Tea party beyond the world
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──ああ、だから胸がざわめいていたのか。
悪魔と対する存在は天使である。
悪魔は貪欲に天使を狙い、天使は悪魔を清浄なる力で退ける。
自身の中に悪魔の血が流れているので、紫乃はディーヴァと出会ってから胸のざわめきを感じていたのだ。
だが、悪魔は天使を襲うのだろうが、紫乃にはディーヴァを襲おうなどという衝動は生まれなかった。
別の世界軸の住人だからだろうか。
それにしても、とディーヴァは心の中で眉をひそめた。
天使の血族なのだから天使の力を持ち、力が発動すれば翼を出せるが、それは自分の意志ではコントロールすることが出来ず、感情が高ぶった時でないと翼は出せない。
最近は翼を出したこともないので、紫乃の持っている羽根が自分の一部であるとは言えない。
だから何故天使の力を有し、同時に魔力も有する羽根があるのだろうかと疑問が浮かんだ。
何かの偶然で、天使と悪魔の力を有した羽根が発生したのだろうか。
「へえ、ディーヴァちゃん天使なんだ。可愛いし、何だか納得」
「そ、そんなことは……」
可愛いと言われてディーヴァは気恥ずかしそうに首を横に振った。
「うーん、それにしてもこれはどういうことかしら……」
紫乃は顎に手を当てて考え込む。
この店は自分のいたスラム街と同じ場所にあり、外の景色や建物は多少の違いはあるが、やはりここは『Devil May Cry』だ。
店内の様相にも差があり、何より一番の差はダンテの年齢だ。
自分の恋人は三十代後半だが、ディーヴァの知るダンテはまだまだ若いという。
『ゲート』で通り抜けた先は確かにアメリカのスラム街にある『Devil May Cry』なのだが、紫乃の知る『Devil May Cry』ではない。
同じような世界──つまり、パラレルワールドに迷い込んでしまったのかもしれない。
「パラレルワールドって奴かしら?」
「並行世界、かぁ」
紫乃がいた世界と並行して存在するのが、今いる世界──パラレルワールドなのだろうか。
ディーヴァにとっては、異なる世界の住人である紫乃が自分の世界にやって来たことになる。
「……あんまり深く考え込んでも仕方ないわね。悪魔がいて、天使もいるんだもの。パラレルワールドに迷い込むこともあるわ」
紫乃は意外とあっさりと現実を受け入れ、明るく笑った。
「ねえ、こちら側のダンテはいるの?」
「今寝てるんだけど……ちょっと見る?」
やはり日中はどちらのダンテも就寝中らしい。
ディーヴァが少し悪戯っぽく笑ったので、紫乃は彼女の言葉に甘えてダンテの部屋へ向かった。
人間より五感が優れているダンテが足音で起きてしまわないよう、そろりと静かに階段を上っていく。
ドアを開けて気配を殺したまま室内へと進入する。
服などがあちこちに乱雑に放置された部屋は、紫乃の知るダンテと同じだ。
大きなベッドには一人の男性が寝転がっていた。
二人でそっとベッドに近付く。
上半身裸で寝る銀髪の男。
その点は紫乃の知るダンテと変わりなかったが、明らかに今目の前にいるダンテの方が若かった。
それにスレンダーというか、基礎となる骨格は頑丈そうなのだが、筋肉量が違っていた。
「若いなぁ」
小さな声で紫乃が呟けば、ディーヴァはうふふと笑った。
起きている時は悪戯好きな表情を見せるダンテは今、両目を閉じてすやすやと眠っている。
その寝顔は、普段の彼からは想像出来ないくらいにあどけない。
「寝顔が子供みたい」
「そうね」
二人で顔を合わせて笑っていると、ダンテが小さく身じろぎした。
このまま部屋に居続ければ起こしてしまうだろう。
二人は来た時と同じように足音を立てないように退室した。
それから二人は少し話し込んでいたが、紫乃がふと時計を見れば、時刻は十七時を過ぎていた。
「やだ、もうこんな時間……ねえ、こちらの時間も同じかしら?」
「うん、同じ時間」
ディーヴァも時計を確認した。
突如として慌て始めた紫乃にどうしたのかと尋ねれば、行きつけのスーパーでタイムセールが始まるのだという。
「早く向こうに戻らないと……」
言うや否や、紫乃はソファーから立ち上がって『ゲート』を開く。
「紅茶ありがとう、美味しかったわ。また来てもいいかしら?」
「もちろん!」
「今度は私が何かお菓子作って持ってくるから」
紫乃はそう言い残すと、『ゲート』を通って自分の世界へ戻っていった。
その手には羽根が握られていた。
羽根があれば、きっと次もこの世界を訪れることが出来るのだろう。
ディーヴァは『ゲート』が閉じられるまで手を振っていた。
「……ふああ……あー、よく寝た……」
『ゲート』が完全に閉じてから、二階から聞き慣れた声がしたのでディーヴァは上を見上げる。
「おはよう、ダンテ」
「おはよ……ん、誰か来てたのか?」
テーブルにある二つのティーカップに気付いたダンテが首を傾げると、ディーヴァはにこりと微笑んだ。
「うん。別の世界からのお客様」
「……は?」
悪魔と対する存在は天使である。
悪魔は貪欲に天使を狙い、天使は悪魔を清浄なる力で退ける。
自身の中に悪魔の血が流れているので、紫乃はディーヴァと出会ってから胸のざわめきを感じていたのだ。
だが、悪魔は天使を襲うのだろうが、紫乃にはディーヴァを襲おうなどという衝動は生まれなかった。
別の世界軸の住人だからだろうか。
それにしても、とディーヴァは心の中で眉をひそめた。
天使の血族なのだから天使の力を持ち、力が発動すれば翼を出せるが、それは自分の意志ではコントロールすることが出来ず、感情が高ぶった時でないと翼は出せない。
最近は翼を出したこともないので、紫乃の持っている羽根が自分の一部であるとは言えない。
だから何故天使の力を有し、同時に魔力も有する羽根があるのだろうかと疑問が浮かんだ。
何かの偶然で、天使と悪魔の力を有した羽根が発生したのだろうか。
「へえ、ディーヴァちゃん天使なんだ。可愛いし、何だか納得」
「そ、そんなことは……」
可愛いと言われてディーヴァは気恥ずかしそうに首を横に振った。
「うーん、それにしてもこれはどういうことかしら……」
紫乃は顎に手を当てて考え込む。
この店は自分のいたスラム街と同じ場所にあり、外の景色や建物は多少の違いはあるが、やはりここは『Devil May Cry』だ。
店内の様相にも差があり、何より一番の差はダンテの年齢だ。
自分の恋人は三十代後半だが、ディーヴァの知るダンテはまだまだ若いという。
『ゲート』で通り抜けた先は確かにアメリカのスラム街にある『Devil May Cry』なのだが、紫乃の知る『Devil May Cry』ではない。
同じような世界──つまり、パラレルワールドに迷い込んでしまったのかもしれない。
「パラレルワールドって奴かしら?」
「並行世界、かぁ」
紫乃がいた世界と並行して存在するのが、今いる世界──パラレルワールドなのだろうか。
ディーヴァにとっては、異なる世界の住人である紫乃が自分の世界にやって来たことになる。
「……あんまり深く考え込んでも仕方ないわね。悪魔がいて、天使もいるんだもの。パラレルワールドに迷い込むこともあるわ」
紫乃は意外とあっさりと現実を受け入れ、明るく笑った。
「ねえ、こちら側のダンテはいるの?」
「今寝てるんだけど……ちょっと見る?」
やはり日中はどちらのダンテも就寝中らしい。
ディーヴァが少し悪戯っぽく笑ったので、紫乃は彼女の言葉に甘えてダンテの部屋へ向かった。
人間より五感が優れているダンテが足音で起きてしまわないよう、そろりと静かに階段を上っていく。
ドアを開けて気配を殺したまま室内へと進入する。
服などがあちこちに乱雑に放置された部屋は、紫乃の知るダンテと同じだ。
大きなベッドには一人の男性が寝転がっていた。
二人でそっとベッドに近付く。
上半身裸で寝る銀髪の男。
その点は紫乃の知るダンテと変わりなかったが、明らかに今目の前にいるダンテの方が若かった。
それにスレンダーというか、基礎となる骨格は頑丈そうなのだが、筋肉量が違っていた。
「若いなぁ」
小さな声で紫乃が呟けば、ディーヴァはうふふと笑った。
起きている時は悪戯好きな表情を見せるダンテは今、両目を閉じてすやすやと眠っている。
その寝顔は、普段の彼からは想像出来ないくらいにあどけない。
「寝顔が子供みたい」
「そうね」
二人で顔を合わせて笑っていると、ダンテが小さく身じろぎした。
このまま部屋に居続ければ起こしてしまうだろう。
二人は来た時と同じように足音を立てないように退室した。
それから二人は少し話し込んでいたが、紫乃がふと時計を見れば、時刻は十七時を過ぎていた。
「やだ、もうこんな時間……ねえ、こちらの時間も同じかしら?」
「うん、同じ時間」
ディーヴァも時計を確認した。
突如として慌て始めた紫乃にどうしたのかと尋ねれば、行きつけのスーパーでタイムセールが始まるのだという。
「早く向こうに戻らないと……」
言うや否や、紫乃はソファーから立ち上がって『ゲート』を開く。
「紅茶ありがとう、美味しかったわ。また来てもいいかしら?」
「もちろん!」
「今度は私が何かお菓子作って持ってくるから」
紫乃はそう言い残すと、『ゲート』を通って自分の世界へ戻っていった。
その手には羽根が握られていた。
羽根があれば、きっと次もこの世界を訪れることが出来るのだろう。
ディーヴァは『ゲート』が閉じられるまで手を振っていた。
「……ふああ……あー、よく寝た……」
『ゲート』が完全に閉じてから、二階から聞き慣れた声がしたのでディーヴァは上を見上げる。
「おはよう、ダンテ」
「おはよ……ん、誰か来てたのか?」
テーブルにある二つのティーカップに気付いたダンテが首を傾げると、ディーヴァはにこりと微笑んだ。
「うん。別の世界からのお客様」
「……は?」