水底巡って、味わって
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水族館に到着すると、紫乃は入館するためのチケットを二人分購入した。
そのチケットを水族館入ってすぐの入場ゲートにいる係員に提示すると、館内の施設や展示物が掲載されているパンフレットが差し出された。
広い館内は一見すると迷いそうになるが、きちんと順路として矢印の描かれた案内板があるので安心だ。
「ほー、これが水族館か」
今まで水族館に足を運ぶ用事のなかったダンテが、物珍しそうに館内を見渡す。
「本当に来たことなかったんだ……」
紫乃はダンテが水族館に来たことがないことが信じられないでいたが、今の彼を見てようやく納得した。
「廃墟にはいくらでも行ったことはあるんだがな」
悪魔退治でよく向かう場所といえば廃墟である。
「じゃあ、今日がダンテの水族館デビューだね」
紫乃がそう言って笑えばダンテも笑った。
「案内よろしく頼むぜ、darling」
「了解、任せて!」
日本の水族館なので、パンフレットや壁に取り付けられた解説用のプレートの説明文はほとんど日本語で書かれているため、ダンテにはどんな文章なのかがわからない。
一方、何度も足を運んだことのある紫乃には、何処にどんな展示物があるのかは頭に入っている。
そのため、紫乃がダンテをエスコートすることになり、二人は順路通りに進んでいった。
入場ゲート入ってすぐ前にはパノラマ大水槽があり、数多くの魚が泳いでいた。
数え切れないほどの魚の群れに、紫乃は来るたびに圧倒されている。
「ここがパノラマ大水槽で、サメなんかもいたりするんだよ」
「サメって、あのサメか?」
「うん。あ、あそこ」
巨大な水槽内の魚の群れの向こう側から泳いで姿を現したのは、3mほどもある大きなサメだった。
「シロワニって言って、見た目はちょっと怖いけどおとなしい性格みたいなの」
英語では『Sand tiger shark』と呼ばれるサメだ。
体型は流線型で太く重量感があり、背側の体色は褐色から灰色、腹側は白色をしている。
口は常に半開きになっており、サメの名を冠しているように鋭く尖った歯がずらりと並んで恐ろしい印象を受ける。
だが、そんな外見とは裏腹におとなしく温厚な性格といわれている。
「怖い顔してるな」
それにでかいと付け加えれば、紫乃もそうだねと笑った。
次に向かったのはトンネル水槽だ。
トンネル状の透明な水槽の中をくぐり、下から熱帯魚などの魚を眺める地点である。
「おー、カラフルな魚がいっぱいいるな」
「熱帯魚だね。こうして見ると、何だか自分も魚になったみたい」
紫乃が魚を眺めていると、一匹の熱帯魚がゆっくりとやってきた。
それに気付いた紫乃は、そっと人差し指を水槽に近付けて左右に動かしてやれば、熱帯魚は指を追って左右に泳ぐ。
それが楽しくてダンテにも指を差し出すように言って彼の方へ熱帯魚を誘導してみたのだが、
「あ、逃げちゃった」
もう少しでダンテの指に誘導出来たのに、熱帯魚はふいっと身を反らして何処かに行ってしまった。
「……あいつ雄だぜ、絶対」
小さな熱帯魚でも、こうもあからさまな態度を取られてしまうと、流石にダンテも傷付いた。
背も低く華奢な紫乃には愛想を振りまいたのに、長身で体格の良いダンテには近寄ることもなく一目散に逃げ去っていった。
魚も、人間の男と女がわかるのだろうか。
「でも、あの子ももったいないことしたね」
「何でだ?」
「だって、こんなにかっこいい男の人、滅多にいないのに」
慰めるようにフォローしてくれる紫乃に、ダンテは熱帯魚から受けた心の傷がすぐさま癒えていくのを感じた。
「嬉しいこと言ってくれるねぇ。魚にモテるよりよっぽどいい」
ダンテはそう言うと、紫乃と手を繋いでトンネル水槽をくぐって先の展示物へと向かった。
そのチケットを水族館入ってすぐの入場ゲートにいる係員に提示すると、館内の施設や展示物が掲載されているパンフレットが差し出された。
広い館内は一見すると迷いそうになるが、きちんと順路として矢印の描かれた案内板があるので安心だ。
「ほー、これが水族館か」
今まで水族館に足を運ぶ用事のなかったダンテが、物珍しそうに館内を見渡す。
「本当に来たことなかったんだ……」
紫乃はダンテが水族館に来たことがないことが信じられないでいたが、今の彼を見てようやく納得した。
「廃墟にはいくらでも行ったことはあるんだがな」
悪魔退治でよく向かう場所といえば廃墟である。
「じゃあ、今日がダンテの水族館デビューだね」
紫乃がそう言って笑えばダンテも笑った。
「案内よろしく頼むぜ、darling」
「了解、任せて!」
日本の水族館なので、パンフレットや壁に取り付けられた解説用のプレートの説明文はほとんど日本語で書かれているため、ダンテにはどんな文章なのかがわからない。
一方、何度も足を運んだことのある紫乃には、何処にどんな展示物があるのかは頭に入っている。
そのため、紫乃がダンテをエスコートすることになり、二人は順路通りに進んでいった。
入場ゲート入ってすぐ前にはパノラマ大水槽があり、数多くの魚が泳いでいた。
数え切れないほどの魚の群れに、紫乃は来るたびに圧倒されている。
「ここがパノラマ大水槽で、サメなんかもいたりするんだよ」
「サメって、あのサメか?」
「うん。あ、あそこ」
巨大な水槽内の魚の群れの向こう側から泳いで姿を現したのは、3mほどもある大きなサメだった。
「シロワニって言って、見た目はちょっと怖いけどおとなしい性格みたいなの」
英語では『Sand tiger shark』と呼ばれるサメだ。
体型は流線型で太く重量感があり、背側の体色は褐色から灰色、腹側は白色をしている。
口は常に半開きになっており、サメの名を冠しているように鋭く尖った歯がずらりと並んで恐ろしい印象を受ける。
だが、そんな外見とは裏腹におとなしく温厚な性格といわれている。
「怖い顔してるな」
それにでかいと付け加えれば、紫乃もそうだねと笑った。
次に向かったのはトンネル水槽だ。
トンネル状の透明な水槽の中をくぐり、下から熱帯魚などの魚を眺める地点である。
「おー、カラフルな魚がいっぱいいるな」
「熱帯魚だね。こうして見ると、何だか自分も魚になったみたい」
紫乃が魚を眺めていると、一匹の熱帯魚がゆっくりとやってきた。
それに気付いた紫乃は、そっと人差し指を水槽に近付けて左右に動かしてやれば、熱帯魚は指を追って左右に泳ぐ。
それが楽しくてダンテにも指を差し出すように言って彼の方へ熱帯魚を誘導してみたのだが、
「あ、逃げちゃった」
もう少しでダンテの指に誘導出来たのに、熱帯魚はふいっと身を反らして何処かに行ってしまった。
「……あいつ雄だぜ、絶対」
小さな熱帯魚でも、こうもあからさまな態度を取られてしまうと、流石にダンテも傷付いた。
背も低く華奢な紫乃には愛想を振りまいたのに、長身で体格の良いダンテには近寄ることもなく一目散に逃げ去っていった。
魚も、人間の男と女がわかるのだろうか。
「でも、あの子ももったいないことしたね」
「何でだ?」
「だって、こんなにかっこいい男の人、滅多にいないのに」
慰めるようにフォローしてくれる紫乃に、ダンテは熱帯魚から受けた心の傷がすぐさま癒えていくのを感じた。
「嬉しいこと言ってくれるねぇ。魚にモテるよりよっぽどいい」
ダンテはそう言うと、紫乃と手を繋いでトンネル水槽をくぐって先の展示物へと向かった。