雑誌と恋人
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「……変わった女だな」
コーデリアが去るとマハが口を開いた。
変わっているといえば自分もそうなのだが、と内心呟くが、見上げた主人の顔は意外にもすっきりとしていた。
「でも、凄く綺麗で、素敵な人」
「ところで、あやつはどうするのだ」
マハが振り返った先には、ソファーで酔い潰れるダンテがいた。
仲直りをするにしても、彼が起きないと話にならない。
どうしたものかと紫乃が考えあぐねていると、マハが一つの提案を持ち出してきた。
「そうだ。未遂とはいえ、ダンテはあの女に迫っていたのだったな。そこを責めてやれば良い」
「責め……?」
マハの提案はこうだ。
酔っ払ったダンテがコーデリアに迫り、キスをしようとしていたところを目撃した。
本当は未遂なのだが、そこを実際にキスをしたという話にして、ダンテに反省を求めようというわけだ。
「未だにツケを残し、先程の代金も主が出したのだから、かまをかけるくらい安いものだろう」
「あ、悪魔の囁きだわ……」
「悪魔だからな」
かくして、提案は実行に移すこととなった。
* * *
ダンテが目を覚ましたのは、正午を二時間も過ぎた頃だった。
深い眠りからゆっくりと浮上する感覚ののち、まぶたが開く。
起き上がろうと腕に力を込めて上半身を起こそうとした時、
「いっ……てぇ……」
酷い頭痛に襲われた。
この痛みは過去に経験がある。
酒を浴びるように飲み、酔い潰れたあとに来る二日酔いというものだ。
そういえば深夜、ラブプラネットでアルコール度数が高めの酒を多く飲んでいたことを思い出す。
低く唸るような声を絞り出しながら再びソファーに突っ伏すと、小さな足音が聞こえた。
「ダンテ」
聞き慣れたその声は紫乃のものだ。
顔を上げれば、いつになく真剣な表情の紫乃が立っていた。
ダンテは頭痛を堪えながら起き上がり、ソファーに座り直す。
「あー……紫乃か、どうした」
気だるい様子で、声を発するのも億劫だと言わんばかりのダンテであったが、不快さを堪えて紫乃の用件を聞くことにした。
「明け方、ダンテがラブプラネットの人としてるの見ちゃったの」
「……?」
紫乃の言っている意味がわからず、ダンテは首を傾げる。
確かにラブプラネットには行ったが、『してる』というのはどういう意味なのだろう。
「……どういう意味だ?」
「女の人と……キス、していたでしょう」
「……何だって?」
言われて、ダンテはおぼろげな記憶を辿った。
そういえば、ラブプラネットに入ってからすぐにコーデリアがやって来た。
それからはずっと酒を飲み続け、いつの間にか閉店時間が迫っていたので店を出た。
事務所までコーデリアが付き添ってくれたような気もするが、酔っていたせいで記憶が曖昧だ。
(って、キス? 俺が、あの店の女と?)
コーデリアが事務所まで送ってくれたと思うが、そのあとは紫乃が来て、紫乃にキスしようとしたはずでは。
「俺は紫乃にキスしたと思ったんだが……」
頭痛に顔を歪ませてそう言えば、紫乃が困惑した表情を見せた。
「私の名前呼びながらコーデリアさんとキスしていたくせに」
「何、だって?」
「私とするより、その人とする方がいいのね。そうだよね、私よりも綺麗で魅力的だし……ダンテの好みのタイプそうだし」
「ちょっと待ってくれ」
「私よりもコーデリアさんの方が、お似合いだと思う」
「おい」
「コーデリアさんもダンテのこと好きだって言ってたし」
──いやいや、マジで何言ってんだよ。
自分よりもコーデリアの方がお似合い?
相手から好意を寄せられるのは嬉しいが、今はそういうことは関係ない。
頭の中が混乱しているダンテを尻目に、紫乃は背中を向けてさらなる一言を言い放った。
「私、ダンテと別れようと思うの」
ダンテは言葉を失った。
二日酔いの頭痛と曖昧な記憶によって混乱状態だが、紫乃の言葉ははっきりと聞き取れたし、その意味も理解出来た。
別れる。
つまり、恋人関係をオフにして赤の他人同士になるということだ。
冗談じゃない。
「だからダンテはコーデリアさんと──」
「待てって言ってるだろ!」
ダンテはソファーから立ち上がると紫乃を自分の方へ引き寄せ、後ろから抱き締めた。
「俺の話も聞かないで、一人でさっさと進めるなよ。俺は別れる気なんてないからな。紫乃と別れるなんて……考えたくもない」
「……でも、コーデリアさんと随分仲良さそうに見えたわ」
「それは……」
否定しようとしたが、コーデリアと親しいことは事実なので完全に否定出来なかった。
どう説明しようか考えあぐねていると、紫乃が顔を俯かせて寂しそうに口を開いた。
「……言えないってことは、やっぱり……」
「違う、違うんだ」
どうやら紫乃は、コーデリアとは男女の関係にあると思っている。
その誤解を解かなければいけない。
コーデリアが去るとマハが口を開いた。
変わっているといえば自分もそうなのだが、と内心呟くが、見上げた主人の顔は意外にもすっきりとしていた。
「でも、凄く綺麗で、素敵な人」
「ところで、あやつはどうするのだ」
マハが振り返った先には、ソファーで酔い潰れるダンテがいた。
仲直りをするにしても、彼が起きないと話にならない。
どうしたものかと紫乃が考えあぐねていると、マハが一つの提案を持ち出してきた。
「そうだ。未遂とはいえ、ダンテはあの女に迫っていたのだったな。そこを責めてやれば良い」
「責め……?」
マハの提案はこうだ。
酔っ払ったダンテがコーデリアに迫り、キスをしようとしていたところを目撃した。
本当は未遂なのだが、そこを実際にキスをしたという話にして、ダンテに反省を求めようというわけだ。
「未だにツケを残し、先程の代金も主が出したのだから、かまをかけるくらい安いものだろう」
「あ、悪魔の囁きだわ……」
「悪魔だからな」
かくして、提案は実行に移すこととなった。
* * *
ダンテが目を覚ましたのは、正午を二時間も過ぎた頃だった。
深い眠りからゆっくりと浮上する感覚ののち、まぶたが開く。
起き上がろうと腕に力を込めて上半身を起こそうとした時、
「いっ……てぇ……」
酷い頭痛に襲われた。
この痛みは過去に経験がある。
酒を浴びるように飲み、酔い潰れたあとに来る二日酔いというものだ。
そういえば深夜、ラブプラネットでアルコール度数が高めの酒を多く飲んでいたことを思い出す。
低く唸るような声を絞り出しながら再びソファーに突っ伏すと、小さな足音が聞こえた。
「ダンテ」
聞き慣れたその声は紫乃のものだ。
顔を上げれば、いつになく真剣な表情の紫乃が立っていた。
ダンテは頭痛を堪えながら起き上がり、ソファーに座り直す。
「あー……紫乃か、どうした」
気だるい様子で、声を発するのも億劫だと言わんばかりのダンテであったが、不快さを堪えて紫乃の用件を聞くことにした。
「明け方、ダンテがラブプラネットの人としてるの見ちゃったの」
「……?」
紫乃の言っている意味がわからず、ダンテは首を傾げる。
確かにラブプラネットには行ったが、『してる』というのはどういう意味なのだろう。
「……どういう意味だ?」
「女の人と……キス、していたでしょう」
「……何だって?」
言われて、ダンテはおぼろげな記憶を辿った。
そういえば、ラブプラネットに入ってからすぐにコーデリアがやって来た。
それからはずっと酒を飲み続け、いつの間にか閉店時間が迫っていたので店を出た。
事務所までコーデリアが付き添ってくれたような気もするが、酔っていたせいで記憶が曖昧だ。
(って、キス? 俺が、あの店の女と?)
コーデリアが事務所まで送ってくれたと思うが、そのあとは紫乃が来て、紫乃にキスしようとしたはずでは。
「俺は紫乃にキスしたと思ったんだが……」
頭痛に顔を歪ませてそう言えば、紫乃が困惑した表情を見せた。
「私の名前呼びながらコーデリアさんとキスしていたくせに」
「何、だって?」
「私とするより、その人とする方がいいのね。そうだよね、私よりも綺麗で魅力的だし……ダンテの好みのタイプそうだし」
「ちょっと待ってくれ」
「私よりもコーデリアさんの方が、お似合いだと思う」
「おい」
「コーデリアさんもダンテのこと好きだって言ってたし」
──いやいや、マジで何言ってんだよ。
自分よりもコーデリアの方がお似合い?
相手から好意を寄せられるのは嬉しいが、今はそういうことは関係ない。
頭の中が混乱しているダンテを尻目に、紫乃は背中を向けてさらなる一言を言い放った。
「私、ダンテと別れようと思うの」
ダンテは言葉を失った。
二日酔いの頭痛と曖昧な記憶によって混乱状態だが、紫乃の言葉ははっきりと聞き取れたし、その意味も理解出来た。
別れる。
つまり、恋人関係をオフにして赤の他人同士になるということだ。
冗談じゃない。
「だからダンテはコーデリアさんと──」
「待てって言ってるだろ!」
ダンテはソファーから立ち上がると紫乃を自分の方へ引き寄せ、後ろから抱き締めた。
「俺の話も聞かないで、一人でさっさと進めるなよ。俺は別れる気なんてないからな。紫乃と別れるなんて……考えたくもない」
「……でも、コーデリアさんと随分仲良さそうに見えたわ」
「それは……」
否定しようとしたが、コーデリアと親しいことは事実なので完全に否定出来なかった。
どう説明しようか考えあぐねていると、紫乃が顔を俯かせて寂しそうに口を開いた。
「……言えないってことは、やっぱり……」
「違う、違うんだ」
どうやら紫乃は、コーデリアとは男女の関係にあると思っている。
その誤解を解かなければいけない。