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飼育箱。
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(※57.175 リクエスト)
(※りょう様/マルコで幼なじみ設定で裏夢)
(※年齢確認上、鍵のつかない程度の話とさせていただきました)
(Side U)
「…か、買えたよマルコ」
私の手には二人分のハンバーガーと飲み物の入った袋があった。手も足もガクガク震えてしまって買ったものを落としてしまいそうだ。
「頑張ったなりょう。それは俺が持つから貸してくれ」
手元の危うい私から袋を取って、もう片手で私の手を握った。冷えた私の手とは違ってマルコの掌は大きく温かく、しっかりと包み込んでくれる。
「温かいうちに食っちまおう」
「うん」
歩いてほんの少しの距離。すぐそこのハンバーガーショップ。その距離さえ私にとっては途方もなく遠かった。店員さんから受け取ったレシートは折りたたまずに大事にお財布にしまってある。
「レシート、お母さんに後で見せるんだ」
「アオさん、きっと喜ぶよい」
アオさんとは私のお母さんだ。私の家は母子家庭というやつでお父さんがいない。
隣の家に住むマルコは私と逆にお母さんが居なかった。そんな境遇故か持ちつ持たれつ、就学前からの付き合いはいまだ健在。保育所から高校まで私たちはずっと同じ距離にいる。
「ごめんねマルコ。買うのに時間がかかっちゃって…冷たくなってないかな」
何とか店にたどり着いたがレジに並べずにしばらく不審者のように立ち尽くした。ネットオーダーではなくて対面で注文しようとしたからだ。
頭の中では何度も練習して覚えたメニューと注文方法。それでもいざレジの前に出て店員さんと目があったら心臓は駆け上がる。どもって、震えて、小声で。何度も聞き直されて固まった。マルコは隣でそれを見ていた。
「そんなに待ってねえよい。謝るな、幼馴染みだろい」
「…うん」
小学校五年。私はクラスの女の子に突然苛められるようになった。原因はよくわからない。
「りょうちゃんと口きいたら絶交だからね!」
クラスでの人気者のその子はクラスでそう宣言した。発言力のあるその子の言葉は大きくて、私は女の子達から口をきいてもらえなくなった。あまりに急な事でどうしていいのか解らなくて、グループ分けや班に分かれるたびに私は一人孤立した。学校を嫌いになるのに時間はかからなかった。
「つまらねえ事すんなよい。りょう、お前はこっちに来い」
マルコがそう言うとクラスの男の子たちは私を庇ってくれた。一人にならなくて済むのはありがたく、だけどその気遣いは私をさらに追い詰めた。事態は改善どころか悪化した。
「うわ、女子怖ェ~!」
「オレたちの班で一緒にやろうぜ、りょうちゃん」
「最低、男子に媚び売っちゃって」
「ウチらに対しての当てつけなんじゃないの?」
私が男の子と居ると女の子達から聞こえるように悪口を言われた。学校で使う私の道具が無くなり始め、ゴミ箱や水浸しの状態で見つけたりした。
気が付かないうちに何か悪い事をしたのかな?何度もその子に聞いたり謝ったりしたけど、聞こえていないように無視されくすくすと他の子と固まって笑うのだ。
「マルコ、私もういやだ。学校行きたくない」
ぐずぐずと部屋で泣く私をマルコはいつも慰めて元気付けてくれた。
「りょう、俺たちは幼馴染みだろい。りょうの良いところは俺が一番知ってる」
「他の奴がお前を悪く言っても、俺はりょうの味方だよい」
「心配すんな。困る事があったらいつでも俺を頼ればいい」
マルコの助けがあって頑張ったけれど私は学校に行けなくなった。朝起きると具合が悪くなるのだ。無理やり行こうとすると吐いたり倒れたりする。
「りょう、りょう…!良いのよ。学校、お休みしましょう。ね?」
お母さんは私が学校でどんな目に遭っているのか聞いたらしい。その日から私は外に出なくなった。外が怖い同年代の人が怖い、笑われるのも怒られるのも怖い。話すのも会うのも何もかもが怖くて不安で堪らなかった。
先生が家に来たけど何度も学校に来るように言われるのが嫌で会わなくなった。 学校に行かなくなって三日が経った頃、マルコが私の家に来た。
「ごめんください。りょうに会いに来ました」
インターフォンの音に怯えて出なかったら、マルコの声がそう言った。恐る恐る鍵を開けるといつも通りの顔したマルコが居た。
「りょう。これ学校から。…こっちは俺からだよい」
クリアファイルに入った、学校の先生からのプリントと伝言。もう一つは図書館の本。私が続きを読みたいと言っていた本だった。
「ごめんね、ごめんねマルコ。私、もう学校に行きたくないよう…頑張れなくってごめん、味方になってくれたのにごめんね」
「りょうは悪くねえよい、俺たちは幼馴染みだろい。勉強なら俺が教えるし、学校に行かなくても出来ることなんかいっぱいある」
玄関先で泣き出した私の肩を抱いてマルコは家に入った。近所の目から駄目な私を隠してくれたんだろう。しゃがみ込んで咳き込むように泣く私の背中をずっと撫でてくれた。
「他の奴なんか居なくていいだろい、俺がりょうと居るよい」
そう言われて私はさらに大泣きした。嬉しかった。こんなになってもマルコは私を幼馴染みだと言ってくれる。学校にも行けなくて友達もいなくなってしまったのに、マルコは離れないでいてくれるんだ。
…それからは私にとってマルコだけが外の世界の繋がりになった。マルコはほとんど毎日私の家に来て、お母さんが帰ってくるまで居てくれた。六年生が終わり、中学になってもその関係は続き、そして今も。
塞ぎ込んでいた私がマルコと居ると笑うので、お母さんもマルコが大好きだと言っていた。
「出しておいた宿題はやったかい?」
「うん」
テーブルに私が解いたプリントを広げてマルコは採点をする。
英語、数学、国語に化学。マルコが問題集から抜粋した手書きのプリント。赤ペンで丸を沢山もらえると、私は嬉しくなる。採点を続けるマルコの横顔を眺めているとドキドキしてくるし、楽しい。
就学前からお隣さんのマルコは私の幼馴染みで、昔からずっと見てるのにドキドキするなんて変なの。
「…りょうは俺に穴でも開けてえのかい」
「え?」
「見過ぎだろい」
ぷ、と吹き出して、マルコの手が私の頭を撫でた。見ていたことがバレていて焦る。
「ご、ごめんね!マルコの顔っていつまで経っても見飽きなくて!」
顔を俯けて謝ると、マルコの手は頭から離れて顎を取った。
「隈が出来てる。寝れなかったら電話しろって言ったろう」
バレないようにコンシーラーを塗ったのに見咎められてしまう。マルコは何でもお見通しだ。昔から。
「夜中でも遠慮しねえで、困ったら辛かったりしたら俺には言えよい」
「…うん。ありがとうマルコ」
マルコは優しい。私はマルコが大好きだ。
「採点平均87。いい点だよい」
「マルコがいつも解りやすく教えてくれるからだよ!」
褒められた。嬉しい。思わず笑うとマルコも笑った。す、と顔が近寄って唇が重なる。
「…ん」
何度か触れるだけだったキスは、何度目かで口の中に舌が入る。初めは息継ぎが上手くできなかったけど、今は大丈夫。ほらね。ちゃんと出来る。いっぱいしたもの。
「あ、の…するの?」
「ゴムがねえから、指だけな」
キスの合間に尋ねるとソファの上でマルコが体勢を変えた。下から見上げるマルコも格好いいな、なんて思っていると服の中に手が入ってきて肌の上を這っていく。
「…マルコ…、ん、ぁ」
お勉強の時間にこの行為が足されたのは、いつからだったろう。きっかけは鞄からはみ出ていたグラビア雑誌だったかな。いつも通り私の家に来たマルコがトイレに行くと席を外した間にお茶を淹れ直そうとしたら、テーブルの端に置いてあった鞄が落ちた。
「うわ、ごめんねマルコ…、…っ!?」
居ないマルコに謝りつつ鞄を拾おうとした手が止まった。きわどい水着の女の子が笑顔で胸や体のライン、その下の秘部を布越しに強調する。所謂グラビア、と呼ばれるあれだった。
「うわ、これ、うわあ…」
驚いた。マルコの鞄にそういう物が入っていたことも、マルコがそういうモノを見たいんだって事も。ぐるぐると頭の中では混乱が渦巻く。
マルコはこういう女の子が好きなのかな。
マルコはこういうのをよく見たりするのかな。
マルコは…マルコも、誰か女の子を好きになったりするのかな。
「…ど、…どうしよう…」
私にはマルコだけ。でもマルコには学校の友達もバイトの友達も他にもたくさんの大事な人がいる。いつか彼女だって、好きな人だって出来て…そうしてたら、私は独りぼっちだ。取られたくない。見捨てられたくない。居なくならないでほしい。ひとりぼっちは嫌だ。
お願いマルコ、側にいて。 もう独りになるのは嫌!
雑誌を前に呆然としていたら伸びてきた手が鞄を素早く拾って、雑誌も拾い上げ鞄に詰め込んだ。
「…あー、いや。これは、…友達に借り…無理やり持たされたっていうか…」
ゴニョゴニョと歯切れ悪く、鞄を後ろ手に隠しながらマルコが言う。友達に、借りたんだ。
私はマルコにどんな友達がいるのか解らない。
「友達…」
「そうだ。別に俺が買ってきたとか言うわけじゃねえんだよい」
「……マルコは女の子が好きなの?」
「……そりゃあ…まあ」
不自然に言葉が切れて、マルコは黙ってしまった。学校にも、外にも女の子なんていっぱいいる。
マルコと話したり一緒に授業を受けたりしているんだ。
「女の子の、体なら、…私のではダメ?」
「はあ?何言って…」
「マルコなら良いよ、触っても!…あの、でも、私じゃ駄目かな…」
「いや…駄目とかそういうのじゃなくてだな、」
考えるようにまた黙ってから私の目を覗き込むようにしっかり見て聞いた。
「…りょうは、本当に良いのかい?嫌な事したくねえよい」
「嫌じゃない、私は大丈夫」
そう答えると、マルコに抱き締められた。
随分と逞しくなった身体は何だか硬くて、当たり前なんだけど男の子なんだって事を意識させられた。
「…りょう」
私の名前を呼ぶ声が少しいつもと違って聞こえた。特別に聞こえた。それからマルコは時間を見て私の体を触るようになったのだ。
キスと抱擁だけだったそれが、胸を探るようになって、その下に伸びても、私は嫌じゃなかった。
身体を繋ぐ時はさすがに怖かったけれど…マルコが居なくなるのに比べたら我慢できた。している時マルコは私だけ見てくれて、痛くないかと聞いてくれる。心配してくれるのが凄く心地よかった。
ねえマルコ。それでも私は、時々、心配になるんだ。マルコは私の幼馴染みだから、こんなに面倒見てくれるの?いつも側に居てくれるのは幼馴染みって理由だけ?
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