「無理しなくていいんだよ？
　美味しくないと食事の意味なんてないんだし、ね？
　好き嫌い位あってもいいじゃない。」
「いやだ！
　逢夏が作ったものなんだ、…食べる。」

テーブルの上にはタコを使った料理ばかり。
出来るだけ、揚げたり、炒めたりして食べやすいようにした…つもりなのだが
本当に食べやすいかは既に慣れの感覚を持った自分には分かるはずもなく…。

ただ
『私が作ったものだから』と
えづきそうになるのを堪えながら、頑張ってたべてくれようとするネロを見ると

可愛いやら、愛しいやら、…面白いやら
もっともっと…今以上に好きになっていくのだから。
この国の食文化に感謝してもしたりないくらいで。

「ネロ。」
「なんだよ。」
「ありがと。」
「…別に。」

明日はネロの大好物を作って笑顔にしてあげたいと思った。

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と、この国の食文化に感謝したつもりだったのだけれど
そう言えば、私は私でこの国の食文化で理解しがたい一品があることを思い出した。
それは

「ほら、食べてみろよ。」
「いや！
　そんなの食べたら、絶対に体悪くなっちゃう！」
「んなことないって。
　だって材料は全部知ってるもんだろ？」
「そうだけど、…そうだけど！」

ネロに手渡された食べ物は確かに言われた通り、小麦粉、シナモン、ナッツ、シュガーと珍しくない材料で作られたお菓子。

だけれど、まごう事なき…『死の一皿』。
永遠の敵、ジャンクフード。

「…食べなきゃ、だめ？」
「全部とは言わないけど。」

ネロと私の基礎代謝の違いから説明すれば、分かってくれる？
と、淡い期待を持って…だけど、あの時のネロの姿を見てしまった以上

「一口だけ、ね？」

食べない。
という選択肢などどこにもなかった。