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血は水よりも。
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(※74.847リクエスト/りょう様)
(※お相手マルコでギリギリまで甘裏)
(※♀白髭の実娘、マルコ大好き)
(side U)
自室のベッド、薄い水色のシーツの上に腰を掛けていた。 少しだけ心拍数が上がる。
「…はー、よし」
私はこれからこの持て余した身体を慰めるべく自慰を開始する。 マルコを部屋に誘っても最近忙しいの一点張り。私は溜まっていた。
着ていたシャツのボタンを外し自分の身体を撫でる。
「…、ふ…」
胸へと手を伸ばし揉む。マルコの手つきを想像してみるけど、私とマルコじゃ手の大きさも肌触りも、それに微妙な体温の差さえある。 それでも弄る手は止めない。
こんな馬鹿げた行為でも、せめてもの慰めは必要なものなのだ。放っておけばおくほどこの熱は溜まっていく。適度な発散は必要なんだと自分に言い訳をしながら。
自分の指だと思ってしまうと物足りなさが増す。眼を閉じ集中。今はマルコが触っているのだと妄想を駆使し、胸の先端を摘む。
「ンっ…!」
上擦った声が出る。モビーディックは大所帯だ。大部屋に押し込まれるクルーがほとんどといえど、女クルーである私には狭いけど個室を貰えている。壁の向こう側は物置。多少声が出てもナニしてるかまではバレやしない。
「…ぁ…マルコ…ッ」
他の人には聞こえない、という思いで遠慮なく想い人の名前が口をつく。
普段話す時とは違う甘い声が漏れる。まだ残る理性が自分の声に戸惑い、指から生まれる刺激はそれでも興奮を産みだしていく。
空いている片手の爪先ではじくように乳首に刺激を与え、もっと欲を昂らせる。
「…ッ…ぁ!」
閉じた瞼の裏にはマルコの顔が浮かんでいる。眠そうな目が私に触る時は鋭く尖る。あの目が好きだ。じん、と身体の芯が脈打った。 早くそこに刺激が欲しくて腰が動く。
自分の口に人差し指を入れ唾液を絡めて濡らし、欲求に従いに下着の中へと手を伸ばした。 マルコは私に触る時、しつこく粘着質に触る。
残念ながらマルコのモノを中に貰う機会はまだだけれど、キスと愛撫までは人目を忍んでやっていた。私が先に音を上げるまで…時には堪えきれずに泣き出すまで焦らし、身体中に愛撫をくれる。
「…は、ふぅ…っ」
ぬるり、と指が割れ目に潜ると胸よりも大きく甘い刺激に身体が震える。
「ん……ん、あっ」
手は止まらない。 割れ目から溢れだした体液が指先の動きを助けて滑りを良くする。 目の前が白くなり気持ち良さに侵食されていく。
「ん、んぅ…」
下着を脱ぎ捨て、指先で敏感な先端を軽く弄ると、強い感覚に息が詰まる。
「…ぁ…んあ!」
先端をさすり、弄る度に愛液が溢れる。気持ちいい。快楽のために身体が強張る。
『…りょう』
私を呼ぶ声を思い出すと堪らなかった。
「…ふ、…~~ぁ、ああ…ッ」
快楽が全身に回り、私はシーツに身を沈ませ登りつめた。
…雨の音がする。
薄暗い室内に水音が小さく聞こえ、私はベッドの上で身を起こした。天気が悪いのかな。予報じゃ曇りだと聞いていたのに。
「あー、…やってらんないよね…」
昨日の自慰の後、いろいろ面倒になってそのまま服を脱ぎ捨てて全裸で寝てしまった。
「次は指じゃないもん挿れさせてくれって言ったくせに」
触りはするのに、毎回手前まででおしまいだ。何だそれ。生殺しか。
お互い初めてじゃない。触り合えばマルコも勃ってる。ねえ次って?いつが次なんだ。いい加減こっちが襲うぞちくしょう。 ヤれない原因は?と考えて、浮かんだ一つに不安が湧いた。
「……まさかね」
そんな訳ない落ち着け。とりあえずお湯でも浴びて目を覚まそう、とクローゼットの取っ手に手をかけた時だった。
がちゃり、と背後でドアが開く音が聞こえた。
「…服を着ろ、阿呆」
振り向いたらマルコがいて、ドアとお見合いするように後ろ向いていた。頭から水滴がいくつも垂れている。どうやらマルコは朝風呂に行ってきたみたいね。
「マルコ、頭まだ濡れてるけど。ちゃんと拭かないと風邪引くよ?」
「俺はいいから、りょうは先に服着ろよい」
私の裸ぐらい見慣れてるくせに、こっちを見ようとしない律儀なこの男。
一番隊の隊員をやっているが、悪魔の実の能力者でかなりの使い手だ。最近の戦闘での手柄の上げようといい…隊長の座に着くのも遠くないだろうな。
「…は、ぶしッ!」
パイナップルとかバナナと揶揄される独特な髪型をぼんやり見ていたら、くしゃみが出た。
「…そのクシャミ…おっさんみたいだな」
肩を落とした渋面のマルコが振り返る。自分のシャツを脱いでクローゼットの前に立ち尽くしていた私に投げてよこした。
「一人風邪引いたら、感染してウチ中で流行っちまう」
投げられたマルコのシャツを羽織ると、体格差のせいか袖が余る。袖口に鼻を押し付けて嗅いでみた。
「洗った?」
石鹸の微かな香りしかしなくて残念。マルコの匂いは消えていた。
「当たり前だろい。嗅ぐなりょう、服を着ろ」
「マルコ選んでよ」
「は?」
「だからー、マルコが選んでよ。私が着る服。それ着るから」
「なんで俺が…」
「じゃあこのシャツ貸して。今日一日」
前も留めずに立ち上がるとマルコは顔を背ける。また重い溜息を吐いてからクローゼットのドアを開けた。
「……………………………、これでいいかい?」
手渡されたのは私がこの間買ったシャツと尻ポケットに細かい刺繍の施されたデニム。
「ついでに下着も選んでみない?」
好きなの履くよ?と顔を覗き込んだ大きな手の平が私の顔面を掴んで押しのけた。
「近いよい!…服着てからにしてくれ」
酷い。押し退けるなんて。
マルコの手を顔から引き剥がして舌を出す。押し問答してても仕方ないので下着は自分で適当に掴んで履いた。選んでくれた服を身に付け、マルコにシャツを返した。
「マルコ迎えに来てくれたんでしょう?一緒に朝ご飯食べに行こう」
マルコの手を握って行こうと促す。あーあ、この手に撫でられたい。気持ちいいもん。
「ガキじゃねえんだ、手は離せ」
私に掴まれた手を振り払ったりしなかったけど、言われたとおりに繋いだ手は部屋から出た時点で離す。
おてて繋いで歩いていたらウチのクルー達に囃し立てられるし、マルコはそういうネタにされるのを嫌がるんだ。
「今日のメニューなんだろうね」
「俺は卵焼きが食いたいよい」
「あ、お味噌汁だ!イゾウのリクエストかな?私これ好き」
「りょう、お前は偏食しねえで野菜も食え」
無駄口を叩きながらトレーに食事を乗せていき、着席。いただきます。同じ机の一角に座していたクルーの一人が、私とマルコを見て吹き出した。
「…ぶっは!」
「「?」」
何だろう?と私が思うと、マルコもそう思ったのか食事の手が止まった。
「ぶははは、はは!面白え!」
「何笑ってんの?」
「だってよ、ははは!…りょうにマルコ!気付いてねえのか?」
「何だよい。はっきり言え」
「お前ら同時に同じもん食ってんだぜ?本ッ当に仲良しさんだなー、ぶはははは!!」
「…………」
「…………」
私とマルコはお互いの手元を確認。
メニューは皆同じだけれど皿の減った量や配膳の位置が全く同じ。しかも今、同時に卵焼きを箸で持ち上げていた。真似したわけではない。
偶々だろう、けど。
「……俺はあっちで食うよい」
トレーを持ってマルコは席を立った。クルーがその背にヤジを飛ばすがマルコはふりかえらずに行ってしまった。
「あーあ、もう!マルコ行っちゃったじゃん!」
せっかく隣で食べてたのに、と文句を言いつつも食事の手を再開した。
「りょうよぉ。お前本当マルコ好きな」
「うん」
「ギャハハ!即答か!いいねえ若者よ!」
朝から酔っ払ってんの?クルー達にからかわれても私は平気だけど。
「りょうがウチに来たのはマルコが乗船した後だっけ、それとも先だったか?」
「私が数ヶ月くらい先」
「乗った当初は馬鹿力だけが取り柄の使えねえガキだったのに…うんうん、りょうも立派に育ってくれておれは嬉しいぜ!」
「そりゃどーも。私よりマルコでしょ。アレそのうち隊長になるんじゃないの」
「ああ。そのうちオヤジからも打診が出るだろうなぁ。マルコは見込みがある」
クルーから見てもマルコは見込みがあるらしく、自分のことじゃないのに変に嬉しく思う。
と、同時に胸に重い気持ちも湧く。
「…あのさ。何かマルコ最近ちょっと変じゃないかな。何か聞いてる?」
「マルコが?そうかぁ?いつも通りに見えるぜ?なあ?」
「ああ。特に変だとは思わねえが…」
「そっか。なら良いよ、ごちそうさまでした」
食べ終えたトレーを持ってカウンターに返しに行った。コック達にごちそうさまでしたと告げて食堂を出た。
甲板に出たかったけど外は雨。濡れてまで出たくはないので、館内から窓越しに外を眺めるにとどめた。トレーニング室で誰かに相手して貰おうと廊下を歩いていたら、向こうの通路を歩いていくマルコが見えた。サッチが一緒だ。ふざけて肩を組むサッチ、マルコは笑いながらサッチの足を軽く蹴る。
「…普通、だよねえ…」
…マルコが好きだった。あの金色の髪が好き。海賊のくせにあまり日に焼けてない肌が好きだ。
「…………………」
声は聞こえない距離だ。談笑する二人が遠くなる。溜息を飲み込んで、止まった歩みを再開。
サッチと居るマルコは普通。クルーと居るマルコも普通。
「……私と居る時のマルコは変だ」
鍛え上げられた腕、逞しさが好きだ。笑った時に見える白い歯が好きだ。穏やかに目が細くなった表情に胸が張り裂けそうになる。
マルコの顔なんて造作が整っている訳じゃない。ずば抜けて頭がいいわけでも、オヤジより強い力を持ってるわけでもない。それでもマルコは私の特別だった。
トレーニング室に向かう筈だったけれど、回れ右。私は船長室へと足を向けた。
「オヤジ、りょうだけど。入ってもいい?」
「おう」
大きなドアを拳で叩き中の人物に入室を求めると、低く威厳のある声が応えた。
「珍しいな、何の用だ」
「…んー、ちょっと相談に来た」
大柄な体躯、白いマントを肩から掛け、手には酒瓶。いつものオヤジだ。一瞬動きが止まり、口に付けていた酒瓶を下ろす。
「…マルコか」
何で解るの?私相手の事言ってないのに。
「ご明察」
「お前ェは解りやすい。昔からマルコ追い回してたからな」
「……………嫌われた…かなって」
大きな手が伸びて私を抱いた。
抱かれるままに目を閉じる。不安が溶けて消えるみたいだ。私も手を伸ばしてオヤジの身体を抱く。手が回りきらない程の体格差だけれど意を汲んだオヤジが小さく笑う気配があった。
こんこん。がちゃり。ノックの後で確認もなくドアが開いて、私とオヤジはその姿勢を直す間も無かった。
「オヤジ、頼まれていた例の航路の地図を…、っ!?」
地図を三つ抱えたマルコが、ドアの前で固まった。私がオヤジに抱きつくくらい日常茶飯事だろうに。
甲板でも、宴でも…私以外でも感極まったクルーがオヤジに抱き着く事だってある。マルコの見せた反応は瞬き程の僅かなものだった。だけど私が気付くのには充分で。
「地図か、そこに置いておけ。後は午後から会議開く旨、隊長の奴等に伝えとけ」
「了解」
オヤジの指示に従ってマルコは下がる。私は血の気が引いていた。
「……オヤジ。マルコは多分、気が付いてる」
どうして?いつ?
多言はしないとオヤジは約束してくれた。他の皆と同じ扱いを頼んでるし、外見的な特徴に類似は少ない。解るはずない。それなのに。
「そうか」
「そうかって…!それだけ?」
「それだけだ。お前ェももう少しウチの奴等を信用したらどうだ。話がそれだけならもう行け」
歯噛みする思いでオヤジを睨んだけれど、睨み返され、私は唇を噛んだ。オヤジに頭を下げ、出て行ったマルコを追いかけた。
「…マルコ!」
後ろから腕を掴むとマルコは振り返る。
「何だよいりょう、そんなに息切らして」
普通だ。違う、普通を装っただけだ。
「……いつ解ったの?」
「何がだい?」
はぐらかそうとする態度に苛立ちが増す。掴んだ腕に力が入るがマルコは痛そうな素振りも動揺した素振りも見せない。その態度に確信が増す。腕を離し、マルコを突き飛ばす。
「もういい!」
「…ああ?」
悔しくて腹が立って堪らなかった。何かに八つ当たりしそうだ。ああ。こうなると思ったから、黙っててと頼んだのに。
『四皇エドワード・ニューゲートの血を引く実子』と海軍に知れれば高値の手配書が出回る。
オヤジの家族であるモビーディックの船員たちは同じ子供という立場でも、血の繋がりを知れば私とどこか一線を引くだろう。
予想は的中。マルコは知ったのだ、知ったから私と最後までするのが嫌になったんだ。
「私が嫌になったんなら、そう言えばいいじゃないか!」
私はオヤジの娘である事を誇りに思っている。心から。この船に乗りオヤジの入れ墨を身体に刻んだ仲間も同じ気持ちのはずだ。
「…血は水よりも濃い」
マルコは小さな溜息を吐き、そう言った。怒りに任せてマルコを引っ叩いてから踵を返した。殴ってから酷い後悔が襲った。
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