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記憶の中で立ち往生。
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(※99,000リクエスト/ナナ様)
(※お相手サッチで海賊)
(※悲しくない話)
(Side U)
きっかけは多分、記憶にも残らないくらい些細な事。白ひげの傘下であるあたしたち同盟船の救済戦線で事が上手く運び、モビーディックと同盟船の仲間たちでの宴をしていた時だ。美味しいご飯に美味しいお酒。憧れの白ひげ…オヤジ様と乾杯出来て昇天しそうに幸せな宴。
飲み過ぎないようにと気をつけていたけどあまりの楽しさについつい盃は進む。
「いやー、パセリの船にこんな美人が居たなんてなあ!赤い花の指輪が可愛いね、ガーネット?」
「…………サッチさん。五年前あたしの事『チビ猿ちゃん』って呼んでくれやがりましまけど、覚えてます?」
なんか知らんけどサッチ隊長があたしの隣に座って、あたしの盃に酒を入れつつ絡んで来た。よそ行きの笑顔は無駄にキラキラしている。
「え?!………………あ、お前もしかしてなまえか?!!」
「ですよ」
「うっわ、マジで!?へえー、ふぅん」
「あたしの事をあなたが覚えてるとは思いませんでしたよ」
めっちゃ舐めるように見られた。もう頭の先から足のつま先まで。品定めを隠す事なくジロジロと。
「ちょっと見ねえうちに女になったなー、お前」
そりゃ五年も経てば変わるに決まってる。お化粧も覚えたし髪も整えるくらいの乙女心は備わってるんすよ、こう見えて。それに今日はオヤジ様の船と一緒の宴だから始まる前に一張羅へと着替えた。
戦闘では役に立たないワンピースに、細めのヒール。華奢なネックレスといつぞやの敵船の宝箱からちょうだいしたお気に入りの指輪だ。張り切ったドレスアップではないけど、普段着よりはいい格好。そんな感じだ。
「……いや、あの。見過ぎじゃないすかサッチさん」
「だって可愛いじゃん、お前。もっとよく見せろよ」
「…金取りますよ」
「ぶははは!言えよ幾らだ?」
「冗談です」
手酌で酒を飲みながらサッチさんは笑う。賑やかな演奏と歌声、踊りながら騒ぐ声が聞こえてくる。
「なあなまえ、今男いる?もうやった?」
「聞いてどうするんですか、そういうのセクハラです」
「酒の肴にちょうどいいだろ、言えよ」
この人は変わらないなあ。呆れ半分、懐かしさ半分だ。五年前も楽しそうにエロ本読んでたし、下ネタ大好きであたしの船の仲間と盛り上がってたし。酒の力か懐かしさからか、それともまたこの人と話せた密かな喜びのせいか。答えなくても良いってのに口を開いた。
「二人。でも全然気持ちよくなかったしもうしなくても良いですね。あたしはそれよりもっと仲間と冒険を…」
「えええ!!!なんで?!もうしなくていいの?!!」
……ええとですね?あたし今からちょっといい話しようかと思ったんすけどめっちゃ遮りましたねサッチさん。
「なまえお前なー、若い身空で何言っちゃってんの?やらないなんて人生の四分の三は損してるぜそんなの!」
どん、と机に乱暴に盃を置き、肩を掴まれ力説された。内容がコレじゃなきゃなあ。
「いったいどんな奴とやったんだ、お前!もっとマシなの選べよなまえ!」
二人とか言ったけど。実は本当はまだやってない。未開通であります。二回ほど機会があったものの、どっちも未遂で終わってしまったのだ。そろそろやっとくかー、みたいな気持ちで男娼買ったのに。あたしの刺青見て『すみません』と土下座された。挙句まだ死にたくないのでとか言われてガチで謝られ、お金は倍額で返金された。
二人目は刺青見てから股間がピクリとも勃たなくなり、手で扱こうが舐めたくもないのに頑張って舐めても萎縮したままで。殺さないでくださいと泣かれた。泣きたいのは私の方だろう、これ。もう、本気でもぎ取ってやろうかと思ったね。くそが。尊敬と敬愛を込めて身体に刻んだオヤジ様の刺青。
入れたことに後悔なんて微塵も無いけど、こんな効果があるとはビックリだ。適当に仲間にあたしとやってみないかと頼んでみようかとも思ったけどそういうのは何か違うよね。やっぱり大事な仲間だし。
「まあアレです。あたし多分、男見る目ないんだと思います」
だいたいあなたを好きになった時点でもう運なんて尽きてたんだろう。
「いやいや。お前に男見る目が無いんじゃねえよ。男の方が女の扱いクッソ下手なんだよ!」
サッチさんの大きな手があたしの手を掴んで、ぎゅっと握った。体温と力強さにドキドキする。
「おし、解った!俺がなまえにやるのはちゃんと気持ちいいって事を教えてやる」
「は?」
「やるの嫌いになられたんじゃァ、困るだろ?男としてさあ」
にやりと歪んだ口元と目元。今更『2人としたってのは嘘』と言えるような素直さがあればいいんだけど、そんなものはない。
「大丈夫だって、別に最後までやろうってんじゃねえよ。気持ちいい事覚えさせてやろうってだけだ」
ずっと、憧れていた。彼と寝た娼婦の話を聞いたり、同盟船にいる女クルーの話を聞くたびに、なんて自分には遠い人だと思ってた。オヤジ様に対する敬愛とは違う。女としての恋慕があった。一夜限りで構わない。思い出が欲しい。
「自信満々ですね、じゃ、お手並み拝見させてください」
「そうこなくちゃな!先に行ってるから、十分経ったら俺の部屋おいで。モビーディックの…」
船番には言っておく、と、自分の部屋の位置を教えてからサッチさんは立ち上がった。
「怖いなら逃げても来なくてもいいけどな」
捨て台詞残して立ち去った。ねえ、それ本気なの?冗談なの?思案しながら十分間を悶々と過ごし、結局、港に停泊中のモビーディックに向かった。サッチさんの言葉通りに船番の人はあたしを通してくれて、モビーディックにすんなり入れた。廊下を歩き階段を上る。ここか?と思う部屋のドアを小さくノックしたらサッチさんが顔を出して笑った。
「おう、いらっしゃいなまえ」
「…お邪魔します」
「ベッド座っていいぜ」
「う、…あ、はい」
部屋に入るのが初めてでつい見渡してしまう。汚く散らかっているのだろうと思っていた部屋は、予想外に物が少なく綺麗で、ベッドという単語に阿呆みたいに胸が鳴った。
ベッドに座るとサッチさんは隣に座った。近い距離に心臓が騒ぎ出す。
「はは、なまえ緊張してる?」
「いや、別に」
嘘だ。口から心臓が出そう。苦しい。精一杯平静を装って平坦な声で答えた。つもりだった。
「……あ!」
肩を抱かれたと思ったら眼前にはサッチさんの顔のドアップ。額が触れ、鼻の頭が触れ吐息が唇にかかる。
「キスする時、目ェ閉じねえの?」
ぎゅ、と瞼を閉じたら、唇が触れた。軽く、啄むように二・三度。
「……っ、んう、……っんく」
にゅるりと舌があたしの口唇をこじ開け、口内に入ってきた。柔らかくてぐにゃっとしてる。
「んう、んん…っん、……ふぅ…」
這い回る舌に翻弄されているうちにベッドに柔らかく押し倒されていた。 男の人の身体は、硬くて、重い。特にサッチさんみたいにデカイと余計にあたしとの体格差を意識せずにいられない。
「…、ふぅ…、サッ、ちさ…!」
海賊やっていれば馬乗りで殴られた事もあったし、押し倒されて首に刃物を突きつけられた事もあった。それらのどんな時よりも今、あたしの上に居るこの男は恐ろしい。壊れそうに心臓が騒ぎ立てて静かな部屋の中に響いているような気がしてくる。
「…嫌だったら、止めろって言ってな?」
「……っ!」
耳元に囁かれた低い声に腰が浮く。大きな手が膝から太ももに滑り、肌を這いながらワンピースの裾を捲り上げる。
「……待っ、…んう!」
開いた唇にまた舌が入り言葉を塞ぐ。とろり、と唾液が絡む。唇がが離れるとワンピースを潜るように脱がされた。硬い指に首を撫でられて鎖骨を辿り、下着の上から胸を撫でる。ゆっくり動くのが擽ったくて息が震える。
「…ふは、…ははは、っ、……あ!」
脇腹を撫でられると身体が跳ねる。
あたしの反応に合わせるように手や指が肌を舐めるようにゆっくりとゆっくりと這い回り、舌を絡めたキスが何度も繰り返される。
「あ、…あふ……っ、…」
時折、サッチさんの舌が首筋や耳を軟体動物のように舐めて吸い付き、皮膚の薄い肌を嬲る。触られて、キスしかしてないのに下半身はじくじくと熱を帯びてきた。
「……っ!サッチさ、…んぐ、んんぅ…!」
ふわふわと頭の中に掛かっていた靄が吹き飛ぶ。サッチさんの指がパンツの上から秘部を擦ってきたからだ。
「…待っ、んう!…さっ…、あふ、ああ、あぅ…」
首を捻ってサッチさんのキスから逃れる度、追って来た唇があたしの制止を阻む。どんな風に女を抱くんだろう、と興味があった。皆が口を揃えて『病みつきになる』と言うから。
「んん、…ぁ…あ!」
こんなに優しく溶かされるなんて思わなかった。サッチさんのあのごつい手が指がこんなに優しく動くんだ。くちくちと濡れた音が聞こえる。何てことだ、きっとサッチさんにも聞こえている。指が蠢く度にあたしはキスと快楽に溺れた。
「や、あぁ!そこ、もう……あァ…」
自分の身体が起こす反応に与えられる刺激に翻弄され続けた。
「…………、初めてイった感想は?」
「……疲れた…」
最初に言われた通り最後までどころかパンツさえ脱がなかったのに。汗はかくは、身体に変に力が入りまくったせいかぐったりする。緊張と不安と気持ちよさと、サッチさんの腕の中で乱れた感情はあたしを打ちのめすのに有り余り過ぎだった。
「ぶはは!これでへたばってたら最後まで持たねえぞなまえ」
ぐったりとベッドに横たわるあたしと添い寝する形で寝そべり、サッチさんはあたしの髪を撫でた。パンいちスタイルのあたしとは反対にサッチさんはスカーフ取っただけの完全着衣。
お遊びだから?そう思うと痛烈な思いが胸に沸き息苦しい。
「気持ち良かったろ?」
「…あたしだけですけどね。サッチさんは服も脱いでないし平然としてるし、ご指導ご鞭撻ありがとうございました」
拗ねたような嫌味を言って後悔した。初めからそういう約束だったじゃん、バカかあたしは。
「…え、うわぁ!!」
「勃ってんの解る?」
手を掴まれて股間に導かれソコを触らせられて変な声出た。
「随分煽ってくれたからな、次は最後まで相手してくれよ」
「え?え??」
「疲れたろ、なまえ。このまま寝ていいよ。起こしてやるからさ」
冗談に決まってる。
あたしはこの人の好みじゃないって知ってるもん。勃ってるのに、しなかったってのは、…つまりあたしには魅力が無いからって事でしょ。
「そういえばサッチさんてお喋りなくせに、してる時は全然喋らないね」
「…っ!!」
もっといやらしい事言われたりするのかと思ってたのに、息を乱して喘いだのは結局あたし一人。サッチさんは言葉を詰まらせた後、あたしの額に唇を付けてから瞼にもキスをくれた。
「……夢中になってる時ほど無口になっちまうんだよ俺は」
耳に届いた言葉は、あたしの作り出した甘言なのか。疲れでウトウトしつつ寝て良いの言葉に甘え意識が落ちる。そのまま眠ってしまい、遠く聞こえた言葉の真偽ははっきりしなかった。
「おーい、なまえ」
「…………」
「なまえちゃーん」
「…………」
「起きてダーリン、ゴハンの時間だっちゃ☆」
「……うう、何、クソみたいな事言ってんの誰…」
「…乳丸出しだけど、凄えサービスいいななまえ」
「!!!」
がば、と起き上がると、あたしはちゃんと服を着ていた。
「飯。できてるけど、大丈夫か?なまえ」
にーっこり、と笑うのは白ひげ海賊団の四番隊隊長・サッチさん。一瞬自分がここで何してるのか解らず混乱した。ああ、そうだった、昨日あのまま寝ちゃったんだった。
「いや、すみません。そこまでお世話になれないんで、あたしもう船に帰ります」
昨日はありがとうございました、と頭を下げてサンダルを履いていたら、サッチさんがカーテンを開ける。キラキラと眩しさに目を細めて焦点を合わせると、めっちゃ海の上でしかも景色が動いている。
「もう出港してるし、お前の船とモビーディックは反対方向を航海中」
「は?」
「ほい、これ」
反対方向?!早く出ないと追いつけなくなる!
焦るあたしにサッチさんが色褪せた紙を手渡す。広げてみたら『次に会ったら何でもサッチさんのお手伝いします。なまえ』とあたしの字で書かれていて、血判まで押してある。
「………………え、あの……なんすかこれ……」
「五年前に約束したろ、昨晩の宴でもパセリにも了解貰ってる。なまえ今日から俺のお手伝いよろしくなー」
「?!」
した覚えが全くないんだけど、この字はあたしの字だ。
「ナニ手伝って貰おっかなぁ、なあ?なまえちゃん」
昨日の宴で忘れたフリしたのはここに連れ込む為の嘘?!にやける顔を思い切り睨んで見たけど効果はなかった。
これは左遷か栄転か。
(なー、サッチさん好きって言ってみ?)
(嫌です)
(ふーん、五年前は言ったのに?)
(~~い、や、です!!)
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