「私、泳いだことありませんよ？」

「一度もか？」

「一回二回は依頼で泳がざるをえないことはありましたけど…」

「じゃあ、大丈夫だろ。それに、泳ぎ方なら俺達が教えるさ」

「ダンテさん達、水着持ってるんですか？」

「いや。けど、今から店行って買ってくればいいだろ」

「…いつ行くんですか？」

「明日」


きっぱりと言う髭に、リアラはため息をつく。


「初代とバージルがいませんけど、どうするんですか？」

「なら、帰ってきてからわけを話して行けばいい」

「夕ご飯どうするんですか？」

「外食でいいだろ」

「よくないです。そんなにお金はありません」


そう言うと、リアラは向かいで顔をしかめているネロに話しかける。


「ネロ、今日の夕ご飯作れるくらいの材料は残ってる？」

「ああ。トマトの缶詰と挽き肉があるから、パスタくらいなら作れる」

「じゃあ、今日はパスタにしよう。レタスとかあったら、サラダも作ろうか」


まるで主婦のようなやりとりを交わして、リアラは髭に向き直る。


「と言うことで、夕ご飯はここで食べます。今日は早めに作りますから、食べてからみんなで買い物に行ったらいいじゃないですか」


リアラの言葉に、髭は目を瞬かせる。


「…じゃあ、行くってことでいいのか？」

「いいですよ。若もネロも行きたいって言ってるし」

「よっしゃー！海だ海！なあ、ビーチボールとかも買っとこうぜ！」

「馬鹿みたいにはしゃいで、お前はガキか」


はしゃぐ若に呆れたように突っ込むネロも本当は楽しみなのだろう、心なしか目が輝いている。それを優しい目で見守る二代目。


「楽しみだな」

「はい」


髭の言葉に頷き、内心興奮でドキドキしながら、リアラは明日に思いを馳せた。