漆黒の闇に踊る

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『雪の雫』様宅夢主の名前は?

「ここです」


そう言ってリアラが足を止めたのは、小さいシルバーアクセサリーの店だった。滅多に寄らないそこに、髭は首を傾げる。


「何かほしいもんでもあるのか?」

「ほしい物、と言うよりは、頼んでた物があって」

「頼んでた物?」

「はい。すぐ戻りますから、ちょっと待っててもらえますか?」

「ああ」


髭が頷くとリアラは店の中に入る。髭が窓の中から店の中を覗くと、リアラが店員と楽しそうに会話を交わしている。そして、店員から小さな紙袋を受け取ると頭を下げ、店から出てきた。


「お待たせしました」

「もういいのか?」

「はい、用事は済みましたから」


行きましょう、と再び手を引くリアラに首を傾げながらも、髭は歩き出した。


日も暮れ始めた頃、リアラと髭は公園にいた。子供達はすでに帰ってしまったのか、公園には二人しかいない。


「静かだな…」

「そうですね」


夕焼けが二人を照らし、二人の影が地面に写し出される。静寂に満ちた中、髭が口を開いた。


「今日はどうしたんだ?こんなところに来て…」


普段なら真っ直ぐに帰ってしまうのに、公園に寄りたいと言うなんて、何かあるのだろうか。
視線をさ迷わせると、リアラは髭を見上げて言った。


「…ダンテさん、目、閉じててくれますか?」

「ん?こうか?」

「はい。あと、ちょっと屈んでもらえれば」


首を傾げながらもリアラの言う通りに髭が少し屈むと、彼女の腕が首に回される。そして…。


「!」


チュッ、と小さなリップ音が響き、髭は驚きに目を見開く。リアラは柔らかな笑みを浮かべ、お祝いの言葉を口にした。


「Happy birthday、ダンテさん」


同時に首元にヒヤリとした感触を感じ、髭は首元に手を添える。細かな鎖を辿ると輪の形をした何かに指先が当たる。持ち上げて見ると、それは指輪だった。一周するように茨の彫刻が入り、その真ん中に薔薇の彫刻が施されている。


「それ、ダンテさんのコードネームをイメージしてみたんです。あのお店でお願いして、作ってもらいました」

「…わざわざ、これのために?」

「はい」


リアラは頷く。
もうすぐで誕生日を迎える髭に何か誕生日プレゼントを渡そうと考えていたリアラは、最近興味を持ち始めたシルバーアクセサリーに目をつけた。シンプルな物なら男の人でもつけられるだろうと考え、こういう物に詳しいネロに相談したところ、自分がよく行く店を教えてくれた。そこはオーダーメイドも承っている店で、それを聞いた時、リアラは髭のコードネーム―『トールン(茨)』をイメージした指輪を作ってもらおうと決めたのだ。


「首にかけられるように、鎖もつけてもらったんです。…どう、ですか?」


不安げに聞いてくるリアラに、髭は嬉しそうに顔を綻ばせる。


「…すごく嬉しい。ありがとな、リアラ


彼女が自分のために傾けてくれた時間が、その気持ちが嬉しい。
大切にする、と告げた髭にリアラはほっと安堵の笑みを浮かべる。


「本当ですか?よかったです…」


嬉しそうに笑う彼女に、愛しい気持ちが増していく。堪らず、髭はリアラに顔を近づけた。


リアラ

「何です…んっ」


正面にあるピンク色の唇を塞ぎ、軽いリップ音を立てながら髭は何度もキスをする。角度を変えて何度も口づけ、時々柔く食む。息苦しくなってリアラが口を開くと、隙間からするりと髭の舌が入り込んできた。


「ふあっ…はっ…」

「…ん…」


髭は驚いて縮こまるリアラの舌を絡め取り、時々軽く吸い付く。彼女の身体にスルスルと手を這わせ、大きく開いた背中部分に付いたリボンの上に手を滑らせると、崩れそうになる彼女の身体をしっかりと固定する。


「ふうっ…ふ、っ…」


しばらくリアラの唇を堪能するとゆっくりと口を離し、髭は彼女の首にかかる髪を避けて、首筋に強く吸い付いた。


「…っ!」


チリッとした痛みとともに、小さな紅い華が咲く。満足そうに笑みを浮かべ顔を離した髭にリアラは抗議する。


「…っ、こんなところで…!」

「誰もいないんだからいいだろ?」


誕生日なんだから、ちょっとくらい許してくれよ、そう言う髭にリアラは頬を染めて俯く。


「…もう…」


拗ねつつも受け入れてくれるリアラの頭を撫で、髭は彼女の手をそっと掴む。


「そろそろ帰るか」

「…その前にケーキです、誕生日なんだから、買っていかないと」


小さく付け加えたリアラに嬉しそうな笑みを見せると、髭はリアラをつれてゆっくりと歩き出す。


「もちろんショートケーキだよな」

「当たり前です、ダンテさんの好きな物なんだから」


明日からはまた闇に身を潜める生活が始まるのだろう。ならせめて、今日ぐらいは穏やかに。


「…ずっと傍にいてくれよ、リアラ

「…ダンテさんが望んでくれるなら、ずっと一緒にいます。…だから、ダンテさんもずっと傍にいてくださいね」

「…ああ」


静かに寄り添いあった二人を、夕焼けが優しく照らしていた。
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