「……お、ねがい……っ」

＊＊＊は弱々しくも、その声を発する。喧嘩を始める隊士達に向かって。放たれた声に、斉藤は驚く。

「おねがいっ……もう、やめてください……っ」

溢れんばかりの涙が、＊＊＊の頬に伝い落ちる。潤んだ瞳は隊士達を捉え、そして隊士達はそれに目を向けた。
目を向けた隊士達は次々に掴みかかった手を離し、剣を鞘に納めた。ごめんね、そう謝りながら＊＊＊に寄り添う。

「もうっ……喧嘩しないでくださいっ……」
「もう喧嘩しないよ」
「うん、俺達も少しカッとなっちゃったみたいでさ…」
「本当ですか…？」
「本当だよ…！」

そう涙交じりに微笑むと、隊士達の顔が緩む。

(場が収集したとはいえこれで良いのだろうか……？)

斉藤は疑問に思う。
この場はこれで終わり、隊士達も自らの持ち場へ帰って行った。

「…ごめんなさい、斉藤さん」
「…」
「最初からこう言えばよかったんですよね……、悪い人たちじゃ無いですから、話せば分かってくれますよね……」
「……」

斉藤に一礼し、＊＊＊はそそくさとその場を離れた。引っかかる疑問を持ち、斉藤も重い足取りで部屋に戻ってしまう。