Tea party beyond the world
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* * *
紫乃とディーヴァが出会ってからしばらく経った。
二人は何度か出会いを繰り返すうちに仲良くなり、お茶会を開く間柄となった。
飲み物は紅茶。
お菓子は紫乃やディーヴァの作ったケーキやクッキー。
そうやって幾度目かのお茶会を経て、今日もまたお菓子を用意してディーヴァの元へ向かおうとした紫乃を、ダンテが呼び止めた。
「なあ紫乃、俺もついて行ってもいいか?」
紫乃にディーヴァとのお茶会のことは聞き及んでいたが、ダンテは参加したことはない。
お茶会の時は寝ていたので、今まで同行したことがないのだ。
「若い時の俺を見てみたいんだ」
世界軸の違うパラレルワールドならば、同じ人物が同じ世界にいてもきっと問題ないはず。
ダンテはそう考え、同行を願い出たのだ。
「大丈夫だと思うけど……」
「んじゃ、早く行こうぜ」
紫乃はダンテに肩を軽くポンポンと叩かれながら『ゲート』を開いた。
* * *
「今日、紫乃って女が来るんだろ? オレも混ぜてくれよ」
一方、若い方のダンテもディーヴァに提案を持ちかけていた。
「いいと思うけど、おとなしくしててよ?」
「何だよ。まるでオレが騒がしい奴みたいじゃねぇか」
「『みたい』はいらないと思うの」
「ひでぇ!」
リビングでお茶会の準備をしているディーヴァのそばからダンテは離れなかった。
やはりこちらのダンテもお茶会が開催される日中は寝ていたため参加出来ずにいたが、今日こそは、と早起きして紫乃が来るのを待っているのだ。
紅茶の葉や砂糖などをディーヴァが確認し終えた時、『ゲート』が出現し、待っていた人物が現れた。
しかし、彼女の後ろから出てきた人物に、ディーヴァはもちろん若いダンテもあんぐりと口と開ける。
血のように赤いコート、ウェスタンを思わせるパンツ、そして何よりも目を引く銀髪。
「ほおー、懐かしいな」
不精髭の生えた顎をさすりながら、赤いコートの男はリビングだけでなく事務所フロアをぐるりと見回した。
「おー、ジュークボックスもちゃんとあるな。くしゃみで店崩壊させちまったのもいい思い出だ」
うんうんと一人で昔を懐かしんでいる男に、東洋人の女が「どんだけ強いくしゃみしたのよ」と少し呆れている。
「紫乃さん、いらっしゃい。えっと、そちらの方は……」
ディーヴァが遠慮がちに声をかけると、『ゲート』より現れた二人が同時にディーヴァへ顔を向ける。
「お邪魔します。彼が私の世界のダンテよ」
「わ、本当に?そうだよね、銀髪で赤いコート着てるんだからダンテだよね」
「オレ以外のダンテ……?」
納得しているディーヴァの隣で、若いダンテがじっと年上の自分を凝視していた。
「よう、若い俺」
年上のダンテは笑みを浮かべた。
「えっ、もしかしてこいつ、未来のオレ!?」
「そういうこと」
驚く若いダンテの言葉に頷いたのは、紫乃でもなくディーヴァでもなく、年上のダンテだった。
(で……でけぇ……)
背丈はあまり変わらないのに、筋肉のついたがっしりとした体格のせいで変な威圧感がある。
若いダンテは年上のダンテをじっくりと眺めた。
特徴的な銀髪はサラサラとして、瞳は鋭さを内に秘めたアイスブルー。
黒いインナーから覗く首筋と鎖骨が年相応の色気を醸し出しており、七部袖から出た太い腕は同じ男から見ても逞しい。
そして何よりも自分にないものがある。
それは、
「……髭が生えてる」
顎に短く生えた不精髭を食い入るように見つめる。
「何で剃らねぇんだ?」
「毎日は面倒だからな」
ああ、うん、この怠けっぷりは間違いなく自分だ。
若いダンテはそう確信した。
それから四人はしばらく談話したのち、紫乃とディーヴァはお茶会をすることにした。
二人のダンテも参加したいと申し出たのだが、「女子会だから」と言われて拒否されてしまった。
もちろん抗議したのだが、用意されたお菓子を分け与えたらすんなりと了承してしまう。
案外ちょろいものだ、と女性二人はこっそり苦笑した。