5.好きだからだけど?
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今日の風呂の順番はバージル、ネロ、ダンテの順だ。
面倒ではあるが皆一匹狼タイプなので決して全員で風呂に入ったりはしない。
さわがしい愚弟と一緒に入るのはまっぴら御免だ、そうキッパリ言うのはバージルである。
でもネコの体なため自分では洗うことができないので一番面倒なのは洗ってあげている夢である。
一匹一匹洗ったらすぐ乾かすため、この作業はさらに時間がかかる。
一匹洗ったら乾かして、また次を一匹洗ったら乾かして……面倒なことこの上ないだろう。
バージルは綺麗になった毛並みをふわふわとさせ、指定席で丸くなっていた。
思い浮かぶのは小さく明滅するアミュレットと、呼応するようにやはりこちらも明滅を繰り返すネロのアザのことだ。
今すぐ帰れるかもしれないとは言ったが何かが欠けているのだ。
何が足りない?
どうすれば帰れるのだろうか。
甘い時間は気がラクなのは百も承知だ。
だがこのままでは平和に慣れて力が衰えてしまう。
魔界で生きていくことなど不可能だろう。
自分にはこの緩やかで甘い時間はあわない。場違いだ。
バージルは記憶の底にある魔界の空を瞼の裏に思い出しながら考えた。
それと同時に考えてしまうのはダンテが彼女を見つめる時の愛しげな横顔。
このままではダンテはここに残るとかいいそうだ。
いや、ダンテの事だ、彼女をも連れて帰るなんてのたまうかもしれない。
夢を、一般人を巻き込んでまた危害が出たらどうする?
そこまで考えて気付く。
俺は他人の心配をするような奴だっただろうか。
「感化され過ぎているようだな」
首を振って一人ごちた。
ダンテが残ろうが、夢が俺達の世界にこようがどうでもいい。
俺には関係ないことだ。
「あーさっぱりしたぜ」
思い浮かべていた事柄そのイチがやってきた。
ネロである。
風邪をひかないようにとダンテやバージル達よりも時間をかけて乾かされるネロは、自分よりも柔軟剤をふんだんに使ったようなふわふわ感になっていた。
夢曰く、ダンテやバージルと違いネロは悪魔の血が25%しか入ってないらしい。
そんなことも知ってるとはさすがファンなだけはある。
夢は割合が少ない分、ネロはダンテとバージルに比べると体が弱いと思っているようなのだ。
ネロやバージルからすれば割合は関係ないと思うのだが。
悪魔の血が少しでも入ってるならば、めったなことでは死なないし、よほどのへまをしない限りは病気もしないだろうと考えられる。
へま……か。
そういえば小さい頃はダンテともども風邪をひいて寝込んだものだ、懐かしい。
ネロの番が終わったということは今はダンテが洗われている番か。
うつらうつらしながらバージルはそう思った。
「なあ、バージル」
眠りへの扉を叩いたところでネロに現実へと引き戻される。
これがダンテだったら無視するか切り捨てるところだが、ネロの事は最近出会ったばかりというのもあり、無下に扱うこともできない。
ため息交じりに返答する。
「……なんだ」
聞いてみてくだらない内容なら眠ってしまえばいい。
だが、ネロの話す内容は重要な内容だった。
「バージルはすぐ帰れるかもって言ったよな、アレについてなんだけど……」
バージルはその言葉に意識を覚醒しネロに向き直った。
「オレ、もう一個なんか必要だと思ったんだけど、それが何なのかわかる気がするんだ」
「なんだと?」
それこそがバージルが現在進行形で思い悩んでいることに他ならない。
「……話してみろ」
ネロの話の続きを待った。
「オレがいたフォルトゥナの魔剣教団の本部に蔵書室があるんだけどさ……」
魔剣教団、懐かしい響きである。
一年ほど前のことだ。
バージルはテメングニルを建てるその前にフォルトゥナを訪れたことがあった。
自らの父がかつて治めたと言うその地を。
父の情報を得るためその本部や城を物色したのを覚えている。
そんな父の痕跡を辿る旅の途中で通った道の一つにすぎないフォルトゥナであったが、ちょっとした出来心で一夜を共にした女がいた。
彼女は今頃どうしてるだろうか……。
いつもはしない他人の安否を心配してみる。
そういえばネロの魂の色は彼女にも似ている気がする。
まさか、な。
「その蔵書室で、今オレ達が体験してるようなことが書いてある本を読んだことがあるんだ」
集団生活に身を置いているくらいだからそうは見えなくても読むのだろう、だがネロは本とは無縁そうに見えた。
ダンテよりは読むのかもしれないが。
バージルが表情でそう語るのが見てとれたのか、頬をポリポリとかく仕草を見せて赤くなった。
「あー……仕事でちょっとへまして謹慎くらった時に、たまには本を読めって上司にな……」
「すまん、大人しく本を読んでいるネロが想像できなかった」
「その通りだからいい。どっちかっていうと考えるより先に手が出るしな」
苦笑し合う。
「そこにあったのは表紙に子供が描いたようなイラストで悪魔が描かれた絵本だったんだ」
「絵本、とな?」
「ああ、何でこんなところに絵本があるんだろうって思って……文字ばっかり追ってて活字の本にうんざりしてた時だったから読んでみたんだよ」
長い謹慎期間だったし、武器には触れるなって言われたからなーんにも他にすることなくてさ!
その時を思い出したのかプンプンしながら言う。
「ベルトとかベイブとかそんな名前の悪魔がタイトルになってたな」
「ベイブは豚だろうが。『ベ』のつく悪魔…ベルフェゴール、ベルゼブブ、ベリアルあたりか?」
「いや、違うな……ベリアルに至っては戦ったし」
「よく生きてたな(^ω^;)」
「More than enough.(ラクショー!)」
「あとはベヒモス、ベレトぐらいか……」
「ベレト……あ、そいつだ。『ネコのベレト』ってタイトルだったぜ」
「ベレト……だと?」
目をパチパチとさせながらネロに聞く。
悪魔はどれも危険な存在ではあるが、よくもまあそんな危険きわまりない悪魔を題材にしたもんだ。
ベレトは地獄の王侯の一人にして、ベリアル、アスモダイ、ガープとともに72柱を率いる首領と言われ強力な力を持った悪魔である。
青白い馬に跨り、ネコ達がホルンやトランペットを吹き鳴らす中現れる。
注意すべきは現れたその瞬間からだ。
常に憤怒しながら現れるため、共に過ごすには左手の中指にはめた銀の指輪を彼の鼻先に向けていなくてはいけない。
でないと契約はおろか、こっちが攻撃を受けてしまうのだ。
この通り、絵本になりえるような要素なんて兼ね備えてはいない悪魔である。
「内容がわけわかんなくてさ、ベレトって悪魔が異世界にネコになって落っこちる話だったぜ」
「ふむ、俺達と同じ状況ということか」
バージルは続きをさらに促した。
「飛ばされるというか、配下のネコの手違いかなんかで異世界に行くとかなんとか……。
やっぱりオレ達みたいに女の子にひろわれたってあった」
面倒ではあるが皆一匹狼タイプなので決して全員で風呂に入ったりはしない。
さわがしい愚弟と一緒に入るのはまっぴら御免だ、そうキッパリ言うのはバージルである。
でもネコの体なため自分では洗うことができないので一番面倒なのは洗ってあげている夢である。
一匹一匹洗ったらすぐ乾かすため、この作業はさらに時間がかかる。
一匹洗ったら乾かして、また次を一匹洗ったら乾かして……面倒なことこの上ないだろう。
バージルは綺麗になった毛並みをふわふわとさせ、指定席で丸くなっていた。
思い浮かぶのは小さく明滅するアミュレットと、呼応するようにやはりこちらも明滅を繰り返すネロのアザのことだ。
今すぐ帰れるかもしれないとは言ったが何かが欠けているのだ。
何が足りない?
どうすれば帰れるのだろうか。
甘い時間は気がラクなのは百も承知だ。
だがこのままでは平和に慣れて力が衰えてしまう。
魔界で生きていくことなど不可能だろう。
自分にはこの緩やかで甘い時間はあわない。場違いだ。
バージルは記憶の底にある魔界の空を瞼の裏に思い出しながら考えた。
それと同時に考えてしまうのはダンテが彼女を見つめる時の愛しげな横顔。
このままではダンテはここに残るとかいいそうだ。
いや、ダンテの事だ、彼女をも連れて帰るなんてのたまうかもしれない。
夢を、一般人を巻き込んでまた危害が出たらどうする?
そこまで考えて気付く。
俺は他人の心配をするような奴だっただろうか。
「感化され過ぎているようだな」
首を振って一人ごちた。
ダンテが残ろうが、夢が俺達の世界にこようがどうでもいい。
俺には関係ないことだ。
「あーさっぱりしたぜ」
思い浮かべていた事柄そのイチがやってきた。
ネロである。
風邪をひかないようにとダンテやバージル達よりも時間をかけて乾かされるネロは、自分よりも柔軟剤をふんだんに使ったようなふわふわ感になっていた。
夢曰く、ダンテやバージルと違いネロは悪魔の血が25%しか入ってないらしい。
そんなことも知ってるとはさすがファンなだけはある。
夢は割合が少ない分、ネロはダンテとバージルに比べると体が弱いと思っているようなのだ。
ネロやバージルからすれば割合は関係ないと思うのだが。
悪魔の血が少しでも入ってるならば、めったなことでは死なないし、よほどのへまをしない限りは病気もしないだろうと考えられる。
へま……か。
そういえば小さい頃はダンテともども風邪をひいて寝込んだものだ、懐かしい。
ネロの番が終わったということは今はダンテが洗われている番か。
うつらうつらしながらバージルはそう思った。
「なあ、バージル」
眠りへの扉を叩いたところでネロに現実へと引き戻される。
これがダンテだったら無視するか切り捨てるところだが、ネロの事は最近出会ったばかりというのもあり、無下に扱うこともできない。
ため息交じりに返答する。
「……なんだ」
聞いてみてくだらない内容なら眠ってしまえばいい。
だが、ネロの話す内容は重要な内容だった。
「バージルはすぐ帰れるかもって言ったよな、アレについてなんだけど……」
バージルはその言葉に意識を覚醒しネロに向き直った。
「オレ、もう一個なんか必要だと思ったんだけど、それが何なのかわかる気がするんだ」
「なんだと?」
それこそがバージルが現在進行形で思い悩んでいることに他ならない。
「……話してみろ」
ネロの話の続きを待った。
「オレがいたフォルトゥナの魔剣教団の本部に蔵書室があるんだけどさ……」
魔剣教団、懐かしい響きである。
一年ほど前のことだ。
バージルはテメングニルを建てるその前にフォルトゥナを訪れたことがあった。
自らの父がかつて治めたと言うその地を。
父の情報を得るためその本部や城を物色したのを覚えている。
そんな父の痕跡を辿る旅の途中で通った道の一つにすぎないフォルトゥナであったが、ちょっとした出来心で一夜を共にした女がいた。
彼女は今頃どうしてるだろうか……。
いつもはしない他人の安否を心配してみる。
そういえばネロの魂の色は彼女にも似ている気がする。
まさか、な。
「その蔵書室で、今オレ達が体験してるようなことが書いてある本を読んだことがあるんだ」
集団生活に身を置いているくらいだからそうは見えなくても読むのだろう、だがネロは本とは無縁そうに見えた。
ダンテよりは読むのかもしれないが。
バージルが表情でそう語るのが見てとれたのか、頬をポリポリとかく仕草を見せて赤くなった。
「あー……仕事でちょっとへまして謹慎くらった時に、たまには本を読めって上司にな……」
「すまん、大人しく本を読んでいるネロが想像できなかった」
「その通りだからいい。どっちかっていうと考えるより先に手が出るしな」
苦笑し合う。
「そこにあったのは表紙に子供が描いたようなイラストで悪魔が描かれた絵本だったんだ」
「絵本、とな?」
「ああ、何でこんなところに絵本があるんだろうって思って……文字ばっかり追ってて活字の本にうんざりしてた時だったから読んでみたんだよ」
長い謹慎期間だったし、武器には触れるなって言われたからなーんにも他にすることなくてさ!
その時を思い出したのかプンプンしながら言う。
「ベルトとかベイブとかそんな名前の悪魔がタイトルになってたな」
「ベイブは豚だろうが。『ベ』のつく悪魔…ベルフェゴール、ベルゼブブ、ベリアルあたりか?」
「いや、違うな……ベリアルに至っては戦ったし」
「よく生きてたな(^ω^;)」
「More than enough.(ラクショー!)」
「あとはベヒモス、ベレトぐらいか……」
「ベレト……あ、そいつだ。『ネコのベレト』ってタイトルだったぜ」
「ベレト……だと?」
目をパチパチとさせながらネロに聞く。
悪魔はどれも危険な存在ではあるが、よくもまあそんな危険きわまりない悪魔を題材にしたもんだ。
ベレトは地獄の王侯の一人にして、ベリアル、アスモダイ、ガープとともに72柱を率いる首領と言われ強力な力を持った悪魔である。
青白い馬に跨り、ネコ達がホルンやトランペットを吹き鳴らす中現れる。
注意すべきは現れたその瞬間からだ。
常に憤怒しながら現れるため、共に過ごすには左手の中指にはめた銀の指輪を彼の鼻先に向けていなくてはいけない。
でないと契約はおろか、こっちが攻撃を受けてしまうのだ。
この通り、絵本になりえるような要素なんて兼ね備えてはいない悪魔である。
「内容がわけわかんなくてさ、ベレトって悪魔が異世界にネコになって落っこちる話だったぜ」
「ふむ、俺達と同じ状況ということか」
バージルは続きをさらに促した。
「飛ばされるというか、配下のネコの手違いかなんかで異世界に行くとかなんとか……。
やっぱりオレ達みたいに女の子にひろわれたってあった」