one summer night
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カラコロと優しい木の音を響かせながら、小走りで俺を抜き去ったと思うと振り返って逢夏が微笑む。
ただ手を差し出してみるとまた木の音をさせながら近づいてきて手を握り返してきた。
「そういえばここでのお祭りって初めてだね。」
「だな。
絶対に浮くぞ、この格好。」
「浮いたっていいじゃない。
ネロ、本当に似合ってるよ。」
「お前には負けるけどな。」
「え?
えへへ…ありがと。」
少しだけ頬を赤らめて、恥ずかしそうに顔を伏せる逢夏。
そこで握っていた手の指に指を絡めて強く結び直すと逢夏は少し高めに結られた黒髪を揺らして肩をすくめてみせた。
と、そうこうしているうちにだ。
「ネロー!あっちで美味しそうなチキンが売られてる!」
「食べてもいいけど汚すなよ?」
「そういうネロもね!」
到着したのは普段の表情をがらりと変え、お祭りムード一色に染まる街。
もともと観光地として栄えているだけあって何時にも増して人通りが増え、小さな逢夏など一度人ごみにまぎれてしまえば分からなくなりそうなほど
…が、今回だけはそうにはなりそうになかった。
俺が着ているよりも更に濃い青。
紺色の生地に真っ白な芍薬が映える大人しくて、けれど彼女らしい浴衣の裾がひらひらと揺れるのが必ず視界の中に入るのだから。
物珍しさから向けられる好奇の視線も気にとめず。
3年前のあの日。
初めて一緒に祭りにいった時よりも幸せそうに逢夏は笑う。
「また口いっぱいに頬張ってんのか。」
「ひゃっておいひぃんひゃよ?」
「じゃあ俺にも。」
「んひゅ!」
「んっ……、んまい。」
「でしょ?
じゃあ次は~…」
「あ、ファンネルケーキ。」
「!
やだ!甘過ぎ反対っ!」
「冗談だって。」
まるでハムスターのように口いっぱいに食べ物を詰めたり
もう大人だっていうのに着ぐるみから風船を貰ってみたり
祭りの空気を満喫する逢夏に俺はただただ満足しっぱなしで。
気付けば楽しすぎる時間はあっという間に過ぎ去り、辺りはすっかり暗くなっていた。
「もう帰っちゃうの?」
「花火がさ、丁度家の方が綺麗に見えるらしいんだ。」
「そうなんだ。
…もうちょっといたかったな。」
「またくればいいだろ?
来年も、再来年も、そのまた来年も。」
「うん、そだねっ。
…また、約束。」
「はいはい、約束な?
じゃあ帰るぞ。」
また小さな手を引いて、ゆっくり歩む帰り道。
行きで延々と下った坂を延々と上って家へと帰る。
それからすぐにテラスに行くと丁度最初の花火が空に咲いているところだった。
「綺麗!
…そうだ!今年は言えるね。」
「ん、そうだな?」
「じゃあ……たまやー!」
これだけ離れていても花火が空に開くたびに体を軽い衝撃がうつ。
そしてそんな僅かな震動さえも楽しみ、空に向かって声を上げる逢夏を膝の上に乗せ
俺もまた、彼女に倣って空を見上げた。
視線の先には色とりどりの光の花。
ふと視界の隅に映った逢夏の笑む頬に手を当ててみる。
「綺麗だな。」
「うん、綺麗だね。
…あのね、ネロ。」
「なんだ?」
「本当に…毎年一緒に、…花火を見てくれる?」
「当たり前だろ。
ずっと一緒だ。」
こんな幸せな日がこれっきりなんてあり得ない。
ずっとずっとこの日が訪れる度、必ず彼女と花火を眺めよう。
ただ手を差し出してみるとまた木の音をさせながら近づいてきて手を握り返してきた。
「そういえばここでのお祭りって初めてだね。」
「だな。
絶対に浮くぞ、この格好。」
「浮いたっていいじゃない。
ネロ、本当に似合ってるよ。」
「お前には負けるけどな。」
「え?
えへへ…ありがと。」
少しだけ頬を赤らめて、恥ずかしそうに顔を伏せる逢夏。
そこで握っていた手の指に指を絡めて強く結び直すと逢夏は少し高めに結られた黒髪を揺らして肩をすくめてみせた。
と、そうこうしているうちにだ。
「ネロー!あっちで美味しそうなチキンが売られてる!」
「食べてもいいけど汚すなよ?」
「そういうネロもね!」
到着したのは普段の表情をがらりと変え、お祭りムード一色に染まる街。
もともと観光地として栄えているだけあって何時にも増して人通りが増え、小さな逢夏など一度人ごみにまぎれてしまえば分からなくなりそうなほど
…が、今回だけはそうにはなりそうになかった。
俺が着ているよりも更に濃い青。
紺色の生地に真っ白な芍薬が映える大人しくて、けれど彼女らしい浴衣の裾がひらひらと揺れるのが必ず視界の中に入るのだから。
物珍しさから向けられる好奇の視線も気にとめず。
3年前のあの日。
初めて一緒に祭りにいった時よりも幸せそうに逢夏は笑う。
「また口いっぱいに頬張ってんのか。」
「ひゃっておいひぃんひゃよ?」
「じゃあ俺にも。」
「んひゅ!」
「んっ……、んまい。」
「でしょ?
じゃあ次は~…」
「あ、ファンネルケーキ。」
「!
やだ!甘過ぎ反対っ!」
「冗談だって。」
まるでハムスターのように口いっぱいに食べ物を詰めたり
もう大人だっていうのに着ぐるみから風船を貰ってみたり
祭りの空気を満喫する逢夏に俺はただただ満足しっぱなしで。
気付けば楽しすぎる時間はあっという間に過ぎ去り、辺りはすっかり暗くなっていた。
「もう帰っちゃうの?」
「花火がさ、丁度家の方が綺麗に見えるらしいんだ。」
「そうなんだ。
…もうちょっといたかったな。」
「またくればいいだろ?
来年も、再来年も、そのまた来年も。」
「うん、そだねっ。
…また、約束。」
「はいはい、約束な?
じゃあ帰るぞ。」
また小さな手を引いて、ゆっくり歩む帰り道。
行きで延々と下った坂を延々と上って家へと帰る。
それからすぐにテラスに行くと丁度最初の花火が空に咲いているところだった。
「綺麗!
…そうだ!今年は言えるね。」
「ん、そうだな?」
「じゃあ……たまやー!」
これだけ離れていても花火が空に開くたびに体を軽い衝撃がうつ。
そしてそんな僅かな震動さえも楽しみ、空に向かって声を上げる逢夏を膝の上に乗せ
俺もまた、彼女に倣って空を見上げた。
視線の先には色とりどりの光の花。
ふと視界の隅に映った逢夏の笑む頬に手を当ててみる。
「綺麗だな。」
「うん、綺麗だね。
…あのね、ネロ。」
「なんだ?」
「本当に…毎年一緒に、…花火を見てくれる?」
「当たり前だろ。
ずっと一緒だ。」
こんな幸せな日がこれっきりなんてあり得ない。
ずっとずっとこの日が訪れる度、必ず彼女と花火を眺めよう。