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5.好きだからだけど?

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体はネコでも強大な魔力を持っていた憤怒のベレトは、自力で抜け出すことの出来ない異世界にひどく腹をたて、自らを呪いました。

そんな中、一人の女の子に拾われたのです。
最初はその魔力を使って女の子を絶望させ、殺して、魂を奪おうとしました。
まずは親兄弟、友人と襲うべく動きます。

でも、彼女は生まれた時から天涯孤独の身でした。

ただの気まぐれか、滅多に思わないのですが少しだけあわれに感じたベレトは、まるで召喚された時と同じようにして彼女に願いを聞きました。

望みは?

ですが、それをただで叶えることはないかもしれません。

人間は欲深い生き物です。
女の子も何かを望むに決まっている、叶えた瞬間に魂と引き換えにしよう。
そう考えたベレトは彼女の答えに驚きました。

彼女は何も要らないと、そう言ったのです。

願いのない者は今までいなかったので彼女に興味が沸いたベレトは、帰る方法を探しながら女の子と過ごすことにしました。

長い時を重ねた女の子とベレトはいつしか笑顔で笑いあうようになりました。

ベレトは感じたことのない優しく暖かな気持ちがあるのに気がつきました。
悪魔にはない、愛に気づくのです。

美しく育った彼女とずっと一緒にいたい、悪魔としての役目も捨て、ここにいたい、ベレトはそんな気持ちでいっぱいでした。

最初は悪魔でも人間でもなく、ネコとして接していた彼女も、今はベレトと気持ちを同じにしていました。

でも、お互いの気持ちに気がつき想いが繋がった瞬間、元の世界へのゲートが開いたのです。

『お迎えにあがりました』

ゲートからは配下のネコ達が迎えの使者としてやってきます。
でも、ベレトはここにいたいがために迎えの使者に帰るよう言いました。

ですが、もともとは長く女の子の世界に存在を保つのが難しいのが召喚される悪魔のさだめ。

ベレトは魔力によって存在を保ち続けていましたが、いくら強大な魔力を持っていても限界はあったのです。

ここで死んでもいい、彼女と最後のその時まで共にありたいと思っていたベレトでしたが、彼女は弱っていくベレトを見て泣き出しました。

何で泣くんだい?
君には笑っていてほしいのに。

ベレトが何を言っても彼女は泣き止みません。
いつしかそれはベレトの力によって真珠に変わり女の子の生活をずっと豊かにし続けました。

ここだとあなたは生きられない、世界が違っても生きていてほしい、それがわたしの願い。

ベレトは女の子の初めてであり、最後である願いを叶え、自分の世界に帰っていきました。

悪魔であるベレトは涙を流しました。
こうしてベレトは感情や愛する心を得ました。

スパーダが魔界を去り、正義に目覚めるもっと前のお話です。

その後、ベレトは配下のネコに魔力を明け渡して亡くなりましたが、女の子の世界に生を受けました。

今はどちらも幾度となく転生と出会いを繰り返して幸せに暮らしています。

永遠に。



***



ネロは絵本の内容を覚えている限り詳しくバージルに話した。

「これが絵本の内容だ、似てる……よな?」
「ふむ、似ているかもしれん」

顎に手をあてるような仕草をしてバージルは同意した。

「女の子と想いが繋がった瞬間、元の世界へのゲートが開く……」

ネロが復唱するようにぼそりと呟いた。

「想いが、繋がる?」
とオレ達の内、誰かがくっつけばこれと同じになるんじゃね?」

キリエが待ってるからオレは却下な、とネロはしれっと言い放ち候補から抜けた。

「……が喜びそうなネタだ」

確かにリアル乙女ゲームktkr!(*゚∀゚*)=3とか言いそうである。

それにしても、とネロが続けた。

「読んだ時はなんだこれ、悪魔が泣くのか?ってなったよ」

しみじみと懐古するように目を虚空へと向ける。

「あの頃はまだ悪魔の腕じゃなかったからかもしれないけど、愛を理解する悪魔なんていないとか考えてた。
けどよく考えたらスパーダもそうだし、悪魔の腕になって……自分が悪魔になってわかったよ、悪魔でも愛を理解するんだって」

キリエを思い出したのか唇を噛んでいる。
早く帰りたいのだろう。

父もネロも、そしてダンテすら愛をキチンと理解しているようだ。
自分はまだよくわかっていない感情、必要ないと捨てた感情……それが愛だ。

ネロやダンテを見ていると本当に必要ない物かどうかわからなくなってくる。
自分には力さえあればその他はどうでもいいはずなのだ。

バージルは沈黙し、考え込んだ。
黙ったまま動かないバージルを見てネロが声を大きくした。

「疑ってんのか?これでもちゃんとした魔術本のコーナーにあったぞ」

バージルはネロに疑ってはいない旨を伝えた。

「それは魔界の絵本だな……dark fairy taleと言って悪の力が宿り、衝撃を与えると発動するはずの物だ。
二代目ベレト、つまりベレトの配下のネコだったやつが描いたものか……」

しかし、ベレトが……?
あの危険極まりないヤツが愛に走ったと言うのか?

あり得ないだろうと疑問に思いながらもネロに問う。

「ネロの世界ではその本はどうなったかわかるか?」

しばらく考え込んでからネロは返した。

「読んだあとは普通に戻したぞ。蔵書室もフォルトゥナの事件で半壊はしてたな……。
その時は残ってたかもしれないけど、最近また崩れてきてるし……本はもう破損したかも」

話してる内に思い出したようだ、ネロは続けた。

「そう言えばこの世界に来る前の日、また派手に倒壊したな……」

埋もれて見つからないかもしれない。
なにせフォルトゥナではかなり五本の指に入る大きさの教団本部が倒壊した上、すごい量の書籍の山が崩れているのだ。
森の中で一枚だけの葉っぱを探しあてるような物である。

必要なら帰ってキリエにも手伝ってもらうしかなさそうだ。

「帰ること自体は今すぐにでもできそうだな」
「ホントか!?」
「ああ、取り敢えずはその本が原因のようだ。
本来ならネロとその時間軸のダンテが来ていてもおかしくなかった。
だが……そうだな。
この場合はの俺達に対する想いが誤作動を起こして巻き込まれた、といったところだろう」
「あー……たまに爆発してる、バージル好き好き成分とかか?」

バージルは頭を抱えながら肯定した。

「ああ、嫌いではないが、あの勢いには肌寒いものを感じる(((´А`;)))ブルッ」

鳥肌を立ておののくバージルを横目に、ネロもしみじみと頷いた。

「ああ、確かに教団にも衆道はいたけど、うん、少しだけ怖いよな……(´-ω-`;)」

ちなみにネロもその対象者だということは知らないことだ。
世の中知らないままでいた方がいいこともある。

バージルは忌まわしい記憶を忘れるかのように頭をふって話を変えた。

「帰ったら探し出して、復元出来るならしろ。
そしてそっちのダンテに渡せ」
「え、やっぱり見つけんのかよ。アンタ、それがどんだけ大変なことだと思ってんだ?」

必要なら、とは思ったが本当に探さなければならないらしい。
ネロは嫌そうに顔をしかめた。

「頼む、俺がダンテにしてやれることはあまりにも少なすぎる……」

バージルが珍しいことに頭を下げた。

「……もっとダンテにもわかりやすく優しさをアピールしろよ、照れ屋めm9(^∀^)ツンツン」

ネロはお互い不器用な兄弟だ、とクスリと笑った。

「つーか、意外と兄貴らしいとこもあるんだな」
「空回りすることもあるがな」

そう言ってため息を吐く。
ネロはそんなバージルに兄の苦悩を垣間見た気がした。

「わかったよ、やっとく。頼まれちゃしゃーねぇ」

ネロは肩をすくめて頷いた。
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