mission 0:nightmare began ~地獄へのバカンス~
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ーーああ、まただ。
また、変な夢見てるんだ。
目を開けたディーヴァは、それが夢である事を理解していた。
「ここ、森だよね…。それも、前に連れ去られた魔界の、あたしが迷い込んだあの森…」
以前、皆既日食の真っ最中に、闇に紛れて悪魔に魔界へと連れ去られた。魔界、というか実際には魔界と人間界の間である、プルガトリオ…そう呼ばれる狭間に落とされてからの魔界、というとんでもないものだったが。
あの時の助けてくれた『彼女』には、いつか感謝を伝えたいところだ。
夢の中でディーヴァは、魔界を彷徨った時、散々泣き喚いてしまったあの森の中にいた。
暗い、暗い森。空を見上げれば血のような赤が広がる。
あの事件がきっかけでディーヴァは真っ暗闇がより一層トラウマになった。
残念な事に今や美しいとされる日食や月食すらもトラウマである。
…という事は、逆に白夜のあるノルウェーやフィンランドに移住すればいいのでは…?
ずっと昼間とか最高!
だが、確実に寝不足になるだろうし、ディーヴァは寒いのも真っ平御免なのだ…。話が逸れた。
空が赤いのは血だまりの真っ只中にいるみたいで気持ちが悪い。
それでも、暗闇よりはマシだった。
…それにしても相変わらずリアルな夢だ。
テメンニグルに登る前にも、確かこんな風に夢を見た。
あの時は、やけにファンタジックで、でもリアルで。見たあとはなんのことだかわからなかったが、今ならわかる。
テメンニグルで起こる事、出会う悪魔、それをあの夢は表していた。
今回もそのパターンかもしれない。
普段見るなんでもない夢とこの予知夢にも似たリアルな夢。理由は特にないけれど違うものだと、本能的に理解していた。
リアルすぎて匂いも感じる。
連れ去られた時に感じた、触れた物の全てが、五感を刺激する。
足元の草を踏む感触。指に触れる木肌の苔むした湿り気も恐ろしいまでにそのままで。
夢とわかっているからまだいい。
…とは、建前。
その膝は、恐怖でカクカクと笑ってしまっていた。
グルルルル。
「!」
その時、ディーヴァの脳に恐怖の記憶が蘇った。
スコルとハティ、狼型の2匹の悪魔が凄惨な方法でより巨大な狼、闇よりも暗い漆黒の悪魔になった姿。マーガナルムという悪魔が発するうなり声が近くから聞こえた。
ドッドッドッ、心臓が早鐘を打つ。
心臓が送り出す血潮とその振動すら、本物のようで夢とわかろうが、現実に感じるくらいだ。
あの悪魔には相当な目にあわされた。
マーガナルムと対峙した時、そばにはダンテがいて、死闘の末勝利した。
しかし、今はダンテの姿は見えない。普段の夢ならばディーヴァが思い描く通りに救世主が現れようも、期待はできない。
夢でも食べられるのはごめんだ。
なら、逃げるしかない。
木を掴む指に力が入る。
ジメジメした苔が爪の間を汚すが、そんな事を気にするどころじゃない。
目がさめる、それまでは。
予知の全貌が明らかになるまでは。
震える足に叱咤して、この夢の終着点まで駆け抜けるしかないのだ。
足を動かすと、背後のマーナガルムが動き出す音が聞こえた。
やはり、ディーヴァに気がついている。…追ってきている。
現実には助かったが、夢の中でも助かるとは限らない。
捕まったら、絶対に殺される。獲物として食べられる。
これだけリアルだと、痛みは痛みとして、痛いだろう。
殺される、その映像がいったいどんな予知として活かされるのかはわからないが、痛い思いはしたくない。
「逃げ、なきゃ…!」
ウサギは天敵から逃げきるために、一直線でなくジグザグに動く。
その要領で手足を懸命に動かし、ディーヴァは森の中をジグザグに駆け抜けた。
グルグルとうなり声とその息遣いが近い。
あの時に浮かんだ涙が、今もまた目の端に浮かんで、走り抜ける風で後ろへと置き去りにされていく。
じっとりとかく汗、獣の息遣いよりも早くなっていく自身の呼吸に、逃げ切ることは容易ではないと気がつく。
「予知夢だか逆夢だかもうなんでもいい!夢なら覚めてよ…!」
次々溢れる涙はとうとう前が見えなくなるほどに視界を滲ませた。
せめてダンテが夢の中に来てくれたら…!
「きゃっ!?」
そう思い馳せながら走っていると、鼻頭を何か硬いものにドン!とぶつけ、バウンドしてその場に尻餅をついてしまった。
黒いスカートが、地面の苔でじんわり湿ってきて、漏らしたかのようになるのが不快だ。
尻の濡れる原因となったであろう、目の前の障害物を睨みつけようと見上げると、そこには赤と銀。
顔は見えない。が、赤いコートに銀糸の髪。そう、ダンテがこちらに背を向けた状態で立っていた。
「ダンテ!?」
ダンテが来てくれたらと、ちょうど考えていたところで、本人登場だ。
やはり自分の夢は、自身で管理できるのかもしれない。
ならばこれは、単なる恐怖の記憶をなぞる夢?これから先に起こる事を示唆している夢ではない??
どちらにせよ、ダンテという心強い味方さえいればディーヴァは一安心だ。
「ああ、よかった…!ダンテいたんだね!夢だけど会えてよかったー!
あのね、前に倒した悪魔が追ってきてるの!」
請うようにすがりつくも、ダンテは無反応。
やけに冷たいその温度。
いつもならば、ダンテの少し高めの体温がコートにも移っていてほんのり温かみのあるそれ。
ズルリ…、ガチャン!
ダンテが右手に携えていたリベリオンが、地面に落ちて鈍く音を立てた。
その重量感に地が抉れるのがよく見えた。そして、落ちた先からじわじわと黒く変わる、土の色。
「え…?」
血だ。血が付いている。
だが、刃先ではない。付いているのは持ち手の部分。
視線をリベリオンそのものから持ち手の収まっていた場所へ移して息を飲んだ。
重力のままだらりと垂れ下がるその手からは、ぽたり、ぽたりと血が滴り落ちていたのだ。
「ダ、…ンテ……?」
震える手を離し、笑う膝を叱咤し、ゆっくりとダンテの前へ回る。
「っ!!?
きゃ、きゃぁぁああ!!」
逆光で分かりづらいダンテの顔は、蒼白で。
心臓が収まっているはずの胸には大きな穴があき、コートの裏地が向こう側に見えていた。
そこからも口からもごぼり、こぼりと赤黒い血が噴出すようにして流れ落ちている。
ダラダラと滴る血は、酸素に触れてドロドロと流れを悪くし、黒く染まっていく。それはダンテの足元までゆっくりと到達するところだった。
心臓がない。ディーヴァにもわかる。
もう、ダンテは死んでいた。
「やだぁ!!夢…夢だからってこんなのおかしい!変!!
誰か…誰か……!」
ディーヴァはダンテの亡骸にすがりつくことも忘れ、その場を駆け出した。
誰か、起こして。
そう願いながら。
また、変な夢見てるんだ。
目を開けたディーヴァは、それが夢である事を理解していた。
「ここ、森だよね…。それも、前に連れ去られた魔界の、あたしが迷い込んだあの森…」
以前、皆既日食の真っ最中に、闇に紛れて悪魔に魔界へと連れ去られた。魔界、というか実際には魔界と人間界の間である、プルガトリオ…そう呼ばれる狭間に落とされてからの魔界、というとんでもないものだったが。
あの時の助けてくれた『彼女』には、いつか感謝を伝えたいところだ。
夢の中でディーヴァは、魔界を彷徨った時、散々泣き喚いてしまったあの森の中にいた。
暗い、暗い森。空を見上げれば血のような赤が広がる。
あの事件がきっかけでディーヴァは真っ暗闇がより一層トラウマになった。
残念な事に今や美しいとされる日食や月食すらもトラウマである。
…という事は、逆に白夜のあるノルウェーやフィンランドに移住すればいいのでは…?
ずっと昼間とか最高!
だが、確実に寝不足になるだろうし、ディーヴァは寒いのも真っ平御免なのだ…。話が逸れた。
空が赤いのは血だまりの真っ只中にいるみたいで気持ちが悪い。
それでも、暗闇よりはマシだった。
…それにしても相変わらずリアルな夢だ。
テメンニグルに登る前にも、確かこんな風に夢を見た。
あの時は、やけにファンタジックで、でもリアルで。見たあとはなんのことだかわからなかったが、今ならわかる。
テメンニグルで起こる事、出会う悪魔、それをあの夢は表していた。
今回もそのパターンかもしれない。
普段見るなんでもない夢とこの予知夢にも似たリアルな夢。理由は特にないけれど違うものだと、本能的に理解していた。
リアルすぎて匂いも感じる。
連れ去られた時に感じた、触れた物の全てが、五感を刺激する。
足元の草を踏む感触。指に触れる木肌の苔むした湿り気も恐ろしいまでにそのままで。
夢とわかっているからまだいい。
…とは、建前。
その膝は、恐怖でカクカクと笑ってしまっていた。
グルルルル。
「!」
その時、ディーヴァの脳に恐怖の記憶が蘇った。
スコルとハティ、狼型の2匹の悪魔が凄惨な方法でより巨大な狼、闇よりも暗い漆黒の悪魔になった姿。マーガナルムという悪魔が発するうなり声が近くから聞こえた。
ドッドッドッ、心臓が早鐘を打つ。
心臓が送り出す血潮とその振動すら、本物のようで夢とわかろうが、現実に感じるくらいだ。
あの悪魔には相当な目にあわされた。
マーガナルムと対峙した時、そばにはダンテがいて、死闘の末勝利した。
しかし、今はダンテの姿は見えない。普段の夢ならばディーヴァが思い描く通りに救世主が現れようも、期待はできない。
夢でも食べられるのはごめんだ。
なら、逃げるしかない。
木を掴む指に力が入る。
ジメジメした苔が爪の間を汚すが、そんな事を気にするどころじゃない。
目がさめる、それまでは。
予知の全貌が明らかになるまでは。
震える足に叱咤して、この夢の終着点まで駆け抜けるしかないのだ。
足を動かすと、背後のマーナガルムが動き出す音が聞こえた。
やはり、ディーヴァに気がついている。…追ってきている。
現実には助かったが、夢の中でも助かるとは限らない。
捕まったら、絶対に殺される。獲物として食べられる。
これだけリアルだと、痛みは痛みとして、痛いだろう。
殺される、その映像がいったいどんな予知として活かされるのかはわからないが、痛い思いはしたくない。
「逃げ、なきゃ…!」
ウサギは天敵から逃げきるために、一直線でなくジグザグに動く。
その要領で手足を懸命に動かし、ディーヴァは森の中をジグザグに駆け抜けた。
グルグルとうなり声とその息遣いが近い。
あの時に浮かんだ涙が、今もまた目の端に浮かんで、走り抜ける風で後ろへと置き去りにされていく。
じっとりとかく汗、獣の息遣いよりも早くなっていく自身の呼吸に、逃げ切ることは容易ではないと気がつく。
「予知夢だか逆夢だかもうなんでもいい!夢なら覚めてよ…!」
次々溢れる涙はとうとう前が見えなくなるほどに視界を滲ませた。
せめてダンテが夢の中に来てくれたら…!
「きゃっ!?」
そう思い馳せながら走っていると、鼻頭を何か硬いものにドン!とぶつけ、バウンドしてその場に尻餅をついてしまった。
黒いスカートが、地面の苔でじんわり湿ってきて、漏らしたかのようになるのが不快だ。
尻の濡れる原因となったであろう、目の前の障害物を睨みつけようと見上げると、そこには赤と銀。
顔は見えない。が、赤いコートに銀糸の髪。そう、ダンテがこちらに背を向けた状態で立っていた。
「ダンテ!?」
ダンテが来てくれたらと、ちょうど考えていたところで、本人登場だ。
やはり自分の夢は、自身で管理できるのかもしれない。
ならばこれは、単なる恐怖の記憶をなぞる夢?これから先に起こる事を示唆している夢ではない??
どちらにせよ、ダンテという心強い味方さえいればディーヴァは一安心だ。
「ああ、よかった…!ダンテいたんだね!夢だけど会えてよかったー!
あのね、前に倒した悪魔が追ってきてるの!」
請うようにすがりつくも、ダンテは無反応。
やけに冷たいその温度。
いつもならば、ダンテの少し高めの体温がコートにも移っていてほんのり温かみのあるそれ。
ズルリ…、ガチャン!
ダンテが右手に携えていたリベリオンが、地面に落ちて鈍く音を立てた。
その重量感に地が抉れるのがよく見えた。そして、落ちた先からじわじわと黒く変わる、土の色。
「え…?」
血だ。血が付いている。
だが、刃先ではない。付いているのは持ち手の部分。
視線をリベリオンそのものから持ち手の収まっていた場所へ移して息を飲んだ。
重力のままだらりと垂れ下がるその手からは、ぽたり、ぽたりと血が滴り落ちていたのだ。
「ダ、…ンテ……?」
震える手を離し、笑う膝を叱咤し、ゆっくりとダンテの前へ回る。
「っ!!?
きゃ、きゃぁぁああ!!」
逆光で分かりづらいダンテの顔は、蒼白で。
心臓が収まっているはずの胸には大きな穴があき、コートの裏地が向こう側に見えていた。
そこからも口からもごぼり、こぼりと赤黒い血が噴出すようにして流れ落ちている。
ダラダラと滴る血は、酸素に触れてドロドロと流れを悪くし、黒く染まっていく。それはダンテの足元までゆっくりと到達するところだった。
心臓がない。ディーヴァにもわかる。
もう、ダンテは死んでいた。
「やだぁ!!夢…夢だからってこんなのおかしい!変!!
誰か…誰か……!」
ディーヴァはダンテの亡骸にすがりつくことも忘れ、その場を駆け出した。
誰か、起こして。
そう願いながら。