2.特別だとか思わないでくれるか?
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「はぁー笑った……バージル、いいからオレと来いよ」
笑いすぎで目尻に浮かんだ涙を前足の毛で拭き取り、バージルに差し出す。
だがバージルはそんなダンテの手を乱暴に振り払うと背を向けた。
「……断る」
「じゃぁずっとここにいる気か、この世界に?」
「この世界?どういうことだ……」
話くらいは聞いてやってもいいか。
バージルは魔力を使い果たしたのか、体を伏せて横になった。
ダンテに背を向けたままであったが。
そして、ダンテも笑いすぎでくたびれてしまったのかその場に座り込む。
夢はなにも言わないバージルの正面に回り込んで顔を覗き込むと、ゆっくりと胡座をかいて座った。
「バージル。ここはキミたちがいた世界とは次元の違う世界だよ。
元の世界に帰りたくないの?」
あの時、俺は魔界にいた……なのに気が付いたらこの街の路地裏にいた。
いつ世界を渡った?
俺にそんな覚えは全くない。
世界とは、そんなに急に門も開かずして渡れるものなのか?
「……本当にここは違う世界なのか、ダンテ……女……」
「だからそう言ってるだろ?」
「確かに平和過ぎる、悪魔の気配も感じない」
まるで母や父と過ごした幼少期のような平和な時間が流れている。
「いろいろ説明してあげる、一緒に行こうよ」
ダンテではなく、今度は夢がその手を差し出す。
帰る方法……一緒に探そう?
続く言葉に頑なだった心が揺らぐ。
「お前と行けば帰れる見込みがあるのか……」
「わかってることも家に帰ってからなら説明できる。帰る見込みも見つかる……恐らくは」
確かにこのままネコの姿でこの世界にいてもしかたがない。
自分一人ではどうしたらいいのかわからない状態だったのも事実。
戻れる方法があるのなら藁にもすがりたいくらいだ。
バージルは揺らいだ心のまま、夢の手を見つめ、トテトテとゆっくり歩みよった。
夢はそんなバージルの仕草に耐えきれず抱きしめた。
ぎゅぅむ。
すりすりすり……。
抱き締めるだけでは飽き足らず、頬擦りまでしてくる。
「うわばかやめろ!」
ぞわっ
身体中の毛が逆立つ。
そういえばこいつ、さっき俺に飛びかかろうとしていた変態でもあった。
逃げるために爪で攻撃しようとしたが、抱きしめる腕からはまたもやマタタビの香りがしてバージルを幻惑してきた。
マタタビを投げる際に手についた匂い成分の名残だったが、瞬時にバージルの頭の中はふやけた。
「……うっ、ふにゃ、」
ゴロゴロゴロ……。
自分ではコントロールが効かない。
そんな表情したくないのに、とろんと気持ちよさげな顔になってしまう。
「バージル+ネコ=世界滅亡レベルのかわいさ!」
ふおおおおおお!
(。A。)━(゚∀゚)━(。A。)━(゚∀゚)━(。A。)━━!!!!
我が人生に悔いなし!
(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)
バージルたん好き好きオーラが夢の全身から出ている。
「やれやれ、やっぱりお前はバージルが好きなんだな……」
ぶっちゃけ気持ち悪い光景ではある。
だが、ダンテはそれを見て何故か嫌な気分になった。
……ちくり。
ん、何だ、この胸の痛み。
さっきの幻影剣(笑)が残ってんのか?
そう思い胸を確認してもなにも解決はしなかった。
余計に胸の中にしこりができたように重たく感じるだけだった。
「女、詳しく聞かせろ、ダンテのいないところなら俺はどこでも行ってやってもいい」
そっぽを向いて耳を垂らしてはいるが、その喉はゴロゴロゴロと鳴り続けている。
きゅん。
デレ期来た。
何このかわいい生き物。
嗚呼、かわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいぃぃぃい!
ヽ(*´∀`)ノ
惜しい!ホントのバージルなら殺されてたかもしれないけどご飯軽く10杯イケたのに。
まぁネコでもかわいいから許す!(*^∀゚)ъ
それにしても、よっぽどダンテのこと嫌なのかな、そこまで仲悪かったっけ。
「んん?ダンテが、いないところだったら……って言ったの?」
夢の瞳には今バージルしか映っていない。
バージルをまっすぐに見つめ、その体を揺らして聞いた。
バージルは夢、ダンテの両者の気持ちを知ってか知らずか、とどめとばかりにきっぱりと言った。
「ああ、愚弟と一緒はいやだ」
ダンテといると、自分の出した答えは間違っていたのかもしれないと思いそうになる。
ダンテは俺の残った人間の部分を嫌でも思い出させる。
捨てたはずの人間を、心を。
そんな物は必要ないと言いたいのに、自分の中では必要だと叫ぶ者が出てきてしまうのだ。
そしてそいつは決まってダンテの姿をしている。
バージルは夢の腕に抱かれながら、様子をうかがうようにダンテを見た。
夢がそんなバージルの目線を辿ると硝子の瞳で無表情を浮かべるダンテと目があった。
二人の視線を受けたダンテは自分がすごく場違いで邪険にされてるような気分だった。
自分だけ取り残されたような、完全なる2人の世界。
ビシビシと感じる疎外感。
ああ、捨てられるネコってこんな気持ちかもな。
どこか遠くでそう思う自分がいた。
「ねぇ、ダンテ……」
その次の言葉は聞きたくない。
きっと別れの言葉だろうから……。
同じものは二つはいらない、どちらか一方を選ぶなら自分の好きな方を選ぶ。
人とはそういうものだ。
ならば自分から言い出した方が気が楽だ。
ダンテは夢の言葉を遮るようにして早口でまくしたてた。
「あーハイハイ、お邪魔ムシはどっか行きますよ!
アンタはバージルさえいればいいんだろ?もう何度も聞いたよ、オレなんかよりバージルお兄様が大好きだもんな!」
「え、ちょ……ダンテ何言ってるの?」
夢は戸惑いながらダンテを見る。
バージルはその間、じっとダンテの愚言を聞いていた。
「オレはピザの出るとこなら何もアンタのとこじゃなくたっていいんだ」
夢と鉢合わせするかもしれないが、夢のアルバイト先の店長はダンテを可愛がってくれた。
ピザだってかわいく小ネコがおねだりすれば少しくらいくれるはずだ。
「ねぇ、何を怒ってるの」
「ダンテは気に入らないことがあるとよくわからない癇癪を起こすことがある。
またつまらんことで怒っているだけだ」
バージルはコソコソと言ったつもりらしいがダンテにもはっきり聞こえた。
「怒ってねーよ、くそ!二人でいつまでもよろしくやってりゃいいだろ!」
言葉を吐き捨て、すぐさま立ち上がりダンテは駆け出した。
「ダンテ!待って、ダンテ!!」
夢はあわてて立ち上がりダンテを追おうとしたが、疾風のように駆けて行ってしまったダンテには追い付けなかった。
「行くぞ、女」
腕の中のバージルが何事もなかったかのように言う。
ダンテは何を怒ってたんだろう。
誰も邪魔なんて言ってないのに……。
ただ生バージルでテンションあがっただけなのに。
あたしの行動が癪に触ったのかな。
(´;ω;`)
バージルの言葉には返事をせず、夢は虚空を見上げた。
「ダンテ戻ってくるかな」
「さあな、知らん」
フン、いない方が俺にしてみれば好都合だ。
バージルは鼻で息を吐き、夢の腕から下に飛び降りた。
「バージルって薄情……」
「フン、よく知りもしないくせに勝手な解釈をするな」
バージルは苦虫を噛み潰したような顔で睨んできたが、すぐに前を向いて空に想いを馳せた。
「オレはあいつとは違う。悪魔の道を選んだ……心などない」
「……そんなことないと思うけど……いや、何でもないです、ごめん……」
バージルが顔中にシワを寄せ、ネコができる限り一番険しい顔で睨んできた。
<●>言<●>クワッ
ネコでない人間のバージルの顔はきっともっとすごく歪んでいただろう。
「あの、なんでそんなにダンテのこと嫌いなの」
傍目から見れば、そう見えるかもしれない。
「せっかく捨てたものを拾ってくるあいつが嫌なんだ。
それに答案用紙に自分が正しく書いた答えを勝手に違う答えに書き直してくる……お前はそれが許せるか?」
何かの比喩なのだろうがはっきり言ってもらわないことには理解不能だった。
時に人は言葉にしなくては理解しあえない生き物、何も言わず悟れというのは難しいのだ。
けれど答案用紙の件についてならなんとなくわかる、何てったって現役の高校生だ。
テストとは嫌なくらい顔見知りである。
「よくわかんないけど、それは嫌かも……下手すりゃ赤点だもの」
夢はバージルの後に続き、ゆっくりと崩れた階段を降りて行った。
「ゴメンねベオ、お待たせ」
夢は苦笑しながらくくりつけていたリードを外し、ベオの頭を撫でた。
その肩にはダンテではなくよく似た違うネコが乗っている。
「この子はバージル、ダンテの双子のお兄ちゃんね。
……ダンテはいなくなっちゃった、なんか怒らせちゃったみたいで」
階段から降りてきたあいつとはすれ違ったから覚えている。
ちらりと見たが、お互いに何も言わなかった。
やけに急いで走り去ると思えば、やはりあれはしっぽを巻いて逃げゆく者の走りだったのか。
しょんぼりと落ち込み、帰路の道でこっそりダンテを探す夢にバージルもベオもためいきを吐かずにはいられなかった。
やれやれ……あやつ、主人を悲しませるとは何事よ……。
傷つけるなと忠告してやったのに。
道はこちらがわにしかないのだ、早く戻ってこい。
ベオはどこへ行ったのかわからないダンテに向かって鼻を鳴らした。
笑いすぎで目尻に浮かんだ涙を前足の毛で拭き取り、バージルに差し出す。
だがバージルはそんなダンテの手を乱暴に振り払うと背を向けた。
「……断る」
「じゃぁずっとここにいる気か、この世界に?」
「この世界?どういうことだ……」
話くらいは聞いてやってもいいか。
バージルは魔力を使い果たしたのか、体を伏せて横になった。
ダンテに背を向けたままであったが。
そして、ダンテも笑いすぎでくたびれてしまったのかその場に座り込む。
夢はなにも言わないバージルの正面に回り込んで顔を覗き込むと、ゆっくりと胡座をかいて座った。
「バージル。ここはキミたちがいた世界とは次元の違う世界だよ。
元の世界に帰りたくないの?」
あの時、俺は魔界にいた……なのに気が付いたらこの街の路地裏にいた。
いつ世界を渡った?
俺にそんな覚えは全くない。
世界とは、そんなに急に門も開かずして渡れるものなのか?
「……本当にここは違う世界なのか、ダンテ……女……」
「だからそう言ってるだろ?」
「確かに平和過ぎる、悪魔の気配も感じない」
まるで母や父と過ごした幼少期のような平和な時間が流れている。
「いろいろ説明してあげる、一緒に行こうよ」
ダンテではなく、今度は夢がその手を差し出す。
帰る方法……一緒に探そう?
続く言葉に頑なだった心が揺らぐ。
「お前と行けば帰れる見込みがあるのか……」
「わかってることも家に帰ってからなら説明できる。帰る見込みも見つかる……恐らくは」
確かにこのままネコの姿でこの世界にいてもしかたがない。
自分一人ではどうしたらいいのかわからない状態だったのも事実。
戻れる方法があるのなら藁にもすがりたいくらいだ。
バージルは揺らいだ心のまま、夢の手を見つめ、トテトテとゆっくり歩みよった。
夢はそんなバージルの仕草に耐えきれず抱きしめた。
ぎゅぅむ。
すりすりすり……。
抱き締めるだけでは飽き足らず、頬擦りまでしてくる。
「うわばかやめろ!」
ぞわっ
身体中の毛が逆立つ。
そういえばこいつ、さっき俺に飛びかかろうとしていた変態でもあった。
逃げるために爪で攻撃しようとしたが、抱きしめる腕からはまたもやマタタビの香りがしてバージルを幻惑してきた。
マタタビを投げる際に手についた匂い成分の名残だったが、瞬時にバージルの頭の中はふやけた。
「……うっ、ふにゃ、」
ゴロゴロゴロ……。
自分ではコントロールが効かない。
そんな表情したくないのに、とろんと気持ちよさげな顔になってしまう。
「バージル+ネコ=世界滅亡レベルのかわいさ!」
ふおおおおおお!
(。A。)━(゚∀゚)━(。A。)━(゚∀゚)━(。A。)━━!!!!
我が人生に悔いなし!
(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)
バージルたん好き好きオーラが夢の全身から出ている。
「やれやれ、やっぱりお前はバージルが好きなんだな……」
ぶっちゃけ気持ち悪い光景ではある。
だが、ダンテはそれを見て何故か嫌な気分になった。
……ちくり。
ん、何だ、この胸の痛み。
さっきの幻影剣(笑)が残ってんのか?
そう思い胸を確認してもなにも解決はしなかった。
余計に胸の中にしこりができたように重たく感じるだけだった。
「女、詳しく聞かせろ、ダンテのいないところなら俺はどこでも行ってやってもいい」
そっぽを向いて耳を垂らしてはいるが、その喉はゴロゴロゴロと鳴り続けている。
きゅん。
デレ期来た。
何このかわいい生き物。
嗚呼、かわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいぃぃぃい!
ヽ(*´∀`)ノ
惜しい!ホントのバージルなら殺されてたかもしれないけどご飯軽く10杯イケたのに。
まぁネコでもかわいいから許す!(*^∀゚)ъ
それにしても、よっぽどダンテのこと嫌なのかな、そこまで仲悪かったっけ。
「んん?ダンテが、いないところだったら……って言ったの?」
夢の瞳には今バージルしか映っていない。
バージルをまっすぐに見つめ、その体を揺らして聞いた。
バージルは夢、ダンテの両者の気持ちを知ってか知らずか、とどめとばかりにきっぱりと言った。
「ああ、愚弟と一緒はいやだ」
ダンテといると、自分の出した答えは間違っていたのかもしれないと思いそうになる。
ダンテは俺の残った人間の部分を嫌でも思い出させる。
捨てたはずの人間を、心を。
そんな物は必要ないと言いたいのに、自分の中では必要だと叫ぶ者が出てきてしまうのだ。
そしてそいつは決まってダンテの姿をしている。
バージルは夢の腕に抱かれながら、様子をうかがうようにダンテを見た。
夢がそんなバージルの目線を辿ると硝子の瞳で無表情を浮かべるダンテと目があった。
二人の視線を受けたダンテは自分がすごく場違いで邪険にされてるような気分だった。
自分だけ取り残されたような、完全なる2人の世界。
ビシビシと感じる疎外感。
ああ、捨てられるネコってこんな気持ちかもな。
どこか遠くでそう思う自分がいた。
「ねぇ、ダンテ……」
その次の言葉は聞きたくない。
きっと別れの言葉だろうから……。
同じものは二つはいらない、どちらか一方を選ぶなら自分の好きな方を選ぶ。
人とはそういうものだ。
ならば自分から言い出した方が気が楽だ。
ダンテは夢の言葉を遮るようにして早口でまくしたてた。
「あーハイハイ、お邪魔ムシはどっか行きますよ!
アンタはバージルさえいればいいんだろ?もう何度も聞いたよ、オレなんかよりバージルお兄様が大好きだもんな!」
「え、ちょ……ダンテ何言ってるの?」
夢は戸惑いながらダンテを見る。
バージルはその間、じっとダンテの愚言を聞いていた。
「オレはピザの出るとこなら何もアンタのとこじゃなくたっていいんだ」
夢と鉢合わせするかもしれないが、夢のアルバイト先の店長はダンテを可愛がってくれた。
ピザだってかわいく小ネコがおねだりすれば少しくらいくれるはずだ。
「ねぇ、何を怒ってるの」
「ダンテは気に入らないことがあるとよくわからない癇癪を起こすことがある。
またつまらんことで怒っているだけだ」
バージルはコソコソと言ったつもりらしいがダンテにもはっきり聞こえた。
「怒ってねーよ、くそ!二人でいつまでもよろしくやってりゃいいだろ!」
言葉を吐き捨て、すぐさま立ち上がりダンテは駆け出した。
「ダンテ!待って、ダンテ!!」
夢はあわてて立ち上がりダンテを追おうとしたが、疾風のように駆けて行ってしまったダンテには追い付けなかった。
「行くぞ、女」
腕の中のバージルが何事もなかったかのように言う。
ダンテは何を怒ってたんだろう。
誰も邪魔なんて言ってないのに……。
ただ生バージルでテンションあがっただけなのに。
あたしの行動が癪に触ったのかな。
(´;ω;`)
バージルの言葉には返事をせず、夢は虚空を見上げた。
「ダンテ戻ってくるかな」
「さあな、知らん」
フン、いない方が俺にしてみれば好都合だ。
バージルは鼻で息を吐き、夢の腕から下に飛び降りた。
「バージルって薄情……」
「フン、よく知りもしないくせに勝手な解釈をするな」
バージルは苦虫を噛み潰したような顔で睨んできたが、すぐに前を向いて空に想いを馳せた。
「オレはあいつとは違う。悪魔の道を選んだ……心などない」
「……そんなことないと思うけど……いや、何でもないです、ごめん……」
バージルが顔中にシワを寄せ、ネコができる限り一番険しい顔で睨んできた。
<●>言<●>クワッ
ネコでない人間のバージルの顔はきっともっとすごく歪んでいただろう。
「あの、なんでそんなにダンテのこと嫌いなの」
傍目から見れば、そう見えるかもしれない。
「せっかく捨てたものを拾ってくるあいつが嫌なんだ。
それに答案用紙に自分が正しく書いた答えを勝手に違う答えに書き直してくる……お前はそれが許せるか?」
何かの比喩なのだろうがはっきり言ってもらわないことには理解不能だった。
時に人は言葉にしなくては理解しあえない生き物、何も言わず悟れというのは難しいのだ。
けれど答案用紙の件についてならなんとなくわかる、何てったって現役の高校生だ。
テストとは嫌なくらい顔見知りである。
「よくわかんないけど、それは嫌かも……下手すりゃ赤点だもの」
夢はバージルの後に続き、ゆっくりと崩れた階段を降りて行った。
「ゴメンねベオ、お待たせ」
夢は苦笑しながらくくりつけていたリードを外し、ベオの頭を撫でた。
その肩にはダンテではなくよく似た違うネコが乗っている。
「この子はバージル、ダンテの双子のお兄ちゃんね。
……ダンテはいなくなっちゃった、なんか怒らせちゃったみたいで」
階段から降りてきたあいつとはすれ違ったから覚えている。
ちらりと見たが、お互いに何も言わなかった。
やけに急いで走り去ると思えば、やはりあれはしっぽを巻いて逃げゆく者の走りだったのか。
しょんぼりと落ち込み、帰路の道でこっそりダンテを探す夢にバージルもベオもためいきを吐かずにはいられなかった。
やれやれ……あやつ、主人を悲しませるとは何事よ……。
傷つけるなと忠告してやったのに。
道はこちらがわにしかないのだ、早く戻ってこい。
ベオはどこへ行ったのかわからないダンテに向かって鼻を鳴らした。