心地の良い夢の中、どこか遠くでかさかさと音が鳴るのが聞こえる。それは気持ちの良いものではなく、ゆっくりと意識を起こした。

何処と無く部屋が暗い。時間は朝のはずなのに、朝日が全く入っていないのだ。もぞもぞと身体を揺り起こし、窓の方へと見遣る。窓はカーテンを掛けており実物はわからないが、黒い影の何かが窓に大量にくっついているのだ。その黒い影はかさかさと音を立てて蠢いているのが分かる。

「ひっ……！？」

＊＊＊は恐怖を覚え硬直する。それが何なのかも分からずに。いや理解しない方が良いのだろう。そう判断した脳が＊＊＊の理解を遮断するのだ。

護身用として持たされた刀を持ち、恐る恐る鞘の先を窓に突き付け、トンと叩く。それと同時に黒い影をした何かはばさばさと音を立て円状に飛び去って消えて行った。
何もいなくなった窓を見ようとカーテンを開けると、確かにそこには何もなく庭の景色のみが広がっていた。荒い息を整える＊＊＊。あの正体がなんなのかは分からずに。