「それ以上触るな」

「あいてっ！」


背後から声がしたかと思うと、上から手刀が降ってきて、若の頭に直撃する。ゴッ、と鈍い音が響き、痛みに若が頭を抑えたと同時に、逞しい腕がリアラの身体を包み込んだ。
リアラは顔を上げる。


「ただいま、リアラ」

「ダンテさん」


声の主は髭だった。よく見ると二代目もいる。どうやら二人共、依頼を終えて帰ってきたらしい。
リアラは微笑む。


「お帰りなさい。二代目もお帰りなさい」

「ああ」

「早かったですね。もう終わったんですか？」

「大した奴じゃなかったからな。帰りにちょうど二代目と会って、一緒に帰ってきた」

「そうですか、お疲れ様です。よかったら何か飲みますか？」

「じゃあ頼む」

「はい。二代目の分も持ってきますね」

「すまない」

「いいえ」


にっこりと笑うと、リアラはキッチンへとかけていく。
二人がソファに座ると、拗ねたように若が呟いた。


「いいところだったのに…」

「明らかに泣きそうになってただろ。いい加減、限度を覚えろ」


髭は呆れたように言うと、ソファの背もたれに身体を預ける。
リアラは恥ずかしさや困惑が限界を突破すると泣いてしまう癖がある。異性からのスキンシップの時が顕著で、一緒に生活しているダンテ達に対してもその癖が出てしまう。
それを理解しているため、皆必要以上に過剰なスキンシップは取らないのだが、若はその辺りを理解していないらしく、いつもスキンシップが過剰になる。そのため、リアラが泣いてしまうことも度々あり、その都度みんなに注意されているのだ。


「しょうがねぇだろ、暑いんだから」

「あのなぁ、そんなこと言って毎度毎度俺等がリアラに抱きついてたら、あいつがぶっ倒れるだろ」

「じゃあどうすんだよ、他に方法あんのかよ」

「そうだなあ…」


口元に手を当て、髭が考え始めた時、リアラがキッチンから戻ってきた。