mission 7:warm and burning keys ~埋め合う隙間~
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やはり気になる、このディーヴァの気配の薄さ。本当に少しだけだが、感じる違和感。
喉に刺さった魚の小骨、それよりも小さい、普通なら気がつかないほどの違和感。
「何か引っかかる。ディーヴァの違和感、きっと何かある。今ここを出たら後悔する。放って置けない」
「そういえば違和感があるってずっと言ってたね。……どういうことなの?」
「……今のお前、幻に近いものを感じるんだよ。
会話した感じじゃよくわからない。
触った感じからも、特に変わったところはない。体温も匂いも一緒。
だが、気配が希薄で、吹けば消えそうに存在がふわふわしてる。やっぱり何か違うんだよな……敵意も悪意も、邪悪なもんは何一つ感じないのに」
「まぼろし……なに、それ……」
「隠密部隊に所属しました、って言われても今なら頷けるぞ。
まさか、お前シノビに……クノイチにでもなったか?」
冗談まじりに影がうすい、というのを指摘するダンテ。
だが、ディーヴァはダンテの冗談で笑っていられなかった。
「もしかしてあたし…ホントに幻影か何かなのかな……?
まぼろし、なの?
今は夢でも見てるの……?
これは、あの恐ろしい苦痛や絶望から逃れるための、現実逃避?
じゃあ、あたしは、ホントのあたしは………?」
ぐるぐると考えが巡る。黒いほうへ、暗いほうへ。
目の前までもが闇に染まり始め、比例するように恐怖で体が小刻みにガタガタと震えだす。
「お、おい!
おいディーヴァ、しっかりしろ!?」
腕の中で震え始めたディーヴァを、困惑しながらこちら側に呼び戻すダンテ。
いくら天使とはいえ、闇に足を突っ込み絶望を抱けばそこを悪魔に取り憑かれる。
いや、天使だから最悪は堕天してしまうかもしれない。
堕天すればロダンのようになるに決まっている。天使の頃からあんなナリのわけがない。彼はきっと、堕天したからああなのだ。
ロダンのようにムッキムキでいかつく変わったディーヴァは、絶対に!見たくない。
サイドチェストー!!とか笑顔でポーズするヒロインを誰が見たいと思うのだ。いや、いないはずだ。
「オレが悪かった!
変なこと言って悪かったよ!!
ディーヴァはディーヴァだ!おれのオレの大切な、たった1人愛するディーヴァだ!!」
「んむ!?」
両の頬を手で挟み、唇を押し付ける。
たった数秒。されど数秒。
与えられた暖かいそれを前に、ディーヴァの心は今のは一体なんだったのだと思わせるほど、あっさりと落ち着きを取り戻した。なんとあっけなく消える台風だ。
「大丈夫、か?」
彷徨っていたその視線を自身に固定させ、顔を覗きこむ瞳。
目覚めさせるためのダンテのキスを受け、ディーヴァの目からは今まで以上に涙が溢れて止まらなかった。
「、うぇ、ひぐっ……びぇぇぇぇぇぇーーーーーっ!!」
「っ!?」
泣き声世界一。その破壊力も抜群だ。
これだけで雑魚悪魔が吹っ飛ぶほどの衝撃波が起こりそうである。
もちろん、実際はそんな事起こらない。
まるで幼な子の癇癪。
強固なコートにシワがよるほど、強く抱きついてきたディーヴァは、どこにそんな水分があったのかと思うほどにガチ泣きタイム独走中。
本気で脱水症状を引き起こすのではないかと、気が気じゃなかった。
「ディーヴァ、泣きやめよ〜〜〜!
干からびちまうぞ……!目だって腫れたらどうするよ……」
キスしたら泣いた。ならばキスはダメ。ハグはもうしている、ダメ。
どうしていいかわからず、ダンテはただただ、その頭を撫でて背をポンポンと叩いた。
赤ん坊のあやしかたがこうだったのかは、わからないが、それでも、もしかしたら遠い未来の予行練習くらいにはなるかもしれない。
「ったくよ〜〜…勘弁してくれよ…………」
そう漏らし、困り顔。
…とはいえ、ダンテが本気で困っているようには見えなかった。
ディーヴァをよしよしするその顔は、どこか嬉しそうである。
繕われたこのぬくもりを、しばらく手放したくはない。
泣き止んで欲しいのは山々だが、今少し見ていたい。堪能したい。
泣き顔すらかわいいのだと、その目は語っていた。
なんという葛藤だろう。
勘弁して欲しい、その言葉は、半分嬉しさからの言葉だった。
『はー………いつまで茶番やってんのさ』
背中からアラストルの呆れ返った声がする。
そう、アラストルからすればこの一連のやりとりは茶番劇だ。
『マスターは好きな相手が本物かどうかもわかんないの?』
「なに?」
『この子が幻影じゃないのも、本物なのも丸わかりじゃん。気配がマジでうす〜くなってるけど、魂が天使の形してる。
彼女天使の血族なんでしょ?』
目ん玉しっかり開けて魂見なよ。その目は飾り?
と、喧嘩を売っているのかと思うアラストルの言い分に、ディーヴァの中身を視る。
棘ある言葉に腹をたてる余裕はない。
ディーヴァを守るためと、ダンテは自分の魔力を纏わせることがあるが、その際に自身の魔力を軽く可視化する。
その応用で、ダンテはかすかにディーヴァの魂の形を見る事もある。
今見ているその魂は、いつも通り穢れる事もなく、太陽の光のように真っ白く輝いていた。
空に浮かぶ太陽のような、それでいて太陽にはあるはずの、黒点のシミひとつない輝き。
「魂……、たしかに、ディーヴァだ。それはオレにもわかる。
注視していなかったが、ディーヴァ本人だ……でも」
『まー、これだけ気配が希薄じゃあ、偽物と勘違いしちゃうの当たり前か。
ましてや、初めて会った俺とちがって、長年一緒にいるならちっさい変化にも気がつく。
余計疑うよねぇ』
「魂までも似せた、よくできた偽ディーヴァに思えちまうくらいだ……」
瞳から次々こぼれ落ちる涙を指先で拭いながら、ダンテはおとなしくアラストルに耳を傾けていた。
が!
ここでアラストルへの怒りがふつふつと沸いてきた。
一気に怒りのボルテージが上がる。
「ってか、ずっとオレ達の会話盗み聞きしてたくせに、何でそんな大事な事言わねぇんだよ!」
『邪魔しちゃ悪いと思って』
「早く言えよ!」
ガツン!
背負ったアラストルの龍の意匠部分を、裏拳でどつく。
そこは顔なので悲鳴も出せなかった。
『ううう、理不尽〜』
「ふん。
……ディーヴァ?」
スンスンというすすり泣きがなくなった。
ようやく涙が止まり始め、そして落ち着いてきたディーヴァ。
これ以上は本当に脱水すると思い焦っていたが、泣き止んでくれてよかった。
喉に刺さった魚の小骨、それよりも小さい、普通なら気がつかないほどの違和感。
「何か引っかかる。ディーヴァの違和感、きっと何かある。今ここを出たら後悔する。放って置けない」
「そういえば違和感があるってずっと言ってたね。……どういうことなの?」
「……今のお前、幻に近いものを感じるんだよ。
会話した感じじゃよくわからない。
触った感じからも、特に変わったところはない。体温も匂いも一緒。
だが、気配が希薄で、吹けば消えそうに存在がふわふわしてる。やっぱり何か違うんだよな……敵意も悪意も、邪悪なもんは何一つ感じないのに」
「まぼろし……なに、それ……」
「隠密部隊に所属しました、って言われても今なら頷けるぞ。
まさか、お前シノビに……クノイチにでもなったか?」
冗談まじりに影がうすい、というのを指摘するダンテ。
だが、ディーヴァはダンテの冗談で笑っていられなかった。
「もしかしてあたし…ホントに幻影か何かなのかな……?
まぼろし、なの?
今は夢でも見てるの……?
これは、あの恐ろしい苦痛や絶望から逃れるための、現実逃避?
じゃあ、あたしは、ホントのあたしは………?」
ぐるぐると考えが巡る。黒いほうへ、暗いほうへ。
目の前までもが闇に染まり始め、比例するように恐怖で体が小刻みにガタガタと震えだす。
「お、おい!
おいディーヴァ、しっかりしろ!?」
腕の中で震え始めたディーヴァを、困惑しながらこちら側に呼び戻すダンテ。
いくら天使とはいえ、闇に足を突っ込み絶望を抱けばそこを悪魔に取り憑かれる。
いや、天使だから最悪は堕天してしまうかもしれない。
堕天すればロダンのようになるに決まっている。天使の頃からあんなナリのわけがない。彼はきっと、堕天したからああなのだ。
ロダンのようにムッキムキでいかつく変わったディーヴァは、絶対に!見たくない。
サイドチェストー!!とか笑顔でポーズするヒロインを誰が見たいと思うのだ。いや、いないはずだ。
「オレが悪かった!
変なこと言って悪かったよ!!
ディーヴァはディーヴァだ!おれのオレの大切な、たった1人愛するディーヴァだ!!」
「んむ!?」
両の頬を手で挟み、唇を押し付ける。
たった数秒。されど数秒。
与えられた暖かいそれを前に、ディーヴァの心は今のは一体なんだったのだと思わせるほど、あっさりと落ち着きを取り戻した。なんとあっけなく消える台風だ。
「大丈夫、か?」
彷徨っていたその視線を自身に固定させ、顔を覗きこむ瞳。
目覚めさせるためのダンテのキスを受け、ディーヴァの目からは今まで以上に涙が溢れて止まらなかった。
「、うぇ、ひぐっ……びぇぇぇぇぇぇーーーーーっ!!」
「っ!?」
泣き声世界一。その破壊力も抜群だ。
これだけで雑魚悪魔が吹っ飛ぶほどの衝撃波が起こりそうである。
もちろん、実際はそんな事起こらない。
まるで幼な子の癇癪。
強固なコートにシワがよるほど、強く抱きついてきたディーヴァは、どこにそんな水分があったのかと思うほどにガチ泣きタイム独走中。
本気で脱水症状を引き起こすのではないかと、気が気じゃなかった。
「ディーヴァ、泣きやめよ〜〜〜!
干からびちまうぞ……!目だって腫れたらどうするよ……」
キスしたら泣いた。ならばキスはダメ。ハグはもうしている、ダメ。
どうしていいかわからず、ダンテはただただ、その頭を撫でて背をポンポンと叩いた。
赤ん坊のあやしかたがこうだったのかは、わからないが、それでも、もしかしたら遠い未来の予行練習くらいにはなるかもしれない。
「ったくよ〜〜…勘弁してくれよ…………」
そう漏らし、困り顔。
…とはいえ、ダンテが本気で困っているようには見えなかった。
ディーヴァをよしよしするその顔は、どこか嬉しそうである。
繕われたこのぬくもりを、しばらく手放したくはない。
泣き止んで欲しいのは山々だが、今少し見ていたい。堪能したい。
泣き顔すらかわいいのだと、その目は語っていた。
なんという葛藤だろう。
勘弁して欲しい、その言葉は、半分嬉しさからの言葉だった。
『はー………いつまで茶番やってんのさ』
背中からアラストルの呆れ返った声がする。
そう、アラストルからすればこの一連のやりとりは茶番劇だ。
『マスターは好きな相手が本物かどうかもわかんないの?』
「なに?」
『この子が幻影じゃないのも、本物なのも丸わかりじゃん。気配がマジでうす〜くなってるけど、魂が天使の形してる。
彼女天使の血族なんでしょ?』
目ん玉しっかり開けて魂見なよ。その目は飾り?
と、喧嘩を売っているのかと思うアラストルの言い分に、ディーヴァの中身を視る。
棘ある言葉に腹をたてる余裕はない。
ディーヴァを守るためと、ダンテは自分の魔力を纏わせることがあるが、その際に自身の魔力を軽く可視化する。
その応用で、ダンテはかすかにディーヴァの魂の形を見る事もある。
今見ているその魂は、いつも通り穢れる事もなく、太陽の光のように真っ白く輝いていた。
空に浮かぶ太陽のような、それでいて太陽にはあるはずの、黒点のシミひとつない輝き。
「魂……、たしかに、ディーヴァだ。それはオレにもわかる。
注視していなかったが、ディーヴァ本人だ……でも」
『まー、これだけ気配が希薄じゃあ、偽物と勘違いしちゃうの当たり前か。
ましてや、初めて会った俺とちがって、長年一緒にいるならちっさい変化にも気がつく。
余計疑うよねぇ』
「魂までも似せた、よくできた偽ディーヴァに思えちまうくらいだ……」
瞳から次々こぼれ落ちる涙を指先で拭いながら、ダンテはおとなしくアラストルに耳を傾けていた。
が!
ここでアラストルへの怒りがふつふつと沸いてきた。
一気に怒りのボルテージが上がる。
「ってか、ずっとオレ達の会話盗み聞きしてたくせに、何でそんな大事な事言わねぇんだよ!」
『邪魔しちゃ悪いと思って』
「早く言えよ!」
ガツン!
背負ったアラストルの龍の意匠部分を、裏拳でどつく。
そこは顔なので悲鳴も出せなかった。
『ううう、理不尽〜』
「ふん。
……ディーヴァ?」
スンスンというすすり泣きがなくなった。
ようやく涙が止まり始め、そして落ち着いてきたディーヴァ。
これ以上は本当に脱水すると思い焦っていたが、泣き止んでくれてよかった。