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休憩しましょ。
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(Side U)
「おいなまえ。マルコの仕事、しばらく盗ってこい。あの野郎放っておくといつまでも仕事ばっかりやりやがる」
廊下で船医に呼び止められた私はそう仰せつかった。月に一度は頼まれる諦めを含んだ要請に二つ返事で引き受ける。
「まかせて、了解!」
ここしばらくマルコとまともに会話してない。仕事が詰まるといつもそう。側に行ける大義名分を得た!とばかりにキッチンに走った。
お湯を沸かしてわざわざ豆からコーヒーを淹れる。もちろんブラックで。
トレイに乗っけてマルコの部屋へ急ぎ足で向かった。
「あれ、なまえ。どこに行くんだ?」
私とすれ違うタイミングでエースとサッチが階段を降りて来る。ぶつからないよう華麗なステップで避けた。
「マルコの所。強制休憩を取らせに行くの」
「あー、マルコって趣味仕事だもんな」
「違うぜエース。趣味オヤジだろ?」
「はははは!そうだな、マルコは趣味オヤジだな!!」
ひどい言われようだけど私もそう思う。
もう少し興味の範囲内に私の居場所も作って欲しいのに、マルコは仕事とオヤジで頭の中がいっぱいなんだ。
「あ、そうだ!じゃあコレは俺から。マルコにやるよ」
エースがポケットを探り小さなお菓子をトレイの上に乗せた。デフォルメされた動物のイラストがプリントされている。
「マルコは甘いモンって頭に良いって聞いた。仕事でいっぱいの頭にもいいんじゃねぇかと思って」
「…その言い方、マルコ聞いたら怒りそう。でも渡しとくね、ありがとうエース!」
エースは照れた様に笑う。マルコを心配しているのは私だけじゃないんだよね。マルコってば人望あるからなー。
「あっ!じゃあ俺も俺も!ちょっと待ってて!」
サッチもポケットを探り、なぜか後ろを向いてゴソゴソと取り出した何かを器用に紙で包んだ。そして薬でも入っている様な包みをトレイに乗せる。
「…じゃ、一時間ぐらいごゆっくり~っ、て伝言しといてくれよ」
「了解。言っとく」
モタモタしているとせっかくの淹れたてコーヒーが冷めてしまう。私は二人にお礼を言ってからマルコの部屋に急いだ。
「………はぁ。無反応か」
ドアをノックをしたけど返事さえ返って来ない。溜息を吐いてからそっとドアを押すと小さな音を立て扉は開く。
「…マルコー、お邪魔していい?」
声を掛けるとやっと気がついたみたいに私の方を向いてくれた。机の上には書類と資料、ペンとインクが散乱している。床には積み上がった本の山。
「なんだい、なまえか?問題でも起きたのか?」
最近は近いモンが見辛くなった…と言ってかけ始めた眼鏡を指で軽く押し上げて目を擦る。目薬も持ってきてあげればよかった。
「ちょっと休めって船医からドクターストップだよ」
「あ"ー…見逃してくれよい」
眼鏡はいつもつけないで、書類と睨めっこする時にだけかけている。少しだけ感じる違和感にドキドキする。
「ダメ。はい、机から離れてベッドに行って」
渋るマルコを引き立てるように机から遠ざける。眼鏡を外して机の上に置いてからマルコはベッドに座った。
…いつもの顔だ。クマを除けば。疲れてるみたいだけど眠そうな目も変な眉毛もいつもの通り。
マルコの隣に私も座り、コーヒーとお菓子のトレイを差し出す。
「はい。とりあえずお腹に何か入れて仮眠して」
「ああ、ありがとさん」
カップに口をつけ一口飲んでから、ふ、と笑った。優しいシワが目尻に寄る。
「…なまえが淹れただろ?」
「当たり。よく解ったね」
「お前が淹れる味を知っているからな。美味いよい」
「…、どういたしまして」
言ってくれたらいつでも淹れるのに、マルコは忙しくてコーヒーを淹れてくれと言ってくれない。本当は好きじゃないのかって不安になるけど、ちゃんと私が淹れたって解ってくれた事が嬉しかった。
「ねぇマルコ、止められる前にちゃんと休憩挟むのも自己管理のうちなんだと思う」
「耳が痛ぇな」
コーヒーをゆっくりと飲みながら苦笑いした。困ったみたいに眉が形を変える。この顔も私は好きだ。
自己管理とか何とか言ったけど本当は私にかまって欲しいのが半分本音。マルコはモビーディックとオヤジの為に何でもする。下らない嫉妬だ。ワガママだ。
「…どうした?なまえ。そういやお前の分はないのかい、少し飲むか?」
ぼんやりとマルコを見つめていたのを指摘されて私は慌てた。コーヒーが飲みたくて見ていた訳じゃないのに!
「わ、私はいらない!えーと、これ、エースとサッチから!!」
トレイの上のお菓子をマルコに渡す。大きな手の上にカラフルな包み紙が可愛い。
「なんだい?……飴か。糖分摂れって事かねい。ありがとさん」
「エースに言ってあげてよ」
なんて可愛くない言い方だろうか。もっと良い言い方があったんじゃないの?どうしよう、マルコと話すのが久しぶりで緊張する。変に思われたりしていないかな?マルコは私と話さなくても平気なんだろうけど…。
唇を噛んで黙った私にマルコは包みをいくつか手渡した。
「なまえにもやるよい。どうも甘いモンは苦手でな…こんなに食えないよい。エースにも後で礼を言っておく」
「…ありがとう、いただきます」
包みを開くと赤いキャンディが入っていた。口に入れたらイチゴ味が広がり、苦い気持ちを少し和らげた。
「ん?コレは?」
「そっちはサッチから。ああ、そう言えば伝言もあるんだった」
マルコが紙を開いているのを横目に私はサッチからの伝言を伝える。
「えーと…確か『一時間ぐらいごゆっくりー』だったかな。……どうしたのマルコ?」
包みを開いてから微動だにしないマルコを覗き込んだ。
「あ?いや…」
口ごもり包みをポケットにねじ込んだ。怪しい。何か隠した。
「サッチからの何だったの?変な薬?」
「いや……おいっ!やめろなまえ!」
絶対怪しい!もしかして私に内緒でサッチと何か悪巧みしてるの!?マルコはコーヒーカップを脇のチェストに急いで置くと、私の手を阻む。
「阿呆!やめろって…ああクソ!」
マルコのポケットを狙って手を伸ばしたけどことごとく止められ、私はムキになった。狭いベッドの上ではマルコも避けにくいらしく、私達はバランスを崩した。
「…取った!…………っ!!」
マルコに馬乗りになる様な態勢で私は奪い取ったモノを確かめた。すぐにマルコが奪い返したけど、それは間違いなく…。
「…おい。なまえ」
「いや、えっと、あはは、はは…」
それを見られた事で開き直ったのかマルコが身体を起こして私の両腕を掴む。腕を掴む片方にはアレが握られている。
「いや、待って待って待って!」
「待たねえ。せっかく気を効かせて貰ったんだしな、期待に応えておこうと思わないかい?」
「思わない…んっ」
ちゅ、と唇が触れる。最後にキスしたのがいつか思い出せない。変に照れて顔が熱い。
…サッチからの包みには、なんと避妊具が入っていたのだ。ゴム持ち歩くとか馬鹿なんじゃないの!?脳味噌が下半身にでも詰まってるんじゃないの?
「してなかったよな…ここしばらく。一時間ぐらいごゆっくりするかい、なまえ?」
服を脱がしにかかる手を必死で止める。今日の下着は可愛くないし、しばらくしてないから今触られたら絶対ヤバイ。
「ま、マルコマルコ!仕事続きで疲れてるんでしょ?寝なよ!一時間ぐらいしたら起こしてあげるから!」
「疲れてると何か勃つんだよい。もうそういう気分だ、諦めろなまえ」
「わああ!マルコ、……っあ」
マルコに馬乗りになったまま私はがっちりと腰を掴まれて身動きとれなくされた。なんとかマルコから距離を取ろうともがくと、脚の間に硬いものがあたる。何があたっているのかは重々承知している。
「今したらサッチにバレバレじゃん!ヤダって、マルコ!」
「何を今更…俺達がヤってるのは皆知ってるだろい」
いやまぁ、お付き合いしてますから!確かに皆そう思ってるだろうけど!今してきました〜みたいなのまで知られたくないじゃん!
「あっ、…や、あ…っ」
服の隙間を縫って入り込んできたマルコの手が直接肌に触る。首を舌が這って時々ちゅ、ちゅ、とキスが落ちる。信じられないくらいゾクゾクしてわずかな動きに腰が揺れる。
「…マルコっ、…ホントにするの?」
「なまえがどうしても嫌なら我慢するよい」
ガチガチになったものが脚の間で主張してるのにマルコは手を止めて私を見つめる。
「…俺が仕事を頑張っていたなと思うなら、ご褒美をくれよい。なぁ、なまえ…」
「~~、そういう言い方ずるい!」
私がマルコの肩に額を押し付けて呻くと、また手が這い回り始めた。私なりの了解の合図にマルコは気がついたからだ。
「息抜き、させてくれよい」
甘い甘い
息抜き。
(おーや、マルコ?スッキリした顔デスなぁ?)
(サッチお前ケチらねぇで二、三個寄越せよい。足りねぇ)
(二人共、それ以上喋ったら殴るからね!!バカーー!)
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