捧げ物
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小鳥ちゃんに手伝ってもらいながら、浴衣の裾に腕を通し帯も巻いてもらう。去年小鳥ちゃんや遊馬くん、鉄男くんと行ったお祭りで浴衣を着ている女の子を見て可愛いなと思っていたけど…まさか自分でも着ることになるとは…。浴衣を着て鏡に映る自分は不思議と背筋が伸びている気がした。
…なぜわたしが浴衣を着ることになったのか。遡ること約1週間前…。学校の掲示板に目を引くポスターがあるなぁ…と気になって見てみたら夏祭りのポスターだった。
そうかもうそんな時期か…。夏休みも始まるもんね…とぼんやり眺めていたら肩を叩かれた。
「…何か気になるものでもあったか?」
「わわぁぁ!!ど、ドルベ…!」
「…すまない。驚かせるつもりはなかったのだが…。」
普段ならここまで反応しないが、話しかけてきたのが好きな人であれば話は別だ。心臓が口から出そうになったのを何とか抑えた。
「随分と熱心に見ていたな。これは…祭りか。」
「う、うん。楽しそうだな…って。」
「…そういえば私は祭りという行事には参加したことがないな。」
「そっか。そうだよね。じ、じゃあ行ってみる?み、みんなで…。」
ここで二人で行こう!と言えないのが悲しいところ。みんなでって言っておけば断れた時のダメージも少ないよね…と思いながらドルベの言葉を待つ。
「…せっかくなら二人で行かないか?」
「えっ!」
「嫌だったか…?」
「…嫌じゃない!」
大きめの声で思わず食い気味に被せてしまった…。ドルベは引くこともなく、なら是非行こう。と優しい笑顔で言ってくれたのだ。
なので小鳥ちゃんに相談したらそれは絶対浴衣を着るべきよ!!と強く説得されて。今手伝ってもらっているわけである。浴衣を着付けてもらい髪型も浴衣に合うように軽く巻いてもらった。
「よし!これでオッケー!ナマエさん、すごく似合ってるわ!」
「ありがとう、小鳥ちゃん。」
小鳥ちゃんに見送られて家を出る。待ち合わせよりも少し早めに出て歩いていると、わたしの他にもお祭りに行くのか浴衣を着ている人をちらほら見かける。みんなおしゃれだな…。わたし浮いてないかな…大丈夫かな…と周りを見ながら少し不安になりながら待ち合わせ場所に行くとドルベはすでに到着していた。
声をかけるとドルベがこちらを振り向いてくれた。その視線がわたしを捉えた瞬間、ドルベの動きがぴたりと止まる。彼は一瞬だけど目を見開いていて、沈黙していた。
「…浴衣着てみたんだけど…や、やっぱり変…かな?」
「いや…いつもと違う雰囲気だったので…。少し言葉を失ってしまった。」
「ほ、本当に…?」
「…あぁ、月並みな言葉で申し訳ないが…とても綺麗だ。」
「…ありがとう。」
ドルベの頬がほんのり赤くなっていて、それを見ているとわたしまで伝播して熱くなって…。まだお祭りはこれからなのに…。大丈夫かな…。そう考えるわたしの前にスッと手が差し出された。わたしは戸惑ってドルベの手を見つめている。
「…はぐれたら困る。」
視線を逸らして咳払いしながら話すドルベ。わたしはうん…と頷いてからそっと手を重ねた。
手を繋ぎながらお祭りを回ってみる。焼きそばに焼きとうもろこし、りんご飴などの食べ物のお店。スーパーボール掬いや射的。どこを見ても賑わっていて楽しそうだ。
「君は何か食べたいものはあるか?」
「えっと…じゃあ…たこ焼き…あ、でもクレープも美味しそう…。」
「…ゆっくり悩むといい。時間はまだまだあるからな。」
結局決め切れなかったわたしはたこ焼きとクレープを両方買って、ドルベとシェアすることになった。
「いいの?食べたいものあったんじゃないの?」
「…いや、私も色々あって悩んでいたんだ。それに2人で分け合えば2つ味わえるからな。」
「それもそうだね。」
わたしはたこ焼きを少しふーと冷ましてから口へと運ぶ。外はカリッと中はトロッとした食感が口の中に広がる。
「ナマエ、顔にソースがついてる。」
「えっ、どこ?」
「…逆だ。少しじっとしてくれ。」
ドルベの顔が少し近づいてわたしの頬に触れる。指先で軽く拭われて、よし、取れた。と目を細めながら言うドルベ。は、恥ずかしい…と思ってドルベから目を逸らそうとしたけど、ドルベの頬にもクリームが付いていることに気づいた。
「ドルベ、ちょっとだけ止まって。」
「…どうした?」
不思議そうにしているドルベ。わたしは背伸びしてドルベの頬に触れてクリームを拭う。…ドルベは一瞬だけど動きが固まっていた。
「ドルベも付いてたよ。」
「そういうことか…。」
「…さっきのお返し。」
わたし達はお互いの顔を見合わせてふふっと笑みが溢れてしまうのだった。
次はどこに行こうか…と歩きながら話していると足先にズキっとした痛みを感じて恐る恐る下を向くと…慣れない下駄を履いてきたせいで靴擦れを起こしていた。しかし今はとてもいい雰囲気…。足が痛いなんて言い出せない。痛みを我慢して足を進めていた時だった。
「…少し歩き方が変ではないか?」
「…そ、そんなことないよ?」
「いや、先ほどから歩幅が狭くなっている…。そこに座ろう。足を見せてくれ。」
わたしに足を隠す手段はない。ドルベに連れられて近くにあったベンチに座らされて、ドルベがわたしの足に触れる。
「…靴擦れを起こしているな。」
「…で、でも大したことないから。少し休憩すれば…。」
「ダメだ。放置しては悪化する。だから処置をさせてもらう。」
ドルベは鞄から絆創膏を取り出して、包装紙から剥がしていく。
「なんで絆創膏持ってるの…?」
「…璃緒に備えあれば憂いなしですわよ。女性はオシャレをする時は無理しがちですからね。と言われてな。持たされていたんだ。実際にその通りになったな。」
ほら私の言った通りでしょ?としたり顔で笑う璃緒が想像できた。…後でちゃんとお礼のメールを送っておこう。
ドルベは慎重かつ、壊れ物を扱うかのように丁寧な手つきでわたしの両足に絆創膏を貼っていく。…両足とも絆創膏だらけのカッコ悪い足になってしまったな…。でもドルベに貼ってもらえたのはいい思い出かも…と感傷に浸っているとドルベが隣に座る。
「…迷惑かけちゃってごめんね。」
「いや、こちらこそ君の状態にすぐに気づかなくてすまない。私が早く気づくべきだった。」
「…そんなこと。」
「君は無理をしがちだからな…。我慢せずすぐに言ってもらえたら助かる。」
「わかった…。」
ドルベはすぐに責任を感じてしまう人だ。だからわたしも気をつけようと密かに思い直していた時、
ドーーン!!と派手な音が響いて夜空に綺麗な花火が上がっていた。
「あ!花火だよ!ドルベ!」
「…これが花火か。」
ドルベが感慨深い表情で夜空を見上げている。そうか…お祭りも初めてってことは花火もきっと初めてだよね。
「…綺麗だな。」
「だよね。この時期しか見れないのが勿体無いくらい。」
「…初めて見る花火がナマエとでよかった。また来年も一緒に行かないか?」
「…気が早いよ。」
「…誰よりも早く先約を取っておきたいんだ。」
来年も当たり前のように一緒にいる未来を考えてくれているドルベ。そのことがたまらなく嬉しい。勇気を出して誘ってよかった…。と思いながらドルベの小指にそっと自分の指を絡めるのだった。
…なぜわたしが浴衣を着ることになったのか。遡ること約1週間前…。学校の掲示板に目を引くポスターがあるなぁ…と気になって見てみたら夏祭りのポスターだった。
そうかもうそんな時期か…。夏休みも始まるもんね…とぼんやり眺めていたら肩を叩かれた。
「…何か気になるものでもあったか?」
「わわぁぁ!!ど、ドルベ…!」
「…すまない。驚かせるつもりはなかったのだが…。」
普段ならここまで反応しないが、話しかけてきたのが好きな人であれば話は別だ。心臓が口から出そうになったのを何とか抑えた。
「随分と熱心に見ていたな。これは…祭りか。」
「う、うん。楽しそうだな…って。」
「…そういえば私は祭りという行事には参加したことがないな。」
「そっか。そうだよね。じ、じゃあ行ってみる?み、みんなで…。」
ここで二人で行こう!と言えないのが悲しいところ。みんなでって言っておけば断れた時のダメージも少ないよね…と思いながらドルベの言葉を待つ。
「…せっかくなら二人で行かないか?」
「えっ!」
「嫌だったか…?」
「…嫌じゃない!」
大きめの声で思わず食い気味に被せてしまった…。ドルベは引くこともなく、なら是非行こう。と優しい笑顔で言ってくれたのだ。
なので小鳥ちゃんに相談したらそれは絶対浴衣を着るべきよ!!と強く説得されて。今手伝ってもらっているわけである。浴衣を着付けてもらい髪型も浴衣に合うように軽く巻いてもらった。
「よし!これでオッケー!ナマエさん、すごく似合ってるわ!」
「ありがとう、小鳥ちゃん。」
小鳥ちゃんに見送られて家を出る。待ち合わせよりも少し早めに出て歩いていると、わたしの他にもお祭りに行くのか浴衣を着ている人をちらほら見かける。みんなおしゃれだな…。わたし浮いてないかな…大丈夫かな…と周りを見ながら少し不安になりながら待ち合わせ場所に行くとドルベはすでに到着していた。
声をかけるとドルベがこちらを振り向いてくれた。その視線がわたしを捉えた瞬間、ドルベの動きがぴたりと止まる。彼は一瞬だけど目を見開いていて、沈黙していた。
「…浴衣着てみたんだけど…や、やっぱり変…かな?」
「いや…いつもと違う雰囲気だったので…。少し言葉を失ってしまった。」
「ほ、本当に…?」
「…あぁ、月並みな言葉で申し訳ないが…とても綺麗だ。」
「…ありがとう。」
ドルベの頬がほんのり赤くなっていて、それを見ているとわたしまで伝播して熱くなって…。まだお祭りはこれからなのに…。大丈夫かな…。そう考えるわたしの前にスッと手が差し出された。わたしは戸惑ってドルベの手を見つめている。
「…はぐれたら困る。」
視線を逸らして咳払いしながら話すドルベ。わたしはうん…と頷いてからそっと手を重ねた。
手を繋ぎながらお祭りを回ってみる。焼きそばに焼きとうもろこし、りんご飴などの食べ物のお店。スーパーボール掬いや射的。どこを見ても賑わっていて楽しそうだ。
「君は何か食べたいものはあるか?」
「えっと…じゃあ…たこ焼き…あ、でもクレープも美味しそう…。」
「…ゆっくり悩むといい。時間はまだまだあるからな。」
結局決め切れなかったわたしはたこ焼きとクレープを両方買って、ドルベとシェアすることになった。
「いいの?食べたいものあったんじゃないの?」
「…いや、私も色々あって悩んでいたんだ。それに2人で分け合えば2つ味わえるからな。」
「それもそうだね。」
わたしはたこ焼きを少しふーと冷ましてから口へと運ぶ。外はカリッと中はトロッとした食感が口の中に広がる。
「ナマエ、顔にソースがついてる。」
「えっ、どこ?」
「…逆だ。少しじっとしてくれ。」
ドルベの顔が少し近づいてわたしの頬に触れる。指先で軽く拭われて、よし、取れた。と目を細めながら言うドルベ。は、恥ずかしい…と思ってドルベから目を逸らそうとしたけど、ドルベの頬にもクリームが付いていることに気づいた。
「ドルベ、ちょっとだけ止まって。」
「…どうした?」
不思議そうにしているドルベ。わたしは背伸びしてドルベの頬に触れてクリームを拭う。…ドルベは一瞬だけど動きが固まっていた。
「ドルベも付いてたよ。」
「そういうことか…。」
「…さっきのお返し。」
わたし達はお互いの顔を見合わせてふふっと笑みが溢れてしまうのだった。
次はどこに行こうか…と歩きながら話していると足先にズキっとした痛みを感じて恐る恐る下を向くと…慣れない下駄を履いてきたせいで靴擦れを起こしていた。しかし今はとてもいい雰囲気…。足が痛いなんて言い出せない。痛みを我慢して足を進めていた時だった。
「…少し歩き方が変ではないか?」
「…そ、そんなことないよ?」
「いや、先ほどから歩幅が狭くなっている…。そこに座ろう。足を見せてくれ。」
わたしに足を隠す手段はない。ドルベに連れられて近くにあったベンチに座らされて、ドルベがわたしの足に触れる。
「…靴擦れを起こしているな。」
「…で、でも大したことないから。少し休憩すれば…。」
「ダメだ。放置しては悪化する。だから処置をさせてもらう。」
ドルベは鞄から絆創膏を取り出して、包装紙から剥がしていく。
「なんで絆創膏持ってるの…?」
「…璃緒に備えあれば憂いなしですわよ。女性はオシャレをする時は無理しがちですからね。と言われてな。持たされていたんだ。実際にその通りになったな。」
ほら私の言った通りでしょ?としたり顔で笑う璃緒が想像できた。…後でちゃんとお礼のメールを送っておこう。
ドルベは慎重かつ、壊れ物を扱うかのように丁寧な手つきでわたしの両足に絆創膏を貼っていく。…両足とも絆創膏だらけのカッコ悪い足になってしまったな…。でもドルベに貼ってもらえたのはいい思い出かも…と感傷に浸っているとドルベが隣に座る。
「…迷惑かけちゃってごめんね。」
「いや、こちらこそ君の状態にすぐに気づかなくてすまない。私が早く気づくべきだった。」
「…そんなこと。」
「君は無理をしがちだからな…。我慢せずすぐに言ってもらえたら助かる。」
「わかった…。」
ドルベはすぐに責任を感じてしまう人だ。だからわたしも気をつけようと密かに思い直していた時、
ドーーン!!と派手な音が響いて夜空に綺麗な花火が上がっていた。
「あ!花火だよ!ドルベ!」
「…これが花火か。」
ドルベが感慨深い表情で夜空を見上げている。そうか…お祭りも初めてってことは花火もきっと初めてだよね。
「…綺麗だな。」
「だよね。この時期しか見れないのが勿体無いくらい。」
「…初めて見る花火がナマエとでよかった。また来年も一緒に行かないか?」
「…気が早いよ。」
「…誰よりも早く先約を取っておきたいんだ。」
来年も当たり前のように一緒にいる未来を考えてくれているドルベ。そのことがたまらなく嬉しい。勇気を出して誘ってよかった…。と思いながらドルベの小指にそっと自分の指を絡めるのだった。
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