mission 8:bye until then, old castle ~VSファントム~
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「チョコマカと逃げるなぁ!」
「おいおい、逃げるに決まってんだろ……」
「逃がさん!!」
このタイミングでファントムは飛び上がった。踏み潰し攻撃再びである。
隕石が次々落ちてくる中、それに混じって落ちてくるファントムの体を、ダンテは魔人化も辞さない勢いで走り抜け、ステンドグラスの真上に落ちるよう誘導した。
パキッ、パリィン……!
とうとう、ステンドグラスのガラスがほとんど割れて落ちた。
残るガラスにもヒビの入っていない場所はほとんどない。
ガラス枠すら、ぷらぷらと天井に辛うじてくっついているだけに見えた。
ダンテはファントムが落ちた先を、さらに後ろからアラストルで斬りつける。
大した攻撃ではないが、相手の怒りをさらに買う事には成功した。
『たまに斬っても防戦ばっか。勝機はあるの?』
「あるさ。上手く行けばやつは勝手に自滅する」
そうやって挑発して怒らせ、そして背後をとればファントムは馬鹿の一つ覚えのように、踏み潰しをしてくる。
逆にそれを利用してダンテは勝機を掴んでいる。
ダンテは傷を負いながらも、ファントムの落下場所を幾度も、中央のステンドグラスへと導いた。
ピシッ、パキッ……。
「これで終いだ」
「なんだと……、!?」
ガシャーーーン!!!
ダンテの挑発に乗り飛び上がったファントムは、自らの体重で突き破ったステンドグラスの、その下へとガラスの破片ごと落ちた。
真下にあったのは、ホールに飾られた特徴的な像。
鋭い槍を真上に構えた、騎士像だ。
ぷくりと大きな背中の一番柔らかな箇所。弱点が、無抵抗に槍に晒される。
串刺しは免れず、槍先が無慈悲にファントムを貫いた。
「ギャアアアアアグガァァァァ……ッ!」
劈くような悪魔の悲鳴、そしてマグマなのか血なのか見分けのつかぬ液体がファントムの口から漏れる。
貫かれた傷口からも同様に、おびただしい量のマグマのような血のような液体が溢れて床を覆い尽くした。
いや、血であり、マグマなのかもしれない。
床が焼ける音を立てている。
「お、お前、ただの人間ではないな?…何者だ」
『今頃気がついたの?やだなー。
どう考えてもマスターは人間じゃないでしょ。こんな力あってこんな変わったファッションしてる人間いないって』
「一言余計」
『いだっ!』
苦しみもがきながらも、ファントムの複眼が屋上から覗くダンテを見定めるべく射抜く。
アラストルがぺらぺらと喋るが、それをまた裏拳で黙らせ、ダンテはファントムをただただ見下ろした。
そんなダンテと、かの有名な魔剣士スパーダの姿が重なる。
「まさか、伝説の魔剣士スパーダ?
そんなバカな」
「鋭いな。その息子ダンテだ」
ごぼり、体液を撒き散らしながら、ファントムは驚愕の声をあげる。
ダンテはそんなファントムに、正解を与えた。
「ネンネしな」
ダンテが片手を上げ、吐き捨てると同時、ファントムの大きな体が溶け落ちるように消えた。
それを見届けたダンテは、今度こそ吹き抜けになった屋上をあとにした。
背後ではすでに、日が落ち始めていた。
「ファントムが負けた…。
まさかこれ程とは…」
ファントムの骸とは違う視線があったことをダンテは知らない。
ダンテは戦闘時の鬼気迫る顔を崩し、愛するものが待つであろう塀の外側へと笑顔で飛び込んだ。
「ディーヴァ、終わったぞ」
「んにゅ?あ、ダンテ。
よく見えなかったけど、どんな戦闘があったの?
なんか聞き覚えある声と、爆発音がいっぱいして、熱風がここまで届いてたよ。怪我は大丈夫?」
「怪我は少しだけだ。もう治ってるから心配するな」
はーーー。
んにゅ、だってさ。
なんて可愛い鳴き声だ。このペットはやく連れて帰ろう。違う、結婚しよ。
なんてな、元々オレのだし結婚予約してる。
眦が下がる思いで、ディーヴァを補給すべく抱きしめる。
怪我はすでに治っているので、血もつかないし心配をかけずにすむ。
抱きしめれば体に伝わる、ファントムの灼熱とは違う、心まで暖まる柔らかなディーヴァの温かさ。最高だ。
「しかし、ここは熱風で済んだのか…そうか、なら良かった」
「うん。なんともないし目を閉じてたらちょっと寝ちゃってたー」
『寝てた!あの状況でよく寝れるね!?悪魔来たらどうしようって言ってたの誰!??』
「うるせえぞアラストル。ディーヴァが無事ならそれでいいんだよ。
まあ、オレは戦闘というよりただの害虫駆除に勤しんでただけだな……。なんともないなら行くぞディーヴァ」
「う、うん……」
ダンテの体や心が回復するほどの長さのものではないが、ディーヴァの額、頬、鼻、そして最後に唇に口づけを施す。
降ってくるキスの雨を受け、ほんのりと頬を染めながら、ディーヴァは伸ばされたダンテの手を取った。
ディーヴァを抱えて塀を再び乗り越え、今度こそ次のステージへと向かう。
ファントムとの強制戦闘になるきっかけとなった、落ちていた鉄格子もいつのまにか上がっていた。
そこを一息で抱えたディーヴァごと飛び降りると、潮がまじる風がもの悲しい音を奏でつつ、しかし熱に焼かれた肌に心地よく吹く場所についた。
さてさて。
金髪を靡かせる悪魔が去り、ダンテとディーヴァも去った後のこと。
ファントムの巨体が消え、焼け焦げた跡地に、ひとりの大男が倒れていた。
「…む?生きている……?」
震える瞼を開ける大男。
あの男との戦闘で自分は死んだと思っていた。なのに生きている。
体の中心に激痛があるが、それがまた自分が生きている証拠でもあった。
「ああ、なるほどな。
まさかあの天使にここまでの効力があったとは。天使の…ディーヴァの食事のおかげで助かった」
ふと思い出したのは男のそばにいた、笑顔の少女。魔帝の獲物である天使の存在。
自分がこうして生き長らえているのは、彼女が作った食事のおかげに違いなかった。そうでなくては、串刺しになった時点で無に帰していただろう。
とはいえ、少なくともディーヴァは実際、自ら自分の血を入れていなかったはず。
あとからグリフォンに血を混入するよう言われていても、だ。
が、あの出血量の中作った食事だ。一滴くらい混入していた可能性が高い。
普通のレストランなら間違いなくクビだが、相手は悪魔。逆にいいスパイスだった。
いやむしろ、回復薬としての効果が付与された。
彼女のおかげでこうして一命をとりとめた。
彼女には恩、そして借りができた。
そう認識した瞬間、大男の身に絡んでいた魔帝の楔が解けた。
悪魔としての、本分すら忘れた。
俺は魔帝に使える身分を、捨てる。
まずは魔界にいる妻の元へ帰ろう、話はそれからである。
先ほどの戦闘で死んだ事になっているであろう己が、今更魔界へと逃亡しここから消えたところで誰も何も言うまい。
魔界につながる道へと向かう大男の影は、大きな蜘蛛の形をしていた。
「おいおい、逃げるに決まってんだろ……」
「逃がさん!!」
このタイミングでファントムは飛び上がった。踏み潰し攻撃再びである。
隕石が次々落ちてくる中、それに混じって落ちてくるファントムの体を、ダンテは魔人化も辞さない勢いで走り抜け、ステンドグラスの真上に落ちるよう誘導した。
パキッ、パリィン……!
とうとう、ステンドグラスのガラスがほとんど割れて落ちた。
残るガラスにもヒビの入っていない場所はほとんどない。
ガラス枠すら、ぷらぷらと天井に辛うじてくっついているだけに見えた。
ダンテはファントムが落ちた先を、さらに後ろからアラストルで斬りつける。
大した攻撃ではないが、相手の怒りをさらに買う事には成功した。
『たまに斬っても防戦ばっか。勝機はあるの?』
「あるさ。上手く行けばやつは勝手に自滅する」
そうやって挑発して怒らせ、そして背後をとればファントムは馬鹿の一つ覚えのように、踏み潰しをしてくる。
逆にそれを利用してダンテは勝機を掴んでいる。
ダンテは傷を負いながらも、ファントムの落下場所を幾度も、中央のステンドグラスへと導いた。
ピシッ、パキッ……。
「これで終いだ」
「なんだと……、!?」
ガシャーーーン!!!
ダンテの挑発に乗り飛び上がったファントムは、自らの体重で突き破ったステンドグラスの、その下へとガラスの破片ごと落ちた。
真下にあったのは、ホールに飾られた特徴的な像。
鋭い槍を真上に構えた、騎士像だ。
ぷくりと大きな背中の一番柔らかな箇所。弱点が、無抵抗に槍に晒される。
串刺しは免れず、槍先が無慈悲にファントムを貫いた。
「ギャアアアアアグガァァァァ……ッ!」
劈くような悪魔の悲鳴、そしてマグマなのか血なのか見分けのつかぬ液体がファントムの口から漏れる。
貫かれた傷口からも同様に、おびただしい量のマグマのような血のような液体が溢れて床を覆い尽くした。
いや、血であり、マグマなのかもしれない。
床が焼ける音を立てている。
「お、お前、ただの人間ではないな?…何者だ」
『今頃気がついたの?やだなー。
どう考えてもマスターは人間じゃないでしょ。こんな力あってこんな変わったファッションしてる人間いないって』
「一言余計」
『いだっ!』
苦しみもがきながらも、ファントムの複眼が屋上から覗くダンテを見定めるべく射抜く。
アラストルがぺらぺらと喋るが、それをまた裏拳で黙らせ、ダンテはファントムをただただ見下ろした。
そんなダンテと、かの有名な魔剣士スパーダの姿が重なる。
「まさか、伝説の魔剣士スパーダ?
そんなバカな」
「鋭いな。その息子ダンテだ」
ごぼり、体液を撒き散らしながら、ファントムは驚愕の声をあげる。
ダンテはそんなファントムに、正解を与えた。
「ネンネしな」
ダンテが片手を上げ、吐き捨てると同時、ファントムの大きな体が溶け落ちるように消えた。
それを見届けたダンテは、今度こそ吹き抜けになった屋上をあとにした。
背後ではすでに、日が落ち始めていた。
「ファントムが負けた…。
まさかこれ程とは…」
ファントムの骸とは違う視線があったことをダンテは知らない。
ダンテは戦闘時の鬼気迫る顔を崩し、愛するものが待つであろう塀の外側へと笑顔で飛び込んだ。
「ディーヴァ、終わったぞ」
「んにゅ?あ、ダンテ。
よく見えなかったけど、どんな戦闘があったの?
なんか聞き覚えある声と、爆発音がいっぱいして、熱風がここまで届いてたよ。怪我は大丈夫?」
「怪我は少しだけだ。もう治ってるから心配するな」
はーーー。
んにゅ、だってさ。
なんて可愛い鳴き声だ。このペットはやく連れて帰ろう。違う、結婚しよ。
なんてな、元々オレのだし結婚予約してる。
眦が下がる思いで、ディーヴァを補給すべく抱きしめる。
怪我はすでに治っているので、血もつかないし心配をかけずにすむ。
抱きしめれば体に伝わる、ファントムの灼熱とは違う、心まで暖まる柔らかなディーヴァの温かさ。最高だ。
「しかし、ここは熱風で済んだのか…そうか、なら良かった」
「うん。なんともないし目を閉じてたらちょっと寝ちゃってたー」
『寝てた!あの状況でよく寝れるね!?悪魔来たらどうしようって言ってたの誰!??』
「うるせえぞアラストル。ディーヴァが無事ならそれでいいんだよ。
まあ、オレは戦闘というよりただの害虫駆除に勤しんでただけだな……。なんともないなら行くぞディーヴァ」
「う、うん……」
ダンテの体や心が回復するほどの長さのものではないが、ディーヴァの額、頬、鼻、そして最後に唇に口づけを施す。
降ってくるキスの雨を受け、ほんのりと頬を染めながら、ディーヴァは伸ばされたダンテの手を取った。
ディーヴァを抱えて塀を再び乗り越え、今度こそ次のステージへと向かう。
ファントムとの強制戦闘になるきっかけとなった、落ちていた鉄格子もいつのまにか上がっていた。
そこを一息で抱えたディーヴァごと飛び降りると、潮がまじる風がもの悲しい音を奏でつつ、しかし熱に焼かれた肌に心地よく吹く場所についた。
さてさて。
金髪を靡かせる悪魔が去り、ダンテとディーヴァも去った後のこと。
ファントムの巨体が消え、焼け焦げた跡地に、ひとりの大男が倒れていた。
「…む?生きている……?」
震える瞼を開ける大男。
あの男との戦闘で自分は死んだと思っていた。なのに生きている。
体の中心に激痛があるが、それがまた自分が生きている証拠でもあった。
「ああ、なるほどな。
まさかあの天使にここまでの効力があったとは。天使の…ディーヴァの食事のおかげで助かった」
ふと思い出したのは男のそばにいた、笑顔の少女。魔帝の獲物である天使の存在。
自分がこうして生き長らえているのは、彼女が作った食事のおかげに違いなかった。そうでなくては、串刺しになった時点で無に帰していただろう。
とはいえ、少なくともディーヴァは実際、自ら自分の血を入れていなかったはず。
あとからグリフォンに血を混入するよう言われていても、だ。
が、あの出血量の中作った食事だ。一滴くらい混入していた可能性が高い。
普通のレストランなら間違いなくクビだが、相手は悪魔。逆にいいスパイスだった。
いやむしろ、回復薬としての効果が付与された。
彼女のおかげでこうして一命をとりとめた。
彼女には恩、そして借りができた。
そう認識した瞬間、大男の身に絡んでいた魔帝の楔が解けた。
悪魔としての、本分すら忘れた。
俺は魔帝に使える身分を、捨てる。
まずは魔界にいる妻の元へ帰ろう、話はそれからである。
先ほどの戦闘で死んだ事になっているであろう己が、今更魔界へと逃亡しここから消えたところで誰も何も言うまい。
魔界につながる道へと向かう大男の影は、大きな蜘蛛の形をしていた。