─ここはパステルカラーのお花たちが咲き誇る春の王国、スイートパステル。
王国ではいま、一年に一度のお祭りの準備の真っ最中なのです。

ぽかぽか陽気の昼下がり。
空は突き抜けるように青く、まさにおまつりの準備日和です。
街を一望する丘の上では、甘えん坊なウサギの女の子が、明るく響くトランペットやドラムの音に目を閉じて耳を傾けています。
お祭り当日にパレードの演奏を務めるマーチングバンド隊は、太陽が目を覚ますのと一緒に集まって、みんなが目を覚ますころに練習を始めるのです。
華やかにパレードの始まりを告げる音楽は、鳴ったりやんだり─お日様がいちばん高く昇るころ、マーチングバンド隊のみんなはお昼休憩に入ってしまったのでしょうか、にぎやかでステキな音楽はぱたりと聞こえなくなってしまいました。
聞こえるのは木々の優しいざわめきと小鳥たちの声、それから遠くに響く町のみんなの浮足立ったおしゃべり。
ウサギの女の子は柔らかい草の上に座り込んで一つ一つの音をほどいていくように聴き入り、そうしているうちにお日様の暖かさになんだか心地よくなってきちゃって──
いつのまにかうとうと。


♡　♡　♡


「おーい、リュミー、リュミぃ、起きろーっ！！」
「……ん……」
「りゅ、み、っ！」

「わわ、ローフぅ！？どうしたの！？」
「ど、どうしたのじゃねーよ！遅いっ！！もう午後の作業始まるぞー？？」

……え？

わああああ！わわ、わすれてたぁ！！

「ろ、ローフ、今何時！？！？」
「だーかーらもう午後の作業が始まるって言ってるだろ！本当話聞かないなお前！！」

ローフはあたしの質問には答えずにぴょんぴょん丘を下って行っちゃった＿えへへ、午後の作業が始まる時間といえば、1時半ですね？

ちょっぴりしょんぼり。あたしってちょっぴりどんくさいんです。

でもうたた寝しちゃったことに関してはヘコんだりしません♡

だって、こんなの日常茶飯事だもの、ねぇ？

そんなこんなでちょっぴりドジっ子のあたしだけど、イースターのお祝いのお手伝いなら、いっぱいいーっぱいお役に立てちゃいます♡

さぁ、ローフを追いかけないと！


♡　♡　♡　


「おっつかれさん、リュミ」

へとへとの様子のリュミに声をかけると、「はゃ〜」となんだか間の抜けた声が帰ってきた。

変なトコで居眠りして心配かけたぶん、いっぱい手伝ってもらったんだからな！

からっぽになったかわいいイースターエッグバスケット。

つい数時間前まで入ってたのは、エッグハントのために街のあっちこっちに隠してきた、お菓子の詰まったチョコの卵たち。

明日はいよいよお祭り本番！


♡　♡　♡


「せーのっ！」
『ハッピー・イースター！』

お祭りの準備を率いてきたローフとリュミの掛け声にあわせて。
スイートパステルの青空に、みんなの声が響き渡り、カラフルな紙テープと花吹雪が舞います。マーチングバンド隊の鳴らす華やかなファンファーレに包まれて、一年に一度の素敵なお祭りが始まりました＿＿♡

さて、春の国のみんなは何をしているのでしょうか？