのクレープを食べ始めた。ダイエットしなくても可愛いZ

この後めちゃくちゃ怒られた。