2.特別だとか思わないでくれるか?
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(_ _|||)=3 ハァーッ
バージルはいい加減、どんよりとしてばかりのこの空気が嫌だった。
「貴様、最初の威勢はどうした」
ぼーっとするな。
早く俺がわかる説明をしてくれるんじゃなかったのか?
俺はそのために来た。
「今やるべきことをやって、それから好きに落ち込むがいい……俺を巻き込むな」
「そうだね……」
夢は魂が抜けたままのような風体で、ゲーム映像を交えてダンテと同じことをバージルに説明した。
ダンテと同じで映像を見て目を見開いていたが、すぐに理解したようだった。
ダンテより頭は堅そうに見えるが、意外と柔軟で物分かりはいいようだ。
「ふむ、そのネロとかいう小僧の居場所を見つけんことにはなんとも言えんな……心当たりを探せ」
その場をうろうろと歩きながら考えにふける。
夢はそれすら呆けた表情で見つめ、心ここに在らず、といったところだ。
「しかし方法はなんだ?
魔界の門を開くのと原理は同じなのか……ダンテの力も必要ということなのだろうな、やむを得まい。
キャストはそろわんとな……」
『ダンテ』の言葉に夢は頭をあげた。
「あたし……やっぱりダンテ探してくるね」
「待て」
バージルはその一言で何も持たず外へ飛び出していかんとする夢を止めた。
「……貴様はオレが好き、とか戯れ言を言っていたな」
改めて言われると少し恥ずかしくて照れてしまうが、今の夢には戸惑いしかなかった。
「だが、貴様……ダンテに惹かれているようだな、共に過ごして情がわいたか?」
「あたしがダンテに?ありえないでしょー!?
あ、ははは……ダンテに浮気なんてしてないよ、バージル一筋だよ!?」
ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿
「そういう意味で言ってるのではない、貴様のそれはただの歌手や俳優に対する感情の方だろう」
自分でもよくわからないが図星なのかもしれない、心が嫌にざわつき動揺してしまう。
「バージルもダンテも好きだけど恋愛感情のそういう好きとかじゃ……」
それに例え好きになったところで違う世界に住んでいるから最後は離れなくちゃいけない。
傷つきたくない。
「ふ、別に誰が誰を好きになろうとどうでもいい。オレにはとっくの昔に捨てた感情だ……」
「バージル……」
「わんわん!」
玄関でずっと座りこんでいたベオが呼んでいる。
ベオは帰ってからというものまるで何かを待っているかのように玄関マットから一歩も動こうとしなかったのだ。
「あ、ごめん、ちょっと行ってくるね」
郵便屋さんでも待ってたのかな、と立ち上がり玄関に向かう夢の背にバージルは小さく呟いた。
「かまわん、どうせ愚弟だ……」
***
「ベオ、どしたの?」
夢はしっぽをパタパタと振り見上げてくるベオをひと撫でして玄関の覗き穴を見た。
「何もいないよ。ベオ、何の用……あれ?」
振り返ればベオは玄関から消えていた。
リビングに向かったようだ、しっぽが廊下の角から見えていた。
「え、もういいの?一体何待ってたんだか……」
頭をポリポリと掻き自分もリビングに戻ろうとしたが耳が小さな音を拾った。
耳を澄まさないと聞こえないくらいのカリカリカリとドアをひっかく小さな音だ。
それはネコが爪で引っ掻いているような音である。
「もしかしてダンテ!?」
夢がそっとドアを開けるとそこにはやはりダンテがいた。
「……にゃー」
ちょこんと座り込んでこちらを申し訳ないとでも言いたげに、所在なさげに見上げている。
「おかえり、ダンテ」
夢は慈悲深いマリアのような頬笑みで、小さくなっているネコを抱きしめた。
***
「半魔」
今ここには半魔はバージルしかいない。
そして生き物はバージル以外には目の前の黒い犬だけだ。
すると今の言葉はこの犬が発したことになる。
確かベオウルフから取ってベオだったか。
「……なんだ貴様、喋れたのか」
「早く帰りたいなら魔の象徴たる力を使え、お前持ってるだろう」
「ほう、この力でどう使うと言うのだ?ろくな幻影剣も出せぬ魔力などあってないに等しい」
ネコの手に成り下がった己の手を忌々しげに見つめる。
「少し考えればおのずと見えてくる。必要とされる物はいつもお前のそばにあるということだ。
お前はあの男よりは頭が回りそうだ」
「……あの様な愚弟と一緒にするな」
眉間にシワを寄せ短く唸るが、ベオはあくびをしてどこ吹く風だ。
「その愚弟とは仲良くしたほうがいい。
それが早く帰れる鍵でもあるだろう」
「なんだと?今更ダンテと仲良くしろなどと愚の骨頂……」
「んー?仲いいね、2人とも」
ダンテを抱いた夢が玄関から戻ってきたことで話が一方的に打ちきられてしまった。
「わふん!」
ベオに至ってはいつも夢の前で見せている甘えん坊な犬に成り下がっている。
変わり身の早い犬め……!
ダンテを視界に入れぬようバージルは目を閉じてラグの上で丸くなった。
「オレはもう寝る。力を使ったせいかとても眠い。
……しかたない……夢、元の世界に戻れるまで世話ににゃる……にゃー……」
しばらくすると小さな呼吸音が聞こえてきた。
大変ネコらしいかわいい寝姿、ごちそうさまです。(*´ー`*)
そして夢はすぐにダンテのピザを用意した。
にゃあ、しか言わないと言うことはお腹が空いてる証拠でもある。
満腹になるまで一心不乱に食べたダンテは空の皿を差し出し小さく「美味かった」と礼を言った。
「心配してたんだからね。
ダンテが戻ってきてくれてよかった」
言葉と共にもう一度抱き上げられる。
「どうかしてた。
悪ィ……頭に血が上ってたみたいだ」
背中の毛並みをやさしくすいていく細い指に気持ちよさを感じ、ダンテは目を瞑った。
「ううん、あたしこそごめん。
今度からは嫌なことあったらすぐ言ってね。……どこに行っていたの?」
「お前んとこのアルバイト先……ピザもらえるかと思って……」
「もらえた?」
ダンテは視線を中にさ迷わせてから、返答を待つ夢に観念したように言う。
「いいや、鰹節ご飯だった」
思い出してムスッとした表情になる。
「そりゃそうだ。ピザが主食なんてのは両親にしか言ってないもの。
あたしがいなくちゃピザなんか出してもらえるわけないじゃーん」
ハハハ、と笑ってダンテの鼻をチョンとつつく。
ダンテは舌打ちしながら、それを鬱陶しそうにした。
「……お前はさ、バージルの方がいいのかと思った。バージルを選んで、オレを捨てるかと思った」
「そりゃ、ね、バージルの方が好きとは言ったよ。
けどダンテも好きなんだよ。バカだなぁ、捨てるわけないじゃん」
ぐりぐりとダンテの頭を粗暴に撫でる。
「あたしは欲張りだからね、同じものがあったらどっちももらっちゃうような人間だよ」
それにあたしがバージルを一番好きなのはゲームでだから。
よっ!と。
こんこんと眠るバージルを膝にのせ片手で撫でながらいう。
それって憧れとかファンだから好きっていう精神に似てるよね?
「特別なんてないよ。ダンテもバージルもネロもみんな。
ダンテにとってあたしが特別でないようにね」
これ以上の感情は持ちたくない、とでもいうかのように夢は遠い目をした。
「おいで、ダンテ」
ダンテもバージルが寝かされている方とは反対側に来るよう優しい声で呼ばれる。
大人しくそこに横になると、ゆったりとした動きで撫でてきた。
まぶたがゆるゆると下がっていく。
この世界の夢と違う世界のオレはいずれ離れなくてはいけない。
それに自分にとっても夢は特別な存在じゃない、はずなんだ。
でも……。
ダンテは複雑な想いを胸に抱きながら眠りの世界へと旅立った。
●あとがき
相変わらずの捏造。
バージルやダンテが3の離れ離れになるシーンで何を思ったのかはきっと本人にしかわからないかも。
書いてる時ついつい忘れそうになっちゃうけど全部ネコの姿なバージルたん。想像してみると萌える。カワイイナー
ここまで読んでいただきありがとうございました。
バージルはいい加減、どんよりとしてばかりのこの空気が嫌だった。
「貴様、最初の威勢はどうした」
ぼーっとするな。
早く俺がわかる説明をしてくれるんじゃなかったのか?
俺はそのために来た。
「今やるべきことをやって、それから好きに落ち込むがいい……俺を巻き込むな」
「そうだね……」
夢は魂が抜けたままのような風体で、ゲーム映像を交えてダンテと同じことをバージルに説明した。
ダンテと同じで映像を見て目を見開いていたが、すぐに理解したようだった。
ダンテより頭は堅そうに見えるが、意外と柔軟で物分かりはいいようだ。
「ふむ、そのネロとかいう小僧の居場所を見つけんことにはなんとも言えんな……心当たりを探せ」
その場をうろうろと歩きながら考えにふける。
夢はそれすら呆けた表情で見つめ、心ここに在らず、といったところだ。
「しかし方法はなんだ?
魔界の門を開くのと原理は同じなのか……ダンテの力も必要ということなのだろうな、やむを得まい。
キャストはそろわんとな……」
『ダンテ』の言葉に夢は頭をあげた。
「あたし……やっぱりダンテ探してくるね」
「待て」
バージルはその一言で何も持たず外へ飛び出していかんとする夢を止めた。
「……貴様はオレが好き、とか戯れ言を言っていたな」
改めて言われると少し恥ずかしくて照れてしまうが、今の夢には戸惑いしかなかった。
「だが、貴様……ダンテに惹かれているようだな、共に過ごして情がわいたか?」
「あたしがダンテに?ありえないでしょー!?
あ、ははは……ダンテに浮気なんてしてないよ、バージル一筋だよ!?」
ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿
「そういう意味で言ってるのではない、貴様のそれはただの歌手や俳優に対する感情の方だろう」
自分でもよくわからないが図星なのかもしれない、心が嫌にざわつき動揺してしまう。
「バージルもダンテも好きだけど恋愛感情のそういう好きとかじゃ……」
それに例え好きになったところで違う世界に住んでいるから最後は離れなくちゃいけない。
傷つきたくない。
「ふ、別に誰が誰を好きになろうとどうでもいい。オレにはとっくの昔に捨てた感情だ……」
「バージル……」
「わんわん!」
玄関でずっと座りこんでいたベオが呼んでいる。
ベオは帰ってからというものまるで何かを待っているかのように玄関マットから一歩も動こうとしなかったのだ。
「あ、ごめん、ちょっと行ってくるね」
郵便屋さんでも待ってたのかな、と立ち上がり玄関に向かう夢の背にバージルは小さく呟いた。
「かまわん、どうせ愚弟だ……」
***
「ベオ、どしたの?」
夢はしっぽをパタパタと振り見上げてくるベオをひと撫でして玄関の覗き穴を見た。
「何もいないよ。ベオ、何の用……あれ?」
振り返ればベオは玄関から消えていた。
リビングに向かったようだ、しっぽが廊下の角から見えていた。
「え、もういいの?一体何待ってたんだか……」
頭をポリポリと掻き自分もリビングに戻ろうとしたが耳が小さな音を拾った。
耳を澄まさないと聞こえないくらいのカリカリカリとドアをひっかく小さな音だ。
それはネコが爪で引っ掻いているような音である。
「もしかしてダンテ!?」
夢がそっとドアを開けるとそこにはやはりダンテがいた。
「……にゃー」
ちょこんと座り込んでこちらを申し訳ないとでも言いたげに、所在なさげに見上げている。
「おかえり、ダンテ」
夢は慈悲深いマリアのような頬笑みで、小さくなっているネコを抱きしめた。
***
「半魔」
今ここには半魔はバージルしかいない。
そして生き物はバージル以外には目の前の黒い犬だけだ。
すると今の言葉はこの犬が発したことになる。
確かベオウルフから取ってベオだったか。
「……なんだ貴様、喋れたのか」
「早く帰りたいなら魔の象徴たる力を使え、お前持ってるだろう」
「ほう、この力でどう使うと言うのだ?ろくな幻影剣も出せぬ魔力などあってないに等しい」
ネコの手に成り下がった己の手を忌々しげに見つめる。
「少し考えればおのずと見えてくる。必要とされる物はいつもお前のそばにあるということだ。
お前はあの男よりは頭が回りそうだ」
「……あの様な愚弟と一緒にするな」
眉間にシワを寄せ短く唸るが、ベオはあくびをしてどこ吹く風だ。
「その愚弟とは仲良くしたほうがいい。
それが早く帰れる鍵でもあるだろう」
「なんだと?今更ダンテと仲良くしろなどと愚の骨頂……」
「んー?仲いいね、2人とも」
ダンテを抱いた夢が玄関から戻ってきたことで話が一方的に打ちきられてしまった。
「わふん!」
ベオに至ってはいつも夢の前で見せている甘えん坊な犬に成り下がっている。
変わり身の早い犬め……!
ダンテを視界に入れぬようバージルは目を閉じてラグの上で丸くなった。
「オレはもう寝る。力を使ったせいかとても眠い。
……しかたない……夢、元の世界に戻れるまで世話ににゃる……にゃー……」
しばらくすると小さな呼吸音が聞こえてきた。
大変ネコらしいかわいい寝姿、ごちそうさまです。(*´ー`*)
そして夢はすぐにダンテのピザを用意した。
にゃあ、しか言わないと言うことはお腹が空いてる証拠でもある。
満腹になるまで一心不乱に食べたダンテは空の皿を差し出し小さく「美味かった」と礼を言った。
「心配してたんだからね。
ダンテが戻ってきてくれてよかった」
言葉と共にもう一度抱き上げられる。
「どうかしてた。
悪ィ……頭に血が上ってたみたいだ」
背中の毛並みをやさしくすいていく細い指に気持ちよさを感じ、ダンテは目を瞑った。
「ううん、あたしこそごめん。
今度からは嫌なことあったらすぐ言ってね。……どこに行っていたの?」
「お前んとこのアルバイト先……ピザもらえるかと思って……」
「もらえた?」
ダンテは視線を中にさ迷わせてから、返答を待つ夢に観念したように言う。
「いいや、鰹節ご飯だった」
思い出してムスッとした表情になる。
「そりゃそうだ。ピザが主食なんてのは両親にしか言ってないもの。
あたしがいなくちゃピザなんか出してもらえるわけないじゃーん」
ハハハ、と笑ってダンテの鼻をチョンとつつく。
ダンテは舌打ちしながら、それを鬱陶しそうにした。
「……お前はさ、バージルの方がいいのかと思った。バージルを選んで、オレを捨てるかと思った」
「そりゃ、ね、バージルの方が好きとは言ったよ。
けどダンテも好きなんだよ。バカだなぁ、捨てるわけないじゃん」
ぐりぐりとダンテの頭を粗暴に撫でる。
「あたしは欲張りだからね、同じものがあったらどっちももらっちゃうような人間だよ」
それにあたしがバージルを一番好きなのはゲームでだから。
よっ!と。
こんこんと眠るバージルを膝にのせ片手で撫でながらいう。
それって憧れとかファンだから好きっていう精神に似てるよね?
「特別なんてないよ。ダンテもバージルもネロもみんな。
ダンテにとってあたしが特別でないようにね」
これ以上の感情は持ちたくない、とでもいうかのように夢は遠い目をした。
「おいで、ダンテ」
ダンテもバージルが寝かされている方とは反対側に来るよう優しい声で呼ばれる。
大人しくそこに横になると、ゆったりとした動きで撫でてきた。
まぶたがゆるゆると下がっていく。
この世界の夢と違う世界のオレはいずれ離れなくてはいけない。
それに自分にとっても夢は特別な存在じゃない、はずなんだ。
でも……。
ダンテは複雑な想いを胸に抱きながら眠りの世界へと旅立った。
●あとがき
相変わらずの捏造。
バージルやダンテが3の離れ離れになるシーンで何を思ったのかはきっと本人にしかわからないかも。
書いてる時ついつい忘れそうになっちゃうけど全部ネコの姿なバージルたん。想像してみると萌える。カワイイナー
ここまで読んでいただきありがとうございました。