水底巡って、味わって
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それは突如として提案された。
「日本でデートしたい」
ダンテは日本で──それも海外でも有名な観光地ではなく、紫乃の地元が良いという。
何でも、紫乃のよく行くところが見たいらしいのだ。
婚約者として気になるのだろう。
「私の地元、地方都市だけど田舎だよ?」
「紫乃の好きな場所なら何処でも構わない」
「そうねぇ……家からはちょっと離れてるんだけど、水族館や公園があるの」
「水族館か。行ったことねぇな」
「じゃあ、水族館に行きましょう。時々行ってたの」
かくして、日本でのデート場所は水族館と公園に決まったのだった。
* * *
デート当日の朝。
紫乃は弁当を作るため、日本の実家へ戻っていた。
台所のテーブルの上には少し大きめのランチボックスがあり、中には既に作り終えたサンドイッチやサラダなどが収まっている。
今はバナナブレッドという、アメリカでは一般的なイーストを使用しないクイックブレッドを焼いている最中だ。
名前の通りバナナを入れたもので、細長い型で焼き上げてカットすれば、一切れがパウンドケーキのような形になる。
バナナ以外にチョコチップとクルミも入れてみたのだが、オーブンから漂ってくる甘く香ばしい匂いに、入れて正解だと思った。
「んー……甘い」
そろそろバナナブレッドが焼き上がるのでオーブンの前に立っている紫乃の背後から、ダンテが抱きついてきた。
「このまま紫乃も食べてしまいたい」
そう言いながら、ダンテは紫乃の華奢な身体をそろりと撫でる。
彼と最後に肌を合わせたのは二日ほど前。
そろそろダンテが欲求不満で求めてきそうだと思っていたのだが、今ここで事に及ぶわけにはいかない。
「駄目よ。ダンテが日本でデートしたいって言い出したんだから」
こんな朝っぱらからは駄目だと言えば、ダンテは返す言葉もなく引き下がる。
そもそも紫乃は、ランチを作り終えるまでダンテは暇になるから事務所で待っていて欲しかったのだが、彼がどうしても一緒に来たいと希望したのだ。
ランチを作っている紫乃を見たいのだという。
その言葉通り、彼は椅子に腰掛けてテーブルに頬杖をつき、料理を作っている紫乃をずっと眺めていた。
それでも、突き放しただけでは可哀相なので、紫乃は数切れの余ったハムをダンテに差し出した。
「ほら、ハムあげるから」
朝食は既に食べているので空腹ではないのだが、ダンテは折角なのでハムをいただくことにした。
その後、焼けたバナナブレッドを冷ましてカットし、ランチボックスに詰めれば、外出の準備は万端である。
ランチボックスを専用のバッグに入れて持とうとした紫乃だったが、ダンテが代わりに持ってくれた。
「いいの?」
「荷物は俺に任せな」
「うん、ありがとう」
彼のさりげない心遣いが嬉しくて、紫乃はにこりと微笑んだ。
「日本でデートしたい」
ダンテは日本で──それも海外でも有名な観光地ではなく、紫乃の地元が良いという。
何でも、紫乃のよく行くところが見たいらしいのだ。
婚約者として気になるのだろう。
「私の地元、地方都市だけど田舎だよ?」
「紫乃の好きな場所なら何処でも構わない」
「そうねぇ……家からはちょっと離れてるんだけど、水族館や公園があるの」
「水族館か。行ったことねぇな」
「じゃあ、水族館に行きましょう。時々行ってたの」
かくして、日本でのデート場所は水族館と公園に決まったのだった。
* * *
デート当日の朝。
紫乃は弁当を作るため、日本の実家へ戻っていた。
台所のテーブルの上には少し大きめのランチボックスがあり、中には既に作り終えたサンドイッチやサラダなどが収まっている。
今はバナナブレッドという、アメリカでは一般的なイーストを使用しないクイックブレッドを焼いている最中だ。
名前の通りバナナを入れたもので、細長い型で焼き上げてカットすれば、一切れがパウンドケーキのような形になる。
バナナ以外にチョコチップとクルミも入れてみたのだが、オーブンから漂ってくる甘く香ばしい匂いに、入れて正解だと思った。
「んー……甘い」
そろそろバナナブレッドが焼き上がるのでオーブンの前に立っている紫乃の背後から、ダンテが抱きついてきた。
「このまま紫乃も食べてしまいたい」
そう言いながら、ダンテは紫乃の華奢な身体をそろりと撫でる。
彼と最後に肌を合わせたのは二日ほど前。
そろそろダンテが欲求不満で求めてきそうだと思っていたのだが、今ここで事に及ぶわけにはいかない。
「駄目よ。ダンテが日本でデートしたいって言い出したんだから」
こんな朝っぱらからは駄目だと言えば、ダンテは返す言葉もなく引き下がる。
そもそも紫乃は、ランチを作り終えるまでダンテは暇になるから事務所で待っていて欲しかったのだが、彼がどうしても一緒に来たいと希望したのだ。
ランチを作っている紫乃を見たいのだという。
その言葉通り、彼は椅子に腰掛けてテーブルに頬杖をつき、料理を作っている紫乃をずっと眺めていた。
それでも、突き放しただけでは可哀相なので、紫乃は数切れの余ったハムをダンテに差し出した。
「ほら、ハムあげるから」
朝食は既に食べているので空腹ではないのだが、ダンテは折角なのでハムをいただくことにした。
その後、焼けたバナナブレッドを冷ましてカットし、ランチボックスに詰めれば、外出の準備は万端である。
ランチボックスを専用のバッグに入れて持とうとした紫乃だったが、ダンテが代わりに持ってくれた。
「いいの?」
「荷物は俺に任せな」
「うん、ありがとう」
彼のさりげない心遣いが嬉しくて、紫乃はにこりと微笑んだ。