夢に描いた幸せ(III中編)

私はパン屋さん。両親はもう亡くなってしまったけれど、一人で切り盛りしている。私が一人でも何とかやっていけるのは街の人の笑顔があるから。私のパンを食べてみんなが幸せそうに笑っている。それだけで充分幸せだ。
そんなある日、この国の王子様が舞踏会を開くことを友達の小鳥ちゃんから聞いた。

「#name#は行かないの?」
「ドレス持ってないしね。それにあんまり興味ないかな。小鳥ちゃんはいくの?」
「私は行くつもり!王子様を近くで見られる機会もないし!」

小鳥ちゃんだったらもしかしたら王子様に見初められるかもしれないなぁと呑気に考えていた。小鳥ちゃんはパンを買って帰っていった。

「おい、修理終わったぞ。」
「ありがとうカイト。はいこれお礼」

パンを焼く機械のメンテナンスが終わったらしく、幼馴染のカイトが奥から顔を出してきたので、いつものパンを渡しておいた。

「舞踏会行かないのか?」
「行かないよ。カイトまでそんなこと聞くなんて思わなかったな。」
「オレはどうでもいい。ハルトが気にしていたから聞いただけだ。」
「あら、そう。」

…相変わらずな態度だな。と思ったが口には出さないでおいた。カイトも帰っていって店には静寂が訪れた。今日はお客さん少ないな。なんて思っていたら一人パンを買いに来てくれた。

「こんにちは。まだパン残ってるかな?」
「いらっしゃい III!まだあるよ!」
「よかった!どれにしようかな?」

IIIがパンを物色している。IIIは毎日ではないけど、ちょくちょく来てくれるお客様だった。最初は見た目が可愛いらしいので女の子かと思ったけど、れっきとした男の子なのだ。(一回失礼を承知で聞いた。)気遣いもできるし、所作も綺麗で素敵な人だと思っている。

「じゃあこれお願いします。」
「いつも来てくれてありがとうね。」.
「いえいえ、そういえば#name#は今日の舞踏会には行かないのかな?」

今日三度目…。みんな興味津々なんだな。

「私は行かない。ドレスも持ってないし…。街の女の子達は行くみたいだけどね。」
「えぇ!絶対行った方がいいよ!」
「でもなぁ…IIIはどうしてそんなに舞踏会を勧めてくるの?」
「えっ…。せっかくの機会なのにもったいないなと思っただけで…。」
「確かにそうかもしれないけど…。」
「ごめんね。行きたくないのに無理に行く必要はないよね…。」

そうしてIIIもパンを持って店から出ていった。舞踏会か。行っても恥をかくかもしれないし。
IIIに勧められてちょっと行ってみたい気持ちも出てきたが、やっぱり行くのは諦めることにした。
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