Tea party beyond the world
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日中、紫乃はふと事務所内で変わった気配を感じ取った。
それは不快なものだったり不穏なものではなく、ただ『変わっている』と思える気配だった。
発生場所は何処だろうと事務所内を探っていると、それはキッチンから強く漂ってきていることに気付く。
「ここから……?」
キッチンをぐるりと見渡して、気配は一番奥──
勝手口の方から漂ってきていた。
「……羽根?」
勝手口の前へ歩み寄ると、床に白い一枚の羽根が落ちていた。
白鳥のような白い羽根を拾い上げる。
不思議な気配はこの羽根から放たれているようだ。
「まるで天使の羽根みたい」
純白の羽根はふわふわとしていて、何かの力を感じる。
それは魔力と、それに清浄な力も感じると紫乃が思った時、羽根が淡く光り出した。
同時に自分の内側で『力』が引き寄せられる感覚が起こる。
まるで互いに引き寄せ合う磁石の磁極のように。
「な、何……!?」
その感覚は自分でも抑えきれなかった。
紫乃は不思議な羽根が原因だと察しながらも、羽根を手放すことはしなかった。
邪悪な力ではなく、清浄な力を感じたからかもしれない。
自分の力──つまり『空間を繋ぐ能力』が発動し、紫乃は『ゲート』をくぐった。
* * *
人気のないスラム街に住み着く者は大抵無法者と相場が決まっているものだが、その店舗兼住居に住まう二人はそうではなかった。
「今日はピザ作ってあげようかな」
ディーヴァがうふふと笑った。
掃除が一段落したので身に付けていたエプロンを脱いでリビングのソファーに腰掛けると、腰まで伸びたエメラルドティントの髪がふわりと揺れた。
家主であり命の恩人である彼は、二階のベッドルームで熟睡中だ。
だから建物内の掃除がはかどり、こうして落ち着いて休憩をしているのである。
「やっぱりサンデーも作っちゃおう」
彼の二大好物は、ピザとストロベリーサンデー。
いつもと少し変わったトッピングで味の違いを楽しむのもいいかも、と今夜の献立を考えている時、何かの気配を感じ取った。
それはまるで悪魔が人間界に現れるように唐突なもので。
ディーヴァはソファーから立ち上がり、気配のする方へ向かう。
おそるおそるという表現が当てはまるほどに慎重な足取りでキッチンへ向かい、中をそっと覗き込んだ。
「だ、誰かいるの……?」
いつも使っているキッチンだが、いつもと違う光景が目の前にあった。
キッチンの奥にある勝手口の前に、一人の見知らぬ女性が立っている。
自分のように腰まで伸びた髪は黒く、彫りの深くない平面的な顔の作りは東洋人そのものだ。
ブラウスとスカートといった身なりは、スラム街にあまり似つかわしくないほど、女性の格好はきちんとしたものだった。
女性はキッチンをキョロキョロと見ていたが、やがて少女に気付いて紫の瞳を向けてきた。
「えっと……ここは何処なのかしら」
紫乃はリビングのソファーに案内され、淹れたての紅茶が少女より差し出された。
「ありがとう」
一緒に用意された角砂糖を一つ入れてスプーンで混ぜ、紅茶を一口飲む。
ふわりと鼻腔をくすぐる紅茶の香りが、無意識に緊張で強張った身体と精神をリラックスさせた。
ただ、少女と出会ってからは自分の内側で何かがざわめいているような感覚が続いており、こればかりは紅茶でリラックスさせることは出来なかった。
「驚かせてごめんなさい。私は紫乃って言うの」
「いえ……あたしはディーヴァです」
ディーヴァと名乗った少女は極めて薄い緑色──というよりも銀髪に近いような色合いで、瞳は透明感のあるエメラルド色だった。
それは不快なものだったり不穏なものではなく、ただ『変わっている』と思える気配だった。
発生場所は何処だろうと事務所内を探っていると、それはキッチンから強く漂ってきていることに気付く。
「ここから……?」
キッチンをぐるりと見渡して、気配は一番奥──
勝手口の方から漂ってきていた。
「……羽根?」
勝手口の前へ歩み寄ると、床に白い一枚の羽根が落ちていた。
白鳥のような白い羽根を拾い上げる。
不思議な気配はこの羽根から放たれているようだ。
「まるで天使の羽根みたい」
純白の羽根はふわふわとしていて、何かの力を感じる。
それは魔力と、それに清浄な力も感じると紫乃が思った時、羽根が淡く光り出した。
同時に自分の内側で『力』が引き寄せられる感覚が起こる。
まるで互いに引き寄せ合う磁石の磁極のように。
「な、何……!?」
その感覚は自分でも抑えきれなかった。
紫乃は不思議な羽根が原因だと察しながらも、羽根を手放すことはしなかった。
邪悪な力ではなく、清浄な力を感じたからかもしれない。
自分の力──つまり『空間を繋ぐ能力』が発動し、紫乃は『ゲート』をくぐった。
* * *
人気のないスラム街に住み着く者は大抵無法者と相場が決まっているものだが、その店舗兼住居に住まう二人はそうではなかった。
「今日はピザ作ってあげようかな」
ディーヴァがうふふと笑った。
掃除が一段落したので身に付けていたエプロンを脱いでリビングのソファーに腰掛けると、腰まで伸びたエメラルドティントの髪がふわりと揺れた。
家主であり命の恩人である彼は、二階のベッドルームで熟睡中だ。
だから建物内の掃除がはかどり、こうして落ち着いて休憩をしているのである。
「やっぱりサンデーも作っちゃおう」
彼の二大好物は、ピザとストロベリーサンデー。
いつもと少し変わったトッピングで味の違いを楽しむのもいいかも、と今夜の献立を考えている時、何かの気配を感じ取った。
それはまるで悪魔が人間界に現れるように唐突なもので。
ディーヴァはソファーから立ち上がり、気配のする方へ向かう。
おそるおそるという表現が当てはまるほどに慎重な足取りでキッチンへ向かい、中をそっと覗き込んだ。
「だ、誰かいるの……?」
いつも使っているキッチンだが、いつもと違う光景が目の前にあった。
キッチンの奥にある勝手口の前に、一人の見知らぬ女性が立っている。
自分のように腰まで伸びた髪は黒く、彫りの深くない平面的な顔の作りは東洋人そのものだ。
ブラウスとスカートといった身なりは、スラム街にあまり似つかわしくないほど、女性の格好はきちんとしたものだった。
女性はキッチンをキョロキョロと見ていたが、やがて少女に気付いて紫の瞳を向けてきた。
「えっと……ここは何処なのかしら」
紫乃はリビングのソファーに案内され、淹れたての紅茶が少女より差し出された。
「ありがとう」
一緒に用意された角砂糖を一つ入れてスプーンで混ぜ、紅茶を一口飲む。
ふわりと鼻腔をくすぐる紅茶の香りが、無意識に緊張で強張った身体と精神をリラックスさせた。
ただ、少女と出会ってからは自分の内側で何かがざわめいているような感覚が続いており、こればかりは紅茶でリラックスさせることは出来なかった。
「驚かせてごめんなさい。私は紫乃って言うの」
「いえ……あたしはディーヴァです」
ディーヴァと名乗った少女は極めて薄い緑色──というよりも銀髪に近いような色合いで、瞳は透明感のあるエメラルド色だった。