VRAINS短編
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廊下でたまたますれ違った男の子。懐かしいものを感じた気がして思わず振り返ってしまった。
去って行こうとするあの後ろ姿…。昔遊んでいた男の子の面影がある。あれからかなりの年月が流れている。だから別人の可能性もあるけど…私は記憶の中にあった彼の名前を呼んだ。一瞬ピタッと立ち止まったように見えたけど、そのまま先ほどよりスピードを上げて立ち去っていく。私は走って追いかけて、腕を掴んでしまった。
「…何だ?」
「あ、あのえっと…」
掴んだはいいものの、私は何も考えていなかった。彼は私の手を鬱陶しそうに振り払う。
「…オレは藤木遊作。人違いだ。」
藤木くん…わたしが知っている名前と違う…。彼は私を置いて振り返ることもなくいなくなってしまった。
藤木遊作くん…。彼は本当に私の記憶の中にある彼と別人なのだろうか…。私にはそうは思えない。そのためにも彼のことを知る必要がある…。だけどどこのクラスかさえもわからない…。幼かった頃の彼との日々を思い出す。彼はデュエルが好きでカードの効果を教えてもらってたっけ…。だから私もデュエル部に入ったんだけど…。
財前さんがデュエル部の部室に入ってきたあと、教室の外から話し声が聞こえてくる。部長が注意しにいくと、島くんともう1人の男の子が入ってきた。
「藤木遊作です。一年です。よろしくお願いします。」
なんてこった。こんなに早く再会するとは…。ちょっと気まずいな…と思いつつも、みんなに倣って私も苗字と学年だけの簡単な挨拶をする。
財前さんが藤木くんにデッキを見せてと頼んでいたのでこっそり後ろから覗いてみる…。こ、これは…。なんていうか…。その辺にあったカードをテキトーに詰め込みました!というテーマやシナジーも何も考えてなさそうなデッキだった。
藤木くんを加えたデュエル部のミーティング後、先輩とデュエルをしていた私。藤木くん…知れば知るほど謎が深まる…私が気にしすぎなのかもしれないけど…。考えながら私はリンクモンスターを召喚しようとしたが、デュエルを見ていた部長からストップが入った。
「…リンクマーカー先が空いてないから、リンクモンスターを召喚できないな。」
「えっ、あっ…!」
連続展開しようと思っていたのに、召喚する場所を間違えた!私が慌てていると盤面を見た藤木くんが冷静に一言。
「……この程度の実力なら、デュエルはやめたほうがいい。」
…確かに私は大ポカをやらかした。でも、そこまで言わなくても…!と憤りを感じていると部長が藤木くんを嗜めていたので少しだけ溜飲が下がった。…というか変なデッキ使ってる人に言われたくない!!と心の中で反論するのだった。
藤木遊作くん…。デュエル部でのやり取りを思い出すと昔のあの彼とは別人なのではという気持ちが強くなってきた。彼はカードにも詳しかったからあんなにしっちゃかめっちゃかなデッキなんて使うわけないだろうし…そして何より優しかった。…でも突然いなくなった。デュエルの続きを教えてね!と約束したのに…。昔のことも藤木くんのことも忘れたほうがいいのかもしれないと思い返していた時だった。
「ユリ!!」
後ろから大声で私の名前を呼ぶ声がした。振り返るとそこに立っていたのは藤木くんだった。
「…あの、何か?」
藤木くんが前を指差す。前を見ると信号が赤だった。
「…オレが止めなければアンタは車に轢かれていた。」
「……。」
ここはお礼を言うべきなのだろう。だけどデュエル中の辛辣な言葉が思い起こされて素直にありがとうと言うことができない。
「…さっきのデュエルもそうだが、アンタはもう少し周りを見るべきだ。…ほら、信号が変わったぞ。」
…それだけ素っ気なく私に伝えると来た方向を戻っていった。…わざわざ私を止めるためだけにこっちに来たの…?藤木くんが何を考えているのかよくわからない…。信号を渡りながら私はあることに気づいた。藤木くんはさっき私の苗字じゃなくて名前で呼んでいた…。私は自己紹介の時に苗字しか言ってない…。何で知ってたんだろう…。彼に聞きに行こうと横断歩道を再度渡ろうとしたら、信号は赤に戻っていた。藤木くんの姿もすっかり見えなくなっていたため今日のところは諦めるしかなかった…。
「お前さー、あの子のこと結局どう思ってんの?」
「……どうも思ってない。」
「デュエルをやめたほうがいいとか言ったりする割に気にかけてるだろ?オレの目は誤魔化せねぇぜ!」
遊作はAiが入っているデュエルディスクを睨みつけるが、Aiがそんなことで黙るわけもなく。ボイスをオフにしようとした遊作だが、今オフにしたところで後ほどしつこく聞いてくるだろう。…その様子を想像しうんざりした遊作は渋々話し始めた。
「…オレが抱いている思いは3つ。1つ、オレは彼女の幼馴染ではないと確信させること。2つ、なるべく彼女とは関わりを持たないこと。…3つ、彼女を泣かせないこと。」
「いや、めちゃくちゃ気にしてんじゃねぇか!何で嫌われようとしてんだよ?」
「それは……。」
デュエルディスクで含みのある笑みを浮かべるAi。楽しんでいるAiとは裏腹に遊作が重い口を開く。
「…オレと関われば彼女がハノイの騎士に狙われる可能性がある。もし彼女がオレの弱点だと気づかれて利用されてしまったら…。…そうなった場合、オレは彼女を見捨てることはできない。」
Aiからは笑顔が消えた。遊作の険しい表情が思いの強さを物語っていたからだ。遊作の脳裏にはある光景が浮かび上がっていた。
「…あ、もう時間だな。」
「…でもまだデュエル途中なのに…。」
「…明日また教えにくるから。」
「…わかった!約束だよ!デュエルの続き教えてね!私楽しみに待ってるからね!」
ロスト事件の最中、強制されたデュエルに苦しみながらも、あの約束だけは何度も思い返していた。そのためなのか、事件以前の記憶が曖昧になった今でも、彼女との約束だけは忘れることがなかった。
そんな遊作を見てAiは揶揄うことはやめ、至って真剣なトーンで彼に問いかける。
「…じゃあもし、あの子に彼氏ができたらどうすんだよ?お前は素直に祝福できんのか?」
「…彼女が幸せならそれでいい。」
「…そうかよ。じゃあオレから一つだけアドバイスをしてやる。…今度あの子の話をする時は鏡を見ながら喋ることをオススメするぜ。」
「…訳のわからないことを言うな。」
遊作はようやくボイスをオフにした。これでAiの声は聞こえてこない。普段と変わらない帰り道。そのはずなのに Aiの声が聞こえないからか、それとも太陽が落ちて暗くなり始めたからか…。いつもより寂しい帰り道を歩く遊作だった。
去って行こうとするあの後ろ姿…。昔遊んでいた男の子の面影がある。あれからかなりの年月が流れている。だから別人の可能性もあるけど…私は記憶の中にあった彼の名前を呼んだ。一瞬ピタッと立ち止まったように見えたけど、そのまま先ほどよりスピードを上げて立ち去っていく。私は走って追いかけて、腕を掴んでしまった。
「…何だ?」
「あ、あのえっと…」
掴んだはいいものの、私は何も考えていなかった。彼は私の手を鬱陶しそうに振り払う。
「…オレは藤木遊作。人違いだ。」
藤木くん…わたしが知っている名前と違う…。彼は私を置いて振り返ることもなくいなくなってしまった。
藤木遊作くん…。彼は本当に私の記憶の中にある彼と別人なのだろうか…。私にはそうは思えない。そのためにも彼のことを知る必要がある…。だけどどこのクラスかさえもわからない…。幼かった頃の彼との日々を思い出す。彼はデュエルが好きでカードの効果を教えてもらってたっけ…。だから私もデュエル部に入ったんだけど…。
財前さんがデュエル部の部室に入ってきたあと、教室の外から話し声が聞こえてくる。部長が注意しにいくと、島くんともう1人の男の子が入ってきた。
「藤木遊作です。一年です。よろしくお願いします。」
なんてこった。こんなに早く再会するとは…。ちょっと気まずいな…と思いつつも、みんなに倣って私も苗字と学年だけの簡単な挨拶をする。
財前さんが藤木くんにデッキを見せてと頼んでいたのでこっそり後ろから覗いてみる…。こ、これは…。なんていうか…。その辺にあったカードをテキトーに詰め込みました!というテーマやシナジーも何も考えてなさそうなデッキだった。
藤木くんを加えたデュエル部のミーティング後、先輩とデュエルをしていた私。藤木くん…知れば知るほど謎が深まる…私が気にしすぎなのかもしれないけど…。考えながら私はリンクモンスターを召喚しようとしたが、デュエルを見ていた部長からストップが入った。
「…リンクマーカー先が空いてないから、リンクモンスターを召喚できないな。」
「えっ、あっ…!」
連続展開しようと思っていたのに、召喚する場所を間違えた!私が慌てていると盤面を見た藤木くんが冷静に一言。
「……この程度の実力なら、デュエルはやめたほうがいい。」
…確かに私は大ポカをやらかした。でも、そこまで言わなくても…!と憤りを感じていると部長が藤木くんを嗜めていたので少しだけ溜飲が下がった。…というか変なデッキ使ってる人に言われたくない!!と心の中で反論するのだった。
藤木遊作くん…。デュエル部でのやり取りを思い出すと昔のあの彼とは別人なのではという気持ちが強くなってきた。彼はカードにも詳しかったからあんなにしっちゃかめっちゃかなデッキなんて使うわけないだろうし…そして何より優しかった。…でも突然いなくなった。デュエルの続きを教えてね!と約束したのに…。昔のことも藤木くんのことも忘れたほうがいいのかもしれないと思い返していた時だった。
「ユリ!!」
後ろから大声で私の名前を呼ぶ声がした。振り返るとそこに立っていたのは藤木くんだった。
「…あの、何か?」
藤木くんが前を指差す。前を見ると信号が赤だった。
「…オレが止めなければアンタは車に轢かれていた。」
「……。」
ここはお礼を言うべきなのだろう。だけどデュエル中の辛辣な言葉が思い起こされて素直にありがとうと言うことができない。
「…さっきのデュエルもそうだが、アンタはもう少し周りを見るべきだ。…ほら、信号が変わったぞ。」
…それだけ素っ気なく私に伝えると来た方向を戻っていった。…わざわざ私を止めるためだけにこっちに来たの…?藤木くんが何を考えているのかよくわからない…。信号を渡りながら私はあることに気づいた。藤木くんはさっき私の苗字じゃなくて名前で呼んでいた…。私は自己紹介の時に苗字しか言ってない…。何で知ってたんだろう…。彼に聞きに行こうと横断歩道を再度渡ろうとしたら、信号は赤に戻っていた。藤木くんの姿もすっかり見えなくなっていたため今日のところは諦めるしかなかった…。
「お前さー、あの子のこと結局どう思ってんの?」
「……どうも思ってない。」
「デュエルをやめたほうがいいとか言ったりする割に気にかけてるだろ?オレの目は誤魔化せねぇぜ!」
遊作はAiが入っているデュエルディスクを睨みつけるが、Aiがそんなことで黙るわけもなく。ボイスをオフにしようとした遊作だが、今オフにしたところで後ほどしつこく聞いてくるだろう。…その様子を想像しうんざりした遊作は渋々話し始めた。
「…オレが抱いている思いは3つ。1つ、オレは彼女の幼馴染ではないと確信させること。2つ、なるべく彼女とは関わりを持たないこと。…3つ、彼女を泣かせないこと。」
「いや、めちゃくちゃ気にしてんじゃねぇか!何で嫌われようとしてんだよ?」
「それは……。」
デュエルディスクで含みのある笑みを浮かべるAi。楽しんでいるAiとは裏腹に遊作が重い口を開く。
「…オレと関われば彼女がハノイの騎士に狙われる可能性がある。もし彼女がオレの弱点だと気づかれて利用されてしまったら…。…そうなった場合、オレは彼女を見捨てることはできない。」
Aiからは笑顔が消えた。遊作の険しい表情が思いの強さを物語っていたからだ。遊作の脳裏にはある光景が浮かび上がっていた。
「…あ、もう時間だな。」
「…でもまだデュエル途中なのに…。」
「…明日また教えにくるから。」
「…わかった!約束だよ!デュエルの続き教えてね!私楽しみに待ってるからね!」
ロスト事件の最中、強制されたデュエルに苦しみながらも、あの約束だけは何度も思い返していた。そのためなのか、事件以前の記憶が曖昧になった今でも、彼女との約束だけは忘れることがなかった。
そんな遊作を見てAiは揶揄うことはやめ、至って真剣なトーンで彼に問いかける。
「…じゃあもし、あの子に彼氏ができたらどうすんだよ?お前は素直に祝福できんのか?」
「…彼女が幸せならそれでいい。」
「…そうかよ。じゃあオレから一つだけアドバイスをしてやる。…今度あの子の話をする時は鏡を見ながら喋ることをオススメするぜ。」
「…訳のわからないことを言うな。」
遊作はようやくボイスをオフにした。これでAiの声は聞こえてこない。普段と変わらない帰り道。そのはずなのに Aiの声が聞こえないからか、それとも太陽が落ちて暗くなり始めたからか…。いつもより寂しい帰り道を歩く遊作だった。
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