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幸せ家族計画。
なまえ
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(※150,000リクエスト/いちご様)
(※お相手海賊マルコ/恋人同士)
(※エースの持ってきた怪しい食べ物を食べ♀とエース幼児化)
(※いたずらっ子な二人が一緒にお風呂に入る姿にマルコは眉間にしわ寄せ)
(side U)
無茶な飲み方をした訳ではない。はずだ。それでも私の頭の中には昨日の記憶の一部がスッキリと綺麗に失われていた。しっかりと残っているのは頭の中をガンガンと叩くような頭痛で、常備薬の二日酔いの薬を飲み干す。
「…いつの間に自分の部屋に来たのかさえわからない…!」
多少和らいだ頭痛に耐えつつ、昨晩同じテーブルで飲んでいた筈の仲間に尋ねて回った。
五番隊・ビスタの証言。
「…ああ、昨日の話か。止めてやれなくて悪かったと思っている。何せなまえが酔うとああなるなんて知らなくてなァ…、大丈夫だ。マルコには黙っておく」
十六番隊・イゾウの証言。
「覚えていねえだと?…それならエースによく謝っておくんだな。お前の隣に居たばっかりにあんな目に…、そんな顔するな。マルコには告げ口しねえでやるさ」
四番隊・サッチの証言。
「お、なまえじゃん。コーヒー飲むか?昨日は随分いいモン見せてくれたよなあ、楽しませて貰ったぜ!…は?エース?……ぶひゃひゃひゃ!!覚えてねえのかよ最高だな!マルコにバレたらどーなるかなぁ、なあ?内緒にして欲しかったらチューしてくんない?…イテッ!」
どうやら酔ってエースに迷惑をかけたと言うのは事実らしいけど、…ナニをしたのかははっきりしない。皆が口を揃え『マルコには黙っておく』ということばかり。何したんだろうか私。そんなに酷いからみ酒を披露したのか?泣いた?喚いた?それとも脱いだ?!
「うううう、全然思い出せない!」
サッチの淹れてくれたコーヒーを前に頭を抱えていると、食堂にエースがやって来た。
「サッチー、おはようございます腹減った!…あ」
元気よく挨拶し、サッチに食事を要求して、私と目があった途端に目を逸らされた。不自然なほどあからさまに。
「…俺、後でまた来る」
「~~~サッチ!どうしようエースが私の事避けてる!!」
足早に食堂から出ていく背を見送り、サッチに泣きついた。エースと顔を合わせたのは三日前。任務から戻ったら新しく仲間になったのだとエースを紹介されたのだ。
「三日前、初めましての挨拶してから結構仲良くしてくれてたのに!めちゃくちゃ私の事避けてる!!」
「…んー、まあ仕方ねえさ。あ~んな事しちゃったじゃん、なまえ」
にやにやと笑いコーヒーの横にチョコレートが置かれた。サッチなりの慰めを口の中に詰め込む。甘い。流石に殴りかかったりしてはないと思うけど、あんな風に避けられるような事をエースにやらかしたのは確実のようで気が沈む。
「今日上陸する無人島、マルコとの合流地点だろ。挙動不審してると大事なマルコにバレちゃうぜ?」
「ちょっとサッチ!島についてからマルコに変な事、言わないでよね」
他の海賊から奪った宝の隠し場所が、今回上陸する無人島なのだ。
島のどこかに貯め込んだお宝が隠されており、皆で宝探しをする予定になっていた。その偵察に出たマルコからこの無人島で間違いなさそうだと連絡があり、上陸が決定した…と聞いている。
「俺は言わねえよ、口止めにチューしてくれるんだろう?なまえ!」
私は、ぐ、と言葉に詰まった。ほっぺにキスする程度でもサッチは黙っててくれるだろうが、キスしたのがマルコに知られたら元も子もない気がする。余計に心労増やしてない?
「………」
…だいたい私が飲み過ぎた(らしい)のはマルコにも原因はあると思う。こっちは任務でしばらくウチを離れてて、やっと帰って来たのはエースが息子になった直後だ。
久し振りのオヤジや仲間たち、それにマルコに会うのを楽しみに帰って来たのに。よりにもよって私と入れ違いにマルコは任務へと発っていた。挨拶するどころか顔さえ見てないんですけど!?発つ前に伝言の一つさえなかった。これが恋人に対する仕打ちだろうか?私はこの日に帰るねって連絡したし、会えるのを凄く凄く楽しみにして帰って来たのに!
「…ていうかさ、マルコが居ないから私がクソほど酒を飲む羽目になったんじゃないの?」
「…昨日も同じこと言ってたぜ。覚えてねえんだろうけどさ」
ポツリと漏らした愚痴にサッチは私の頭を撫でる事で答えた。
「あいつだって、なまえの事気にしてねえ訳じゃねえよ。新入り騒動で忙しくて手が回らなかっただけだよ」
「………」
館内放送が鳴り、じきに島に着くと告げる。サッチは私の手を取り促す。
「ホラなまえ!美味い飯作って待っててやるから、楽しんで来いよ」
「やだ。今マルコの顔見たくないし、寝る」
コーヒーを飲み干してからサッチの手を掴んで手の甲に唇をつけた。ちゅ、と音を立てて「キスしましたよ」って証拠にする。
「あ!狡ィぞなまえ!」
「キスはキスでしょ、内緒にしといてよね」
文句を言うサッチを残し部屋に戻りベッドに沈み込む。目を閉じて毛布を頭から被って二日酔い消化に全力を注いだ。
しばらくそうしていたら館内放送が島に着いたと告げる。無視してベッドに横になり続けたけれど眠りはちっとも訪れず、私は寝返りを打った。
「!」
こん、と控えめなノック音が聞こえた。
「…なまえ居るかい?」
私の許可を取る前にドアの開く音が続く。声で誰かすぐに解ってしまい、迫真の演技で寝たフリを続行した。なんで。やめてよ。
「おい、…なんだ寝てんのかい」
小さな声が私を呼ぶ。大好きなマルコの声。島に着いたからマルコもこっちに合流したんだろう。てっきり皆と宝探しに行っちゃうんだと思ってたのに。寝息に注意を払いつつ、気配にも細心の注意を払う。
「………」
足音が近寄りベッドが軋む。マルコが座った気配がして私の髪を手で梳く感触。額に柔らかな何か…多分、マルコの唇が触る。
「…おやすみ。また後でな」
呟きを残しマルコは部屋から出て行った。
たっぷりと百を数え、無言で跳ね起きた。愛刀に不備がないかを確かめてから部屋を出る。廊下をコソコソと移動し、マルコに会わないうちに無人島へと降りた。一箇所に止まっていてはエンカウント確率倍増だから。
島では既に浜辺では穴を掘ったり岩陰を覗いたり、チームを組んで森へと探検へ出て行っている仲間の姿が見える。私もそれに混ざり、森へと足を踏み入れた。
「おい、なまえ!一人で深くまで入るなよ、迷うぞ!」
「行くなら誰か連れて行け。コンパスと医療具は持って来たのか?」
葉を掻き分け進もうとする私の服を掴み、仲間が止める。
「だってじっとして居られないんだもん!落ち着かないの動いてないと叫びそうなの」
会いたくてたまらなかったマルコにいざ会おうとなると何故か恥ずかしくて。しかもさっきのキスだ。マルコって私にあんなに優しかった?
マルコの方こそ私と会わない間にナニかやったんじゃないの??
「仕方ねえな、発煙筒を一つ分けてやる。何かあったらすぐ上げろ」
疑心暗鬼に駆られる私を、宝探しに燃えていると勘違いした仲間たち。用心しろと筒を一つ、私にくれた。
「ありがとう。じゃ、私はあっち方面から攻めるね」
人の気配から遠ざかったのを確認してから、木の幹に寄りかかり座り込む。この後でどんな顔をしてマルコに会えばいいんだろう。
いくら周りに口止めしたって、エースにあんなに避けられていたらすぐに何かやらかしたってバレちゃうよ。とんでもないような変な事してて、マルコにもエースにも今後口聞いてもらえなくなったらどうしよう。
「…………はぁ」
何度目のため息だろう。膝の上に額をつけていると情けなさが増してくる。良案どころか悪い想像が頭を過るばかりで。
「ん?」
ナニか頭に触れ顔を上げた。ひらり、と赤いものが視界をよぎったのだ。
「うわ、え、何?!」
次々に私の頭の上に降ってくるのは赤い花。
寄りかかっていた木の上を見上げると、生い茂る葉に隠れながらも枝の上に人の姿が見えた。
「…なにしてるの。エース」
ひらり。また花が降る。
「…何か、元気ねえみたいだから」
どこからこんなにとって来たんだろう?まるで花吹雪だ。不規則に降ってくる花びらはとても綺麗で、ささくれた気持ちが和らぐ。
「ねえ降りて来てよ、…話がしたいの」
戸惑った気配がした後、ざざ、と葉を揺らし人影が側に降って来た。
「…泣いてんのかと思った」
「誰が泣くってのよ」
帽子を被り直したエースが私の顔を見て安堵したように言う。隣に座れと促すと同じように木の幹に背を凭れかからせ腰を下ろす。
「宝探しに行かないの?」
「いや、お宝探してたら泣き虫がいたから」
「泣いてないでしょ!もう…」
心配してくれたんだ。てっきりエースはもう近寄ってこないと思ってたから嬉しい。花の一つを摘み上げ鼻を近づけると甘い香りがした。
「これさ、蜜があって甘いんだ。あっちでたくさん生えてんの見つけた」
エースは花を口に入れ、ちゅ、と吸ってみせた。それに倣い私も口に含む。花独特の蜜の味。
「…あは、本当だ。甘いね!」
花の蜜をチューチューやってたら、エースが急に畏まって咳払いした。
「元気出たなら、良かった。……なまえ、お……おね、おねえちゃん…ッ」
「ぶは!」
私は口に入れていた花を盛大に吹き出した。
今何て言った?なまえお姉ちゃん?!私の事お姉ちゃんって呼んだの?
「…何で噴くんだよ!アンタがそう呼べって言ったくせに!」
横を見れば花よりも顔を真っ赤にしたエースが憤慨する。
「…もしかして、昨日の夜?」
「そうだよ!…なまえ、お、ねえちゃんって呼ばねえと、家族とも弟と認めないって言うから!」
なんて事言ってんだ!酔っ払い怖い!!私の事だけど!!!
「…私、エースに他に何かした?」
「……歩けねえから、部屋までおんぶしてって言われたからおんぶして連れて行った。部屋に着くまでずっと歌ってたし、俺にも歌えって」
「本当すいません」
ぷい、と顔を逸らすエースに私は速攻で頭を下げた。皆してはっきり言ってくれないから、もっとこう…セクハラ的ないかがわしい事したのかと思ったじゃないか!
「それでさっき食堂で会った時、逃げたんだ…ごめんねエース!重かったでしょう」
「俺は逃げてねえ!ちょっと照れただけだし、なまえお姉ちゃんは別に重くない。余裕でもてるし」
「…っ!あ、あり、がと…」
やばい。仲間からお姉ちゃんとか呼ばれた事無いし慣れない。何かもぞもぞするっていうか…可愛い。エースは素直な子だな。仲間からは『尖ったナイフみたいな暴れん坊主』が仲間になったって聞いてたんだけど。
さっきまでの暗い気持ちが消えていく。エースのおかげだ。そうなると単純なもので、早くマルコに会いたくなって来た。
「あ、そうだ。さっきの花の所でこれも見つけたんだ。なまえお姉ちゃんにも分けてやる」
一度口にしたら慣れたのか、私が呼ばなくても良いと言わないせいか。エースは素直にお姉ちゃん呼びを続けつつ、鞄から小粒の実を取り出した。
「赤いヤツと青いヤツがあるんだ。多分食えると思う」
「へえ、いただきます」
私とエースは揃って赤い実を口に入れた。甘酸っぱい味が口内に広がる。
「…あれ…なんか変じゃない?」
甘くて美味しいと思った後から変化はやって来た。目の錯覚かな?
何かエースの身体が縮んでいってるんどけど。
「「…えええええ!!」」
私たちは互いを指差しつつ叫んだ。サイズが合っていた筈の服がずり落ちる。視界はいつもの半分以上は下がっていて、見えてる景色がおかしい。何より目の前のエースはどうみても三歳児くらいのちびっ子。やんちゃ坊主って感じで、ほっぺたがふくふくしてる。
「た、大変だぞなまえお姉ちゃん!アンタ子供になってるぞ!!」
大慌てのエースは自分も同じ目に合ってると気づいてない。
「…うん、まあ、エースもね…」
「え?…うあああアアァ!!!!?」
深い森の中、エースの叫び声が木霊する。
変なもん食いやがって。マルコの声が聞こえた気がした。
→(Side MARCO)
