mission 0:nightmare began ~地獄へのバカンス~
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足が草木で傷つくのも構わず走り抜けるディーヴァ。
そんなディーヴァの前方に倒れる大木の陰。隠れるかのようにして頭一つ分の銀糸が上から覗いていた。
銀糸の髪はダンテくらいしか思いつかない。
ああ、そうか!
さっきダンテは偽物で、こっちのダンテが本物だ!
ダンテが死ぬなんて事、夢の中だってあるわけがない。
安心しきったディーヴァは、今までの絶望感はどこへやら、笑顔で木の裏へと走りよった。
「ダンーーー、」
そこにいたのは、ダンテではなかった。
うつむき気味に目を閉じているのは、銀糸の髪に真っ青なコート、バージルだ。
「え、バ、バージル…!?」
夢の中にバージルが出てくるなんて珍しいこともあるものだ。
会いたいと思っても、自分の思い描く夢の中には決して登場することのなかったバージル。ダンテのいない間、テメンニグルで守ってくれた、本当は優しいあのバージル。
それが、夢とはいえども目の前にいる。
ディーヴァは思わず目頭が熱くなった。
ごし、と涙をふくディーヴァは、改めて寝ているように見えるバージルを観察した。
ダンテよりも幾分か鋭い顔のパーツに、少し青みがかった顔色。それがバージルのデフォルトだが、その顔色は記憶の中にあるバージルよりもより青く、より白く見える。
…青白いを通り越して血の気が失せて見える。
「バー……ジル?」
ぴとりと触れた指先、バージルの頬は冷たく、さらにその下、首筋からは血潮の流れを感じない。
氷のように冷たかった。
木に腰掛けるような体勢で俯くバージルの体が傾く。
ディーヴァの、腕の中へ。
咄嗟に背に手を回したディーヴァ。
その手に、ぬるりとしたものが触れる。
「…え?」
冷たいバージルの温度の中で、唯一温度を持ったそれは、命の温度。
バージルの青いコートとは反対の、真っ赤な血だった。
「ひっ…!いやぁぁぁぁ……っ!!」
自身の手のひらにべっとりと付着した血を見、取り乱したディーヴァは腰が抜けたのか、地べたに座り込んだ。
そのまま震えながら後退する。
ずるりと地に伏していくバージルのその背が、ディーヴァの視界いっぱいに広がる。
そこにはダンテと同じ、真っ赤に染まる空洞があった。
心臓が、一番大事な臓器がない。
…死んでいる。
先ほどの感動のではない、恐怖がゆえの涙が、ぼろぼろと溢れる。
喉が嗚咽でひくつく。
お願い、起こして。
そう、ひたすらに夢の中からの解放をディーヴァは願う。
その時、ディーヴァのいるすぐそばの木に、ぼんやりと乳白色の光が浮かび上がった。
形は、矢印。
その光の矢印が、まるでディーヴァを導くかのように次々と、木に現れる。
「ぅっ…、ぐすっ……あっちに行けって、言うこと?」
あとからあとから溢れてくる涙をいささか乱暴にぬぐい、ディーヴァは足を踏み出す。
森の外まで続いているのか、まるで光で出来た道筋かのように、ディーヴァの歩みを一直線にずっと照らし続けていた。
「誘導、されているような気もする…。でも、こんな嫌な夢終わらせたい…行くっきゃない……」
森は終わった。乾ききってヒビの入る荒廃した地、それがディーヴァが今進むところだ。
誘導光はほとんどなくなった木の代わりに、ヒビ割れた大地に刻まれて光っていた。
夢が何かを伝えたくて、暗示している。
だとしてもこんな夢を見続けたなら、心が壊れてしまう。
家族を亡くした時のあのトラウマが、ディーヴァの中に黒い煙のように広がり始める。
心が傷つくその前に、起きてしまいたい。
だからこれがたとえより恐ろしい恐怖への道筋だとしても、他に考えの浮かばない今は、従うしかなかった。
それに、今は鳴き声が聞こえてこないが、マーナガルムだって追ってきているはずだ。
しばらく歩みを進め、小高い丘を越える。
丘の下すり鉢状に窪んだそこには、黒曜石のように真っ黒な板状の石が転々と並んでいた。
「おは、か…?」
そう、それはすべて墓石。
知らぬ名もあるが、ディーヴァは見つけてしまった。よく知った名を。
「これ、パパとママの…。こっちはお兄ちゃんの……」
それは恐ろしいまでに家族の墓石と合致する。
薄ら寒く感じつつ、他に何かないかを探す。
ーーもう、墓石を調べる他ないのだ。
何故なら、このすり鉢状の地の先は、混沌とした闇。
そこでこの世界が終わってしまっているかのように、切り取られていてどこにも進めないのだからーー。
ディーヴァの視線がある墓石で止まった。
口元を手で覆う。
朽ちかけた墓石。べっとりと血のついた墓石。
きちんと埋まっていないのか地面からは青白い手がチラと見え、そばには血のついたリベリオンが、それそのものだけで墓標かのように刺さる。
墓石に刻まれた名は、ダンテ。
「そんな…!やだやだ、夢のくせになんでこんな酷いものを見せるのよ……っ」
胸に穴の空いたダンテの亡骸を嫌でも思い出してしまう。
「あっちはレディの…!いやっ!バージルのお墓もある…!」
大切な友達であるレディ。
彼女の墓も、そこには存在していた。
そしてもちろん、ダンテの墓があったからこそ、その双子の兄バージル。彼の墓もそこにあった。
真っ二つに割れた墓石。ダンテの墓と同じく血に濡れたそれ。
墓標前には閻魔刀が垂直に突き刺さり、生ぬるい風に黄色の飾り紐がはためいている。
そして、遺体を埋めているはずの場所から微かに見えるのは、もう二度と開く事のないその目元。
バージルは魔界に落ちた。
けれど絶対生きてると信じている。信じたい。
「なのに、なんでこんなにもリアルで恐ろしいもの見せてくるの……!」
バージルの死を、そして墓を見せつけられてもうディーヴァの心はズタズタだ。
ここにあと一撃精神攻撃が放たれたなら、ディーヴァは精神崩壊する。
ヨタヨタと交代した先、土の塊に蹴つまずいて転んでしまう。
「あっ、!…いたた………、え、」
どしゃっ、倒れ込んだ地面から香る、冷たく湿った土の匂い。
土とは違う、ひんやりと手に冷たさを伝える石の感覚に振り返ると、そこにも墓石。
さっきまではなかったそこに刻まれし名は、ディーヴァの本名。
「…あたしの、お墓……なんで…?」
真新しい墓の前、大きな空洞がある。
遺体を納めるための、大きな大きな奈落の闇がそこに口を開けていた。
「ガァァウ!」
困惑気味に奈落を眺めていれば、背後の闇の中から獣が飛び出した。
鋭い爪を振りかざし、牙を光らせるその獣はマーナガルム。
ディーヴァの匂いと足跡をたどり、いまだ追ってきていたのだ。
「いやっ!!」
自身を守るように手を前に出してガードするディーヴァの前で、マーガナルムの姿が暗闇に溶けて消える。
赤い瞳や赤い首輪の色が霧散し、漆黒の体も煙のようにかき消えてゆく。
霧散して空気に溶けゆくそれは、やがて上空へ立ち上り、世界の切れ目、その先の暗黒へと吸い込まれた。
そんなディーヴァの前方に倒れる大木の陰。隠れるかのようにして頭一つ分の銀糸が上から覗いていた。
銀糸の髪はダンテくらいしか思いつかない。
ああ、そうか!
さっきダンテは偽物で、こっちのダンテが本物だ!
ダンテが死ぬなんて事、夢の中だってあるわけがない。
安心しきったディーヴァは、今までの絶望感はどこへやら、笑顔で木の裏へと走りよった。
「ダンーーー、」
そこにいたのは、ダンテではなかった。
うつむき気味に目を閉じているのは、銀糸の髪に真っ青なコート、バージルだ。
「え、バ、バージル…!?」
夢の中にバージルが出てくるなんて珍しいこともあるものだ。
会いたいと思っても、自分の思い描く夢の中には決して登場することのなかったバージル。ダンテのいない間、テメンニグルで守ってくれた、本当は優しいあのバージル。
それが、夢とはいえども目の前にいる。
ディーヴァは思わず目頭が熱くなった。
ごし、と涙をふくディーヴァは、改めて寝ているように見えるバージルを観察した。
ダンテよりも幾分か鋭い顔のパーツに、少し青みがかった顔色。それがバージルのデフォルトだが、その顔色は記憶の中にあるバージルよりもより青く、より白く見える。
…青白いを通り越して血の気が失せて見える。
「バー……ジル?」
ぴとりと触れた指先、バージルの頬は冷たく、さらにその下、首筋からは血潮の流れを感じない。
氷のように冷たかった。
木に腰掛けるような体勢で俯くバージルの体が傾く。
ディーヴァの、腕の中へ。
咄嗟に背に手を回したディーヴァ。
その手に、ぬるりとしたものが触れる。
「…え?」
冷たいバージルの温度の中で、唯一温度を持ったそれは、命の温度。
バージルの青いコートとは反対の、真っ赤な血だった。
「ひっ…!いやぁぁぁぁ……っ!!」
自身の手のひらにべっとりと付着した血を見、取り乱したディーヴァは腰が抜けたのか、地べたに座り込んだ。
そのまま震えながら後退する。
ずるりと地に伏していくバージルのその背が、ディーヴァの視界いっぱいに広がる。
そこにはダンテと同じ、真っ赤に染まる空洞があった。
心臓が、一番大事な臓器がない。
…死んでいる。
先ほどの感動のではない、恐怖がゆえの涙が、ぼろぼろと溢れる。
喉が嗚咽でひくつく。
お願い、起こして。
そう、ひたすらに夢の中からの解放をディーヴァは願う。
その時、ディーヴァのいるすぐそばの木に、ぼんやりと乳白色の光が浮かび上がった。
形は、矢印。
その光の矢印が、まるでディーヴァを導くかのように次々と、木に現れる。
「ぅっ…、ぐすっ……あっちに行けって、言うこと?」
あとからあとから溢れてくる涙をいささか乱暴にぬぐい、ディーヴァは足を踏み出す。
森の外まで続いているのか、まるで光で出来た道筋かのように、ディーヴァの歩みを一直線にずっと照らし続けていた。
「誘導、されているような気もする…。でも、こんな嫌な夢終わらせたい…行くっきゃない……」
森は終わった。乾ききってヒビの入る荒廃した地、それがディーヴァが今進むところだ。
誘導光はほとんどなくなった木の代わりに、ヒビ割れた大地に刻まれて光っていた。
夢が何かを伝えたくて、暗示している。
だとしてもこんな夢を見続けたなら、心が壊れてしまう。
家族を亡くした時のあのトラウマが、ディーヴァの中に黒い煙のように広がり始める。
心が傷つくその前に、起きてしまいたい。
だからこれがたとえより恐ろしい恐怖への道筋だとしても、他に考えの浮かばない今は、従うしかなかった。
それに、今は鳴き声が聞こえてこないが、マーナガルムだって追ってきているはずだ。
しばらく歩みを進め、小高い丘を越える。
丘の下すり鉢状に窪んだそこには、黒曜石のように真っ黒な板状の石が転々と並んでいた。
「おは、か…?」
そう、それはすべて墓石。
知らぬ名もあるが、ディーヴァは見つけてしまった。よく知った名を。
「これ、パパとママの…。こっちはお兄ちゃんの……」
それは恐ろしいまでに家族の墓石と合致する。
薄ら寒く感じつつ、他に何かないかを探す。
ーーもう、墓石を調べる他ないのだ。
何故なら、このすり鉢状の地の先は、混沌とした闇。
そこでこの世界が終わってしまっているかのように、切り取られていてどこにも進めないのだからーー。
ディーヴァの視線がある墓石で止まった。
口元を手で覆う。
朽ちかけた墓石。べっとりと血のついた墓石。
きちんと埋まっていないのか地面からは青白い手がチラと見え、そばには血のついたリベリオンが、それそのものだけで墓標かのように刺さる。
墓石に刻まれた名は、ダンテ。
「そんな…!やだやだ、夢のくせになんでこんな酷いものを見せるのよ……っ」
胸に穴の空いたダンテの亡骸を嫌でも思い出してしまう。
「あっちはレディの…!いやっ!バージルのお墓もある…!」
大切な友達であるレディ。
彼女の墓も、そこには存在していた。
そしてもちろん、ダンテの墓があったからこそ、その双子の兄バージル。彼の墓もそこにあった。
真っ二つに割れた墓石。ダンテの墓と同じく血に濡れたそれ。
墓標前には閻魔刀が垂直に突き刺さり、生ぬるい風に黄色の飾り紐がはためいている。
そして、遺体を埋めているはずの場所から微かに見えるのは、もう二度と開く事のないその目元。
バージルは魔界に落ちた。
けれど絶対生きてると信じている。信じたい。
「なのに、なんでこんなにもリアルで恐ろしいもの見せてくるの……!」
バージルの死を、そして墓を見せつけられてもうディーヴァの心はズタズタだ。
ここにあと一撃精神攻撃が放たれたなら、ディーヴァは精神崩壊する。
ヨタヨタと交代した先、土の塊に蹴つまずいて転んでしまう。
「あっ、!…いたた………、え、」
どしゃっ、倒れ込んだ地面から香る、冷たく湿った土の匂い。
土とは違う、ひんやりと手に冷たさを伝える石の感覚に振り返ると、そこにも墓石。
さっきまではなかったそこに刻まれし名は、ディーヴァの本名。
「…あたしの、お墓……なんで…?」
真新しい墓の前、大きな空洞がある。
遺体を納めるための、大きな大きな奈落の闇がそこに口を開けていた。
「ガァァウ!」
困惑気味に奈落を眺めていれば、背後の闇の中から獣が飛び出した。
鋭い爪を振りかざし、牙を光らせるその獣はマーナガルム。
ディーヴァの匂いと足跡をたどり、いまだ追ってきていたのだ。
「いやっ!!」
自身を守るように手を前に出してガードするディーヴァの前で、マーガナルムの姿が暗闇に溶けて消える。
赤い瞳や赤い首輪の色が霧散し、漆黒の体も煙のようにかき消えてゆく。
霧散して空気に溶けゆくそれは、やがて上空へ立ち上り、世界の切れ目、その先の暗黒へと吸い込まれた。
