YGO ZEXAL ドルベ短編
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席に着いたとき、机の中に便箋が入ってるのに気づいた。中を開けてみると今日の放課後屋上に来てください。大事なお話があります。待っています。という一文と差出人の名前が書かれていた。これはもしかして…?いや、でも私に…?自分で言ってて悲しくなるが、璃緒の机と間違えている可能性も捨てきれない。…あまり気は乗らないが無視するのも気が引けるし、放課後屋上に向かってみるか。本当に間違いなら伝えてあげなきゃいけないし。その日は少し憂鬱な気分で授業を受けることになった。
ガチャと屋上の扉を開くと既に男の子が立っていた。扉の開く音に気づいたのかゆっくりとこちらを振り返る。赤いネクタイだから、年下の男の子か。目がクリクリしていて、可愛らしいというのが第一印象だった。男の子は私と目が合うと一目散に近づいて来た。
「よかった!来てくれないかと思いましたよ!」
「…あの、呼び出しは私で合ってる?璃緒と間違えてない?」
「はい!あなたで間違いありません!」
迷いなく力強く答えられたので、間違いではないというのはよく伝わって来た。すると男の子はガシッと私の手を握ってきた。その力が思っていた以上に強くて…私は少し眉間に皺がよった。
「…オレあなたに一目惚れしたんです!どうか付き合ってもらえませんか!?」
まさか、自分が告白されるとは思ってもいなかった。璃緒や小鳥ちゃんを見てて、モテる女の子は大変だなぁと他人事のように考えていた。おっと、そんなことより早く返事をしなければ…。目の前の男の子は悪い人ではなさそうだけど…。
「ごめんね、私あなたとは付き合えないの。あなたのことよく知らないし…。」
…私にはずっと前から好きな人がいる。それを伝えたほうが良かったのかもしれないが、何せそのことを誰にも言っていないためにこの男の子に言うのも憚れた。するとずいっと私に一歩つめよってきて、私は思わず後ずさる。
「だったら!まずはお試しで付き合ってください!」
「お試しって…。」
「1ヶ月まずは付き合ってください!そこから考えてください!」
「いや、でも…。」
「先輩彼氏いないんですよね?だったらお願いします!」
うっ…。嘘でも彼氏がいると言ったほうがよかったのかこれは。彼の言葉は強引で私は首を横に振ることができなかった。ドルベに片思いをしているのに…。結局私はその子に押し切られて付き合うことになってしまったのだ。なんて情けないのだろう。
その翌日、彼氏は一緒にお弁当を食べましょう。と誘って来てくれたが、今日は七皇達とお昼を食べる約束をしていたので、断った。なかなかにしつこかったけど、ずっと前から決まってたことなのと言って納得してもらった。これから1ヶ月はこんな感じなのだろうか…と私はため息をついてしまう。
「……元気がないな。体調でも悪いのか?」
「大丈夫。さっき体育だったから疲れているだけだよ。」
隣に座っていたドルベが心配そうに顔を覗き込んでくれていた。私は気を遣わせまいと明るく答えた。するとベクターがあ、そういえばと話し始めて、私は嫌な予感がした。
「お前彼氏できたんだってな?」
「…っ!!」
ベクターの爆弾発言に賑やかだったみんなが静まり返り、カラン…とドルベがお箸を落とす音がやけに響いた。私は食べていた卵焼きを喉に詰まらせそうになってしまい、むせていた。
「大丈夫か…。」
ドルベが背中を優しく摩ってくれて、何とか落ち着いて来て、私はベクターに反論する。
「な、なんでベクターが知ってるの!」
「お前の彼氏がクラスで言いふらしてたんだよ。告白したらOKしてもらえたって」
あの子、ベクターと同じクラスだったのか…!最悪だ。ということは遊馬くんや小鳥ちゃん達にも絶対に伝わっている。
「いや、あれは…」
「……君に彼氏ができたのか。おめでとう。よかったな。」
ドルベは落としたお箸を拾いながら、少し掠れた声で笑ってくれていた。影を帯びたその笑顔が私の心にズシっと重くのしかかってくる。
「…私は用事があるから退散しよう。彼氏と幸せにな。」
「あっ!ドルベ…。」
「ちょっと!どういうこと?詳しく聞かせなさい!」
「話すまで解放しねぇからな!」
「璃緒…アリト…。えーっと」
ドルベは優しい言葉だったけど、どこか突き放すような響きだった。私はドルベを追いかけようとしたけれど、璃緒やアリト達に根掘り葉掘り聞かれてしまう羽目になり、ドルベを追いかけることはかなわなかった。彼がいなくなってから心のざわつきが止まらなかった。
付き合ってみて1週間、私の彼氏はやたらと一緒にいたがるということがよくわかった。行き帰りは当たり前。お昼も一緒に食べる。学校では授業中以外は私にベッタリだ。私はまるでずっと息のできない水槽の中に閉じ込められているようだった。今日も校門で待ち合わせ…。行きたくはないけど、行かないと後でもっと面倒なことになる…。私は重い足取りで歩いているとポンっと肩を叩かれた。振り返るとドルベが立っていたのだ。ドルベとはあのお昼の時以来まともな話せていなかったので、胸が少しときめいてしまった。
「…ドルベ!」
「今から帰りか?スミレさえよければ途中まで帰らないか?」
「あっ…。」
嬉しすぎるドルベからのお誘い…。だけど今日はもう既に彼氏が校門でスタンバイしている。三人で帰るなんて了承してくれるわけもないし…。
「ごめんなさい…。彼氏が…。」
「…やはりそうか。スミレの事情も考慮せず誘ってしまってすまない。」
「ドルベは何も悪くないよ。」
「ではせめてこれだけ…手を出してくれるか?」
ドルベに言われて素直に両手を出すと、ラッピングされたクッキーが私の手の上にそっと置かれた。
「これ、どうしたの?」
「家庭科で作ったのだが、少し余ったのでな。君は甘いものが好きだろう?」
「うん!大好き!本当にもらっていいの?」
「あぁ。…よかった。」
クッキーを受け取った私を見て、ドルベは安堵の表情を浮かべていた。
「どうしたの?」
「いや、スミレがここ最近笑っていないように見えたから…久々に笑ってくれたなと。」
「そ、そんなことないよ?」
「…そうは言うものの、君はすぐに無理をする。何があっても私は君の味方だ。なんでもすぐに相談してくれ。」
そう言ってドルベは私の横を通り過ぎていった。…どうして私が付き合ってるのはドルベじゃないんだろう…。ドルベだったらこんな想いはしなかったのかな。私はドルベの後ろ姿が見えなくなるまで見送った後に校門に行ったら彼氏に遅かったですね?何かあったんですか?と言われてしまい、教室に忘れ物しただけだよ?と言ったら次は教室まで迎えに行きますね!と屈託のない笑顔で言われてしまった。
付き合って2週間がたった。彼氏と付き合ってからと一週間がやたらと長く感じる。私はきっと彼のことを好きになることはない。ならばこの関係を早急に終わらせるべきなのに…。頭ではわかっているが、あの人に言ったところで理解してくれないだろうという気持ちが強くて、私は言い出すことができなかった。…大丈夫。私は耐えるのは慣れてる。
今日も1日が終わって帰ろうとした時に、立ち上がった時にめまいがしてすぐに座ってしまった。あぁ、早く行かないと、また連絡が来て、迎えに来られてしまう。しんどさを堪えて私は立ち上がった。
フラフラとした足取りで教室から出ると、彼氏が教室の目の前で待ち構えていた。
「心配になって来ちゃいました!ほら帰りましょう!」
今の私にはその声が脳に直接ガンガンと響いて…それどころではなく、とにかく早く帰りたい一心だった。彼氏が私に手を差し出してくれたが、その手を取ることもなく私はフラフラと歩き始める。
「先輩!待ってくださいよ!」
あぁ、うるさい…。さっさと早く歩いて置いて帰りたい…。だけど、体調的にそれはできない。私はズンズンそのまま歩いていると足が縺れてこけてしまいそうになる。私は痛みに備えて目を瞑ったが、いつまで経っても痛みが来ない。恐る恐る目を開けると私はドルベの胸に収まっていたのだ。
「…やはり無理をしていたんだな。」
「…ドルべ。」
抱き止められた私を見て彼氏がドルベへと詰め寄っているのが見えた。
「あなた一体なんなんですか?先輩の彼氏は僕なんですけど?」
「彼氏…か。笑わせるな。彼氏なら彼女の体調のことも常に気にかけておくものだ。」
ドルベの顔を見た途端、安心してしまったのだろうか。私は意識を飛ばしてしまい、そのまま彼に体を預けてしまった。これ以降のことは覚えておらず気づいたら自宅のベッドで寝かされており、銀髪の端正な顔立ちの眼鏡の男の子が送ってくれたのだということを両親から聞いたのだった。
私が寝込んでしまい学校も数日休んでしまった。ドルベからと彼氏からメッセージが来ていたが、ドルベは文面からもこちらを気遣ってくれているのがわかる文章で胸がほっこりしたけれど、彼氏からは「なんで体調が悪いことを隠してたんですか?!」というズレたメッセージが延々と来ていたのでもう返信しなかった。明日は学校に行く。カレンダーを見たらようやく3週間…。
私は明日から学校に行くというメッセージをドルベにだけ送っておいたのだった。
彼氏のいない登校はものすごく気が楽だった。言わなきゃ今日から学校に来てることバレないかなぁと思ったんだけど、どこからか聞きつけたのか、お昼休みにやって来た。
「先輩!元気になられたんですね!よかったぁ!」
「おかげさまでね…。」
正直君のせいだけど…という言葉が喉から出かけたが、ぐっと抑えた。
「ねね、今日から一緒に帰りましょうよ!」
「そうだね…。じゃあちょっと話したいことあるから。放課後時間あるかな?」
「はい!喜んで。」
…一緒に帰る気なんてもうない。私の真意に気づかない彼氏は目をキラキラと輝かせていた。
放課後、空き教室で彼氏を待つ。待っている間に私は何度も深呼吸を繰り返していた。よし、大丈夫。デッキも持って来たし最悪デュエルに持ち込めれば…。と考えていたら教室のドアが開いて彼氏が入って来た。
「先輩、どうしたんですか?」
「…単刀直入に言うね。……私と別れて。」
拳をぎゅっと握りながら、少し声は震えたけれど、何とか伝えることができて少しホッとした。だが彼氏はキョトンしている。
「まだ、1ヶ月経ってないですよね。どうしてそんなことを言うんですか?」
「…付き合ってみてわかった。私はやっぱりあなたのことは好きになれないと思ったから。」
「あの眼鏡の先輩に何か言われたんですね…?」
彼氏はジリジリと私の元へと近づいてくる。私も距離を取るべく後ろへと下がっていく。
「…ドルベは関係ない。私がそう思ったからだよ。」
「あーあ。ちゃんと好きになってもらおうと思ったのになぁ。」
彼氏の目から光が失われている。そして私の背中が壁に当たった。もう後ろには逃げられない。目の前には彼氏。横に逃げようとした私を逃げ道を彼は足で塞ぐ。
「もういいや。手を出して先輩を自分のものにしちゃえばいいですよね。…そうすればもう逃げられませんよね?」
不気味に笑いながら顎をぐいっと掴まれて、徐々に彼の顔が近づいてくる。恐怖で体が固まってしまい、涙が頬を伝った瞬間に乱暴にドアが開かれた。
「やめろ!!!それ以上スミレに触れるな!!!」
突然のドルベの震えた怒声が教室中に響き渡った。それに彼氏が驚き隙を見せた。私はその隙を見逃さずにドルベの元へと飛び込んで行った。ドルベは鋭い目つきで彼氏を睨んでいる。
「ドルベ…!!どうしてここが…。」
「昨日彼氏と話すとメッセージをくれただろう。だから気になって…校舎中を探していた。そうしていたら声が聞こえてきたのでな。」
ドルべは私を背後に隠し、彼氏へと対峙している。その背中はとても大きくて、頼もしかった。
「あんたのせいで!あんたさえいなければ…!!」
ドルベに向かって彼氏が突っかかって来たが、ドルベは冷静に対処し、一撃を喰らわせてそのまま彼氏が倒れた。
「彼女を苦しませることしかできない者には側にいる権利はない。」
倒れる彼にそう吐き捨てたドルベ。か、カッコいい…。私は安心したのか腰が抜けてしまいペタンとその場に座り込んでいた。
「…よく頑張ったな。」
「……ドルベ!!!」
「…もう大丈夫だ。」
ドルベは子供のようにわんわん泣き出した私をよしよしと言った具合に撫でてくれた。ドルベの大きな手はいつも私を落ち着かせてくれるのだ。
私が落ち着いた後、ドルベは彼を担ぎ上げると保健室へと連れていった。(保健室の先生には彼が勝手にこけたことにしておいた)
保健室から出て、並んで歩く私達。窓の外を見ると日が沈みかけている。もうそんなに時間が経っていたのか…と考えていたら私の手がドルベの手に軽くちょんと当たってしまい、手を退けようとしたらその手を捕まえられてしまった。
「……嫌か?」
私は返事の代わりに彼の手をぎゅっと握り返した。するとドルベはほっと一息ついていた。
「君に怪我がなくてよかった…。」
「ドルベが来てくれたからだよ。もし来てくれなかったら…。」
あのままされるがままになっていたかと考えると身の毛がよだつ思いだ。やめよう、あんな人のことはもう忘れよう。と考えていたらドルべの足が止まって私と目をあわせてくれた。
「……これからは私が君の側にいてもいいか?」
「それって…。」
「…最初はスミレが幸せになるなら…と身を引くつもりだったが…。やはり私は君の隣にいて君を護りたい…その想いを改めて自覚したのだ。」
吸い込まれてしまいそうなぐらい真剣な瞳。だけどドルベは私が拒めばスッと引き下がってくれるだろう。
「私も…ドルベがいい。ドルベじゃなきゃ…嫌なの。」
…と思いつつも私の答えは最初から決まっている。私がはっきり答えるとドルベは穏やかに笑ってくれた。
「…ありがとう。これからは君の恋人、そして騎士として守り抜いていく。」
ドルベは私の前に跪いて、私の手に誓いのキスを落としてくれて、心臓が飛び出すんじゃないかと思うくらいに鼓動が早まった。烏滸がましいかもしれないけれど自分がまるでお姫様になった気分だった。
元彼からは一方的な想いをぶつけられるばかりだったけど、ドルベからはお互いにちゃんと想い会える関係を築けるからきっと大丈夫だろう。
これは後日談だが…元彼はあの時のドルベがよっぽど怖かったのか、私の顔を見るだけで逃げ出すようになったのだった…。
ガチャと屋上の扉を開くと既に男の子が立っていた。扉の開く音に気づいたのかゆっくりとこちらを振り返る。赤いネクタイだから、年下の男の子か。目がクリクリしていて、可愛らしいというのが第一印象だった。男の子は私と目が合うと一目散に近づいて来た。
「よかった!来てくれないかと思いましたよ!」
「…あの、呼び出しは私で合ってる?璃緒と間違えてない?」
「はい!あなたで間違いありません!」
迷いなく力強く答えられたので、間違いではないというのはよく伝わって来た。すると男の子はガシッと私の手を握ってきた。その力が思っていた以上に強くて…私は少し眉間に皺がよった。
「…オレあなたに一目惚れしたんです!どうか付き合ってもらえませんか!?」
まさか、自分が告白されるとは思ってもいなかった。璃緒や小鳥ちゃんを見てて、モテる女の子は大変だなぁと他人事のように考えていた。おっと、そんなことより早く返事をしなければ…。目の前の男の子は悪い人ではなさそうだけど…。
「ごめんね、私あなたとは付き合えないの。あなたのことよく知らないし…。」
…私にはずっと前から好きな人がいる。それを伝えたほうが良かったのかもしれないが、何せそのことを誰にも言っていないためにこの男の子に言うのも憚れた。するとずいっと私に一歩つめよってきて、私は思わず後ずさる。
「だったら!まずはお試しで付き合ってください!」
「お試しって…。」
「1ヶ月まずは付き合ってください!そこから考えてください!」
「いや、でも…。」
「先輩彼氏いないんですよね?だったらお願いします!」
うっ…。嘘でも彼氏がいると言ったほうがよかったのかこれは。彼の言葉は強引で私は首を横に振ることができなかった。ドルベに片思いをしているのに…。結局私はその子に押し切られて付き合うことになってしまったのだ。なんて情けないのだろう。
その翌日、彼氏は一緒にお弁当を食べましょう。と誘って来てくれたが、今日は七皇達とお昼を食べる約束をしていたので、断った。なかなかにしつこかったけど、ずっと前から決まってたことなのと言って納得してもらった。これから1ヶ月はこんな感じなのだろうか…と私はため息をついてしまう。
「……元気がないな。体調でも悪いのか?」
「大丈夫。さっき体育だったから疲れているだけだよ。」
隣に座っていたドルベが心配そうに顔を覗き込んでくれていた。私は気を遣わせまいと明るく答えた。するとベクターがあ、そういえばと話し始めて、私は嫌な予感がした。
「お前彼氏できたんだってな?」
「…っ!!」
ベクターの爆弾発言に賑やかだったみんなが静まり返り、カラン…とドルベがお箸を落とす音がやけに響いた。私は食べていた卵焼きを喉に詰まらせそうになってしまい、むせていた。
「大丈夫か…。」
ドルベが背中を優しく摩ってくれて、何とか落ち着いて来て、私はベクターに反論する。
「な、なんでベクターが知ってるの!」
「お前の彼氏がクラスで言いふらしてたんだよ。告白したらOKしてもらえたって」
あの子、ベクターと同じクラスだったのか…!最悪だ。ということは遊馬くんや小鳥ちゃん達にも絶対に伝わっている。
「いや、あれは…」
「……君に彼氏ができたのか。おめでとう。よかったな。」
ドルベは落としたお箸を拾いながら、少し掠れた声で笑ってくれていた。影を帯びたその笑顔が私の心にズシっと重くのしかかってくる。
「…私は用事があるから退散しよう。彼氏と幸せにな。」
「あっ!ドルベ…。」
「ちょっと!どういうこと?詳しく聞かせなさい!」
「話すまで解放しねぇからな!」
「璃緒…アリト…。えーっと」
ドルベは優しい言葉だったけど、どこか突き放すような響きだった。私はドルベを追いかけようとしたけれど、璃緒やアリト達に根掘り葉掘り聞かれてしまう羽目になり、ドルベを追いかけることはかなわなかった。彼がいなくなってから心のざわつきが止まらなかった。
付き合ってみて1週間、私の彼氏はやたらと一緒にいたがるということがよくわかった。行き帰りは当たり前。お昼も一緒に食べる。学校では授業中以外は私にベッタリだ。私はまるでずっと息のできない水槽の中に閉じ込められているようだった。今日も校門で待ち合わせ…。行きたくはないけど、行かないと後でもっと面倒なことになる…。私は重い足取りで歩いているとポンっと肩を叩かれた。振り返るとドルベが立っていたのだ。ドルベとはあのお昼の時以来まともな話せていなかったので、胸が少しときめいてしまった。
「…ドルベ!」
「今から帰りか?スミレさえよければ途中まで帰らないか?」
「あっ…。」
嬉しすぎるドルベからのお誘い…。だけど今日はもう既に彼氏が校門でスタンバイしている。三人で帰るなんて了承してくれるわけもないし…。
「ごめんなさい…。彼氏が…。」
「…やはりそうか。スミレの事情も考慮せず誘ってしまってすまない。」
「ドルベは何も悪くないよ。」
「ではせめてこれだけ…手を出してくれるか?」
ドルベに言われて素直に両手を出すと、ラッピングされたクッキーが私の手の上にそっと置かれた。
「これ、どうしたの?」
「家庭科で作ったのだが、少し余ったのでな。君は甘いものが好きだろう?」
「うん!大好き!本当にもらっていいの?」
「あぁ。…よかった。」
クッキーを受け取った私を見て、ドルベは安堵の表情を浮かべていた。
「どうしたの?」
「いや、スミレがここ最近笑っていないように見えたから…久々に笑ってくれたなと。」
「そ、そんなことないよ?」
「…そうは言うものの、君はすぐに無理をする。何があっても私は君の味方だ。なんでもすぐに相談してくれ。」
そう言ってドルベは私の横を通り過ぎていった。…どうして私が付き合ってるのはドルベじゃないんだろう…。ドルベだったらこんな想いはしなかったのかな。私はドルベの後ろ姿が見えなくなるまで見送った後に校門に行ったら彼氏に遅かったですね?何かあったんですか?と言われてしまい、教室に忘れ物しただけだよ?と言ったら次は教室まで迎えに行きますね!と屈託のない笑顔で言われてしまった。
付き合って2週間がたった。彼氏と付き合ってからと一週間がやたらと長く感じる。私はきっと彼のことを好きになることはない。ならばこの関係を早急に終わらせるべきなのに…。頭ではわかっているが、あの人に言ったところで理解してくれないだろうという気持ちが強くて、私は言い出すことができなかった。…大丈夫。私は耐えるのは慣れてる。
今日も1日が終わって帰ろうとした時に、立ち上がった時にめまいがしてすぐに座ってしまった。あぁ、早く行かないと、また連絡が来て、迎えに来られてしまう。しんどさを堪えて私は立ち上がった。
フラフラとした足取りで教室から出ると、彼氏が教室の目の前で待ち構えていた。
「心配になって来ちゃいました!ほら帰りましょう!」
今の私にはその声が脳に直接ガンガンと響いて…それどころではなく、とにかく早く帰りたい一心だった。彼氏が私に手を差し出してくれたが、その手を取ることもなく私はフラフラと歩き始める。
「先輩!待ってくださいよ!」
あぁ、うるさい…。さっさと早く歩いて置いて帰りたい…。だけど、体調的にそれはできない。私はズンズンそのまま歩いていると足が縺れてこけてしまいそうになる。私は痛みに備えて目を瞑ったが、いつまで経っても痛みが来ない。恐る恐る目を開けると私はドルベの胸に収まっていたのだ。
「…やはり無理をしていたんだな。」
「…ドルべ。」
抱き止められた私を見て彼氏がドルベへと詰め寄っているのが見えた。
「あなた一体なんなんですか?先輩の彼氏は僕なんですけど?」
「彼氏…か。笑わせるな。彼氏なら彼女の体調のことも常に気にかけておくものだ。」
ドルベの顔を見た途端、安心してしまったのだろうか。私は意識を飛ばしてしまい、そのまま彼に体を預けてしまった。これ以降のことは覚えておらず気づいたら自宅のベッドで寝かされており、銀髪の端正な顔立ちの眼鏡の男の子が送ってくれたのだということを両親から聞いたのだった。
私が寝込んでしまい学校も数日休んでしまった。ドルベからと彼氏からメッセージが来ていたが、ドルベは文面からもこちらを気遣ってくれているのがわかる文章で胸がほっこりしたけれど、彼氏からは「なんで体調が悪いことを隠してたんですか?!」というズレたメッセージが延々と来ていたのでもう返信しなかった。明日は学校に行く。カレンダーを見たらようやく3週間…。
私は明日から学校に行くというメッセージをドルベにだけ送っておいたのだった。
彼氏のいない登校はものすごく気が楽だった。言わなきゃ今日から学校に来てることバレないかなぁと思ったんだけど、どこからか聞きつけたのか、お昼休みにやって来た。
「先輩!元気になられたんですね!よかったぁ!」
「おかげさまでね…。」
正直君のせいだけど…という言葉が喉から出かけたが、ぐっと抑えた。
「ねね、今日から一緒に帰りましょうよ!」
「そうだね…。じゃあちょっと話したいことあるから。放課後時間あるかな?」
「はい!喜んで。」
…一緒に帰る気なんてもうない。私の真意に気づかない彼氏は目をキラキラと輝かせていた。
放課後、空き教室で彼氏を待つ。待っている間に私は何度も深呼吸を繰り返していた。よし、大丈夫。デッキも持って来たし最悪デュエルに持ち込めれば…。と考えていたら教室のドアが開いて彼氏が入って来た。
「先輩、どうしたんですか?」
「…単刀直入に言うね。……私と別れて。」
拳をぎゅっと握りながら、少し声は震えたけれど、何とか伝えることができて少しホッとした。だが彼氏はキョトンしている。
「まだ、1ヶ月経ってないですよね。どうしてそんなことを言うんですか?」
「…付き合ってみてわかった。私はやっぱりあなたのことは好きになれないと思ったから。」
「あの眼鏡の先輩に何か言われたんですね…?」
彼氏はジリジリと私の元へと近づいてくる。私も距離を取るべく後ろへと下がっていく。
「…ドルベは関係ない。私がそう思ったからだよ。」
「あーあ。ちゃんと好きになってもらおうと思ったのになぁ。」
彼氏の目から光が失われている。そして私の背中が壁に当たった。もう後ろには逃げられない。目の前には彼氏。横に逃げようとした私を逃げ道を彼は足で塞ぐ。
「もういいや。手を出して先輩を自分のものにしちゃえばいいですよね。…そうすればもう逃げられませんよね?」
不気味に笑いながら顎をぐいっと掴まれて、徐々に彼の顔が近づいてくる。恐怖で体が固まってしまい、涙が頬を伝った瞬間に乱暴にドアが開かれた。
「やめろ!!!それ以上スミレに触れるな!!!」
突然のドルベの震えた怒声が教室中に響き渡った。それに彼氏が驚き隙を見せた。私はその隙を見逃さずにドルベの元へと飛び込んで行った。ドルベは鋭い目つきで彼氏を睨んでいる。
「ドルベ…!!どうしてここが…。」
「昨日彼氏と話すとメッセージをくれただろう。だから気になって…校舎中を探していた。そうしていたら声が聞こえてきたのでな。」
ドルべは私を背後に隠し、彼氏へと対峙している。その背中はとても大きくて、頼もしかった。
「あんたのせいで!あんたさえいなければ…!!」
ドルベに向かって彼氏が突っかかって来たが、ドルベは冷静に対処し、一撃を喰らわせてそのまま彼氏が倒れた。
「彼女を苦しませることしかできない者には側にいる権利はない。」
倒れる彼にそう吐き捨てたドルベ。か、カッコいい…。私は安心したのか腰が抜けてしまいペタンとその場に座り込んでいた。
「…よく頑張ったな。」
「……ドルベ!!!」
「…もう大丈夫だ。」
ドルベは子供のようにわんわん泣き出した私をよしよしと言った具合に撫でてくれた。ドルベの大きな手はいつも私を落ち着かせてくれるのだ。
私が落ち着いた後、ドルベは彼を担ぎ上げると保健室へと連れていった。(保健室の先生には彼が勝手にこけたことにしておいた)
保健室から出て、並んで歩く私達。窓の外を見ると日が沈みかけている。もうそんなに時間が経っていたのか…と考えていたら私の手がドルベの手に軽くちょんと当たってしまい、手を退けようとしたらその手を捕まえられてしまった。
「……嫌か?」
私は返事の代わりに彼の手をぎゅっと握り返した。するとドルベはほっと一息ついていた。
「君に怪我がなくてよかった…。」
「ドルベが来てくれたからだよ。もし来てくれなかったら…。」
あのままされるがままになっていたかと考えると身の毛がよだつ思いだ。やめよう、あんな人のことはもう忘れよう。と考えていたらドルべの足が止まって私と目をあわせてくれた。
「……これからは私が君の側にいてもいいか?」
「それって…。」
「…最初はスミレが幸せになるなら…と身を引くつもりだったが…。やはり私は君の隣にいて君を護りたい…その想いを改めて自覚したのだ。」
吸い込まれてしまいそうなぐらい真剣な瞳。だけどドルベは私が拒めばスッと引き下がってくれるだろう。
「私も…ドルベがいい。ドルベじゃなきゃ…嫌なの。」
…と思いつつも私の答えは最初から決まっている。私がはっきり答えるとドルベは穏やかに笑ってくれた。
「…ありがとう。これからは君の恋人、そして騎士として守り抜いていく。」
ドルベは私の前に跪いて、私の手に誓いのキスを落としてくれて、心臓が飛び出すんじゃないかと思うくらいに鼓動が早まった。烏滸がましいかもしれないけれど自分がまるでお姫様になった気分だった。
元彼からは一方的な想いをぶつけられるばかりだったけど、ドルベからはお互いにちゃんと想い会える関係を築けるからきっと大丈夫だろう。
これは後日談だが…元彼はあの時のドルベがよっぽど怖かったのか、私の顔を見るだけで逃げ出すようになったのだった…。