lingering scent(君の移り香)
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「ディーヴァ」
「んっ……ダンテ、そこで喋らないで。モワッと熱くて、くすぐったい……んん!」
「ディーヴァ。いい匂いだ」
ダンテは身体を捩るディーヴァをいとも簡単に制すると、ネグリジェの上から豊かな乳房を軽く食む。
「ん! ダンテってば!」
「ああ、柔らかい。おまけに甘くてマシュマロみたいだ」
「もう遅いんだから寝るよ! か、噛まないでって!」
「無理だ。止まらない。ちょっと失礼」
カプカプと甘く噛み続けていたダンテは、喉を逸らして抵抗するディーヴァを間違っても逃さぬように己の身体の下に彼女を仕舞い込んだ。
尚も腕を突っ張って押し返そうとするディーヴァの手を退けて、驚かさないようにまずは額に口付ける。
「なぁディーヴァ。オレはまだ……臭いがするような気がするんだ」
「ん……してないよ。本当にどうしちゃったの」
「アイツらの恨みが篭った暗い臭い……もしかしたらそれはオレ本来の臭いかもしれないから」
「ダンテ……」
笑っているのにどうしてか泣きそうに見える。
男だから涙なんて簡単には見せないが、ディーヴァには分かる。
不安なのだ。
臭いが同化していく。
地べたを這い、卑しく残忍な悪魔と同じ仄暗い饐えた臭い。
「ディーヴァ……オレの臭い、取って。ディーヴァの匂いにして」
吐息も身動きすると感じる香りも、少しも不快な色はないというのに。
ディーヴァは肯定するまで目線を切ることができない哀れなダンテの頬に触れ、こっくりと深く頷いた。
「うん、わかった。あたしの匂い移してあげる。ダンテ……おいで?」
「ディーヴァ……!」
優しい彼女に衝動的な思いが弾けそうになる。
まずは添えられたお人好しの細い手首を噛んで、滲む芳醇な血を身体中に擦り付けようか。
そうすればチャチな憂いなど恐らくすぐに消失するだろう。
しかし無意識に舌を這わせて薄い血管に犬歯を置いたところで己の愚行にハッとする。
それでは危惧して嫌悪した悪魔そのものではないかと。
「ごめん……無遠慮にやらかすところだった」
「い、いいよ。それでダンテが安心するなら」
硬く目を瞑りながらもズイと手を差し出し続けるディーヴァ。
怖いに決まっている。
それでも懸命に恐怖を飛び越えてくる可愛い恋人の姿に少しずつ暗闇が取り払われるような気がして。
「ディーヴァ、ごめん。目を開けて。痛くなんてしないから」
「大丈夫!! 一思いにガブッてやって!」
「やんないって。ディーヴァ、目ェ開けろ」
「うう……」
そうは言っても普段のダンテの突拍子もない言動を考慮すれば、代わりに何をしてくるのか分かったのものではない。
「じゃあどうすればいいの? こうやってギュッてしていればいい?」
何よりも恥ずかしい行為をさせられるのはごめんである。
ディーヴァは先手を打ってもう一度ダンテの頭を抱えて、彼を力一杯抱きしめた。
「うぶー……ああ最高。いや……でもな、ディーヴァ。どうせならディーヴァの他の液体にしようかと。いつもたっぷり溢れる愛液とかで……うっ、く、苦しい……ディーヴァちゃん! 待て息が……!!」
「下ネタじゃないの! 心配して損した! 寝る!」
猥語を紡ぐ銀髪の頭を窒息させるつもりで抱き潰したディーヴァは、緩んだダンテの腕をすり抜けて毛布を全て巻き取って頭から被る。
「ディーヴァさぁん……そりゃないって。寒いんですけど」
「勝手に風邪引いて下さい。あたしは寝ます」
「ツレないなぁ……まぁそういうトコも大好きなんだけど」
交渉の余地がなくなってしまったディーヴァ蓑虫相手にダンテは軽い溜め息を漏らすと、無理強いをせずにそのまま仰向けになる。
ダンテの表情は笑顔のまま。
この男は分かっているのだ。
彼女はすぐに見るに見かねて温かい毛布を開けて、照れながらも迎え入れてくれるはずなのだ。
案の定。
「……」
「……」
「……」
「……ダンテ、ホントに風邪引くよ?」
「んー……しょうがないんだよ。お姫様のご機嫌を損ねちまったからな」
「ばか」
「うん。知ってる」
「風邪引いたら色々大変なんだからね! 看病だって楽じゃないんだから」
もぞり。
ディーヴァが振り向く。
「じゃあ許してくれるか?」
ダンテも振り向く。
「……許さないけど。可哀想だから」
「入れてくれる?」
「特別にね」
「やりぃ」
屈託なく笑ったダンテは広げられた毛布の中に滑り込む。
「うわっ……冷たいなぁもう」
「オレはあったかい」
ダンテの冷えた上半身を擦って、それからトントンと優しく背中を叩く。
「ねんねーこ……ねんねーこ」
「お、そうきたか。無理矢理にでも寝かしつけるパターンね。無駄だから、それ」
「もうっ……こうやってくっついて大人しく寝たら匂いも移るでしょ! Good night! Sweet dreams!!」
「色気ねぇなぁ」
クツクツと喉で笑ったダンテだが、これ以上押してもウサギは逃げると判断した。
「分かった分かった。もう寝るから、最後に……キスしてくれないか? ディーヴァから」
つんつんと自分の唇を指でつつく。
その長い指と薄く形のいい唇に釘付けになったディーヴァだが、彼女には妖艶な笑みを浮かべて流れるようなキスを送ることなど恥ずかしくて出来ない。
寧ろこの男は素直に『はいおやすみ』と言えないのかと恨めしく思うが、曲がりなりにも何かに傷ついて帰ってきた事に変わりはない。
キスくらいなら。
それで彼の心が満たされるなら。
いや。きっとそれでは済まされない。
眠れぬ夜の火蓋が切って落とされるに決まっている。
それは充分に理解しているのに。
バカだ。
誰がって?
二人ともだ。
「もう……ダンテなんて知らない」
「ディーヴァ……ん」
ふに、と柔らかくまっすぐに押し付けた唇はあっという間にダンテに深く飲まれていく。
言わんことはない。
「んっ……んん」
「ディーヴァ……ディーヴァ、好きだ。もっと……もっとして」
「ダ、ンテ……んぅ」
施され。
解かれ。
導かれ。
この男はどこまでも狡くて甘い。
そんなに香りが欲しいならいくらでも持っていけばいいのにと、ディーヴァも早々に抵抗をやめてしまう。
けれども息継ぎくらいはさせて欲しいと眉間に皺を寄せると、ダンテは名残惜しそうに少しだけ隙間を作る。
「はぁっ……ねぇ、ダンテ。あたし……ダンテの匂い大好きだよ。変な臭いなんてしたことない。心配することなんて、何にもないんだから」
跳ねる吐息に乗せたその言葉は、香りなどより鮮烈にダンテの身体に染み渡る。
────ああ、だから彼女が好きだ。
彼女を愛して愛して、狂ってしまいそう。
「……ありがとう」
しかしやっとの事で口に出せたのは、それこそ露ほどにも色気のない感謝の言葉。
ダンテはそれきり黙って、満足そうに笑う彼女の肌をゆっくりと外気に晒していく。
朝日が差し込む頃には間違いなく、渇望した彼女の香りが身体のそこかしこに感じられるはず。
移し移され。悪魔と天使。
愛し君のlingering scent……
「んっ……ダンテ、そこで喋らないで。モワッと熱くて、くすぐったい……んん!」
「ディーヴァ。いい匂いだ」
ダンテは身体を捩るディーヴァをいとも簡単に制すると、ネグリジェの上から豊かな乳房を軽く食む。
「ん! ダンテってば!」
「ああ、柔らかい。おまけに甘くてマシュマロみたいだ」
「もう遅いんだから寝るよ! か、噛まないでって!」
「無理だ。止まらない。ちょっと失礼」
カプカプと甘く噛み続けていたダンテは、喉を逸らして抵抗するディーヴァを間違っても逃さぬように己の身体の下に彼女を仕舞い込んだ。
尚も腕を突っ張って押し返そうとするディーヴァの手を退けて、驚かさないようにまずは額に口付ける。
「なぁディーヴァ。オレはまだ……臭いがするような気がするんだ」
「ん……してないよ。本当にどうしちゃったの」
「アイツらの恨みが篭った暗い臭い……もしかしたらそれはオレ本来の臭いかもしれないから」
「ダンテ……」
笑っているのにどうしてか泣きそうに見える。
男だから涙なんて簡単には見せないが、ディーヴァには分かる。
不安なのだ。
臭いが同化していく。
地べたを這い、卑しく残忍な悪魔と同じ仄暗い饐えた臭い。
「ディーヴァ……オレの臭い、取って。ディーヴァの匂いにして」
吐息も身動きすると感じる香りも、少しも不快な色はないというのに。
ディーヴァは肯定するまで目線を切ることができない哀れなダンテの頬に触れ、こっくりと深く頷いた。
「うん、わかった。あたしの匂い移してあげる。ダンテ……おいで?」
「ディーヴァ……!」
優しい彼女に衝動的な思いが弾けそうになる。
まずは添えられたお人好しの細い手首を噛んで、滲む芳醇な血を身体中に擦り付けようか。
そうすればチャチな憂いなど恐らくすぐに消失するだろう。
しかし無意識に舌を這わせて薄い血管に犬歯を置いたところで己の愚行にハッとする。
それでは危惧して嫌悪した悪魔そのものではないかと。
「ごめん……無遠慮にやらかすところだった」
「い、いいよ。それでダンテが安心するなら」
硬く目を瞑りながらもズイと手を差し出し続けるディーヴァ。
怖いに決まっている。
それでも懸命に恐怖を飛び越えてくる可愛い恋人の姿に少しずつ暗闇が取り払われるような気がして。
「ディーヴァ、ごめん。目を開けて。痛くなんてしないから」
「大丈夫!! 一思いにガブッてやって!」
「やんないって。ディーヴァ、目ェ開けろ」
「うう……」
そうは言っても普段のダンテの突拍子もない言動を考慮すれば、代わりに何をしてくるのか分かったのものではない。
「じゃあどうすればいいの? こうやってギュッてしていればいい?」
何よりも恥ずかしい行為をさせられるのはごめんである。
ディーヴァは先手を打ってもう一度ダンテの頭を抱えて、彼を力一杯抱きしめた。
「うぶー……ああ最高。いや……でもな、ディーヴァ。どうせならディーヴァの他の液体にしようかと。いつもたっぷり溢れる愛液とかで……うっ、く、苦しい……ディーヴァちゃん! 待て息が……!!」
「下ネタじゃないの! 心配して損した! 寝る!」
猥語を紡ぐ銀髪の頭を窒息させるつもりで抱き潰したディーヴァは、緩んだダンテの腕をすり抜けて毛布を全て巻き取って頭から被る。
「ディーヴァさぁん……そりゃないって。寒いんですけど」
「勝手に風邪引いて下さい。あたしは寝ます」
「ツレないなぁ……まぁそういうトコも大好きなんだけど」
交渉の余地がなくなってしまったディーヴァ蓑虫相手にダンテは軽い溜め息を漏らすと、無理強いをせずにそのまま仰向けになる。
ダンテの表情は笑顔のまま。
この男は分かっているのだ。
彼女はすぐに見るに見かねて温かい毛布を開けて、照れながらも迎え入れてくれるはずなのだ。
案の定。
「……」
「……」
「……」
「……ダンテ、ホントに風邪引くよ?」
「んー……しょうがないんだよ。お姫様のご機嫌を損ねちまったからな」
「ばか」
「うん。知ってる」
「風邪引いたら色々大変なんだからね! 看病だって楽じゃないんだから」
もぞり。
ディーヴァが振り向く。
「じゃあ許してくれるか?」
ダンテも振り向く。
「……許さないけど。可哀想だから」
「入れてくれる?」
「特別にね」
「やりぃ」
屈託なく笑ったダンテは広げられた毛布の中に滑り込む。
「うわっ……冷たいなぁもう」
「オレはあったかい」
ダンテの冷えた上半身を擦って、それからトントンと優しく背中を叩く。
「ねんねーこ……ねんねーこ」
「お、そうきたか。無理矢理にでも寝かしつけるパターンね。無駄だから、それ」
「もうっ……こうやってくっついて大人しく寝たら匂いも移るでしょ! Good night! Sweet dreams!!」
「色気ねぇなぁ」
クツクツと喉で笑ったダンテだが、これ以上押してもウサギは逃げると判断した。
「分かった分かった。もう寝るから、最後に……キスしてくれないか? ディーヴァから」
つんつんと自分の唇を指でつつく。
その長い指と薄く形のいい唇に釘付けになったディーヴァだが、彼女には妖艶な笑みを浮かべて流れるようなキスを送ることなど恥ずかしくて出来ない。
寧ろこの男は素直に『はいおやすみ』と言えないのかと恨めしく思うが、曲がりなりにも何かに傷ついて帰ってきた事に変わりはない。
キスくらいなら。
それで彼の心が満たされるなら。
いや。きっとそれでは済まされない。
眠れぬ夜の火蓋が切って落とされるに決まっている。
それは充分に理解しているのに。
バカだ。
誰がって?
二人ともだ。
「もう……ダンテなんて知らない」
「ディーヴァ……ん」
ふに、と柔らかくまっすぐに押し付けた唇はあっという間にダンテに深く飲まれていく。
言わんことはない。
「んっ……んん」
「ディーヴァ……ディーヴァ、好きだ。もっと……もっとして」
「ダ、ンテ……んぅ」
施され。
解かれ。
導かれ。
この男はどこまでも狡くて甘い。
そんなに香りが欲しいならいくらでも持っていけばいいのにと、ディーヴァも早々に抵抗をやめてしまう。
けれども息継ぎくらいはさせて欲しいと眉間に皺を寄せると、ダンテは名残惜しそうに少しだけ隙間を作る。
「はぁっ……ねぇ、ダンテ。あたし……ダンテの匂い大好きだよ。変な臭いなんてしたことない。心配することなんて、何にもないんだから」
跳ねる吐息に乗せたその言葉は、香りなどより鮮烈にダンテの身体に染み渡る。
────ああ、だから彼女が好きだ。
彼女を愛して愛して、狂ってしまいそう。
「……ありがとう」
しかしやっとの事で口に出せたのは、それこそ露ほどにも色気のない感謝の言葉。
ダンテはそれきり黙って、満足そうに笑う彼女の肌をゆっくりと外気に晒していく。
朝日が差し込む頃には間違いなく、渇望した彼女の香りが身体のそこかしこに感じられるはず。
移し移され。悪魔と天使。
愛し君のlingering scent……