mission 6:phobia of bugs and flies ~ちょっと匂う再会~
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「つめてぇ」
ピチョン。
天井のパイプからの雫が、ダンテの頭に落ちた。
…冷たいのは、今更か。
憂鬱なる魂の扉をくぐり抜けたその先、そこは地下水路だった。
もともと汚水が溜まっていた階段塔の床だったが、扉を開けた瞬間、水路の中からさらに水が入り込んできた。
水の浸入からは逃れられず、ダンテの服がびっしょりと濡れた。
思えば、ここに来てから海に落とされたり、噴水で濡れたりと、水も滴るイイオトコになってばかりである。
そのうち生乾きの匂いがして来そうだとは、思っても言ってはいけない。
これから先もまだ、全身ずぶ濡れになるような事が待ち受けているのを、ダンテは知らない……。
『進み辛そうだね。服重そー』
「重さより、張り付いた感触がイライラする」
たしかに、足元の水を吸ってコートが、ズボンが、何もかもがずぶ濡れで少し重く、そして肌に張り付いて邪魔だ。
重さと気持ち悪さで動きを制限されそうだが、これは合皮という分厚い生地が防御にも一役買っているのだ。だからといって脱ぐわけがない。
そもそも赤いロングコートはオレのトレードマークだ。アイデンティティだ。
水分による重さより、肌に張り付く布地よりも。
「さらに嫌なのはこれだ」
『…臭いでしょ?』
意を決して地下水路を進み始めていたダンテが一番こたえたのは、この水路に充満する下水のような臭いである。
流れが滞っていないだけまだましなのだが、それでも臭い。
くさすぎるため、文字も匂いではなく、臭いと言わせてもらおう。
長らく掃除ひとつ為されていなかったであろうここには、湿った空気により壁に生えたカビ、水気を含み塊になった埃、流れが緩やかな場所や角に溜まる汚いヘドロから立ち上る臭い。
そして臭気で湿気飽和状態、頭の上に臭くて冷たい水滴を垂らす、天井の空気が漂う有様だ。
「あー汚いし、汚い。クセェ・オブ・クセェ。
無駄に鼻がいいと、こういう時困るよな…鼻がもげそうだ」
『鼻削ぎ落とせばいいんじゃねー』
「人ごとだと思いやがって。お前の顔を砥石でけずり落とすぞ」
『…あだっ!殴るなんてひどい』
人よりも五感の優れているダンテだからこその嗅覚の辛さ。
けずり落としはしないが、とりあえずアラストルの顔らしい柄、そこに彫られた龍の意匠を殴りつけておいた。
何が出てくるかわからないような仄暗い地下水路。普通の人間ならば、水音すらなるべく立てないよう進むだろうが、半分悪魔、怖いもの知らずのダンテにそんな真似必要ない。
水が溜まったそこをバシャバシャと大きな音を立てて進むダンテ。
「この城で使われてる水はここから送られてるんだろうなぁ〜。
どこか外に繋がっていそうだ…」
などと、間延びして答えるほど。
とはいえ、鉄柵が多すぎてどこが外に繋がる道かわからない。
下手に進んで迷うのはごめんだし、何よりディーヴァがいるのはこの島の外ではない。内側だ。
よって正規のルートを使うしかない。
正規のルート、とはいえ。
「一つ思ったんだが」
『ん?』
「こっちで道合ってるのか?この地下水路で」
『知るわけないじゃん。進めるところがここしかなかったっしょ?』
確かに、他に進めそうなところはどこにもなかったし、憂鬱なる魂をセットする場所はこの地下水路の入口だった。
つまり、どう転んでも次のステージを指し示す場所は、ここ以外なかったということ。
「ふむ。進みながら調べていけば、何かわかるかもしれない…。
こういうところまで調べるってのはお使いゲームの定石だからな」
どんな些細な変化も、どんな小さなアイテムも、取りこぼす訳にはいかない。
ロスタイムは死のカウントダウンが早まる。
ダンテは、目を皿のようにしながらも、先を急いだ。
「おっと行き止まりか」
デカ目の扉が前に立ちふさがる。
……が。
ガチャガチャガチャ!
『鍵かかってるやん!』
「……だな。こんな地下水路の扉、弾や斬撃ひとつで破壊できそうなんだが」
ダンッダンッ!
ガキィィィン!!
『ぁいたっ!?』
「こういうのって、まるで悪魔の封印かかってるみたいに弾かれちまうんだよな。うん、知ってた……」
『知ってるならやらないで!?俺痛いんだけど!
つか、鍵探すったって、こんな場所でどーすんの!まさか今度はどぶさらいして探せと!?
どこの清掃員だ!!』
斬れないものに刃が当たると結構痛いようだ。
アラストルは、痛みからか、キーキーと鍵への文句たらたらで騒ぎ立てた。
「落ち着けよ、どうせまだ行ってないあの扉の向こうだろ。
それに、どぶさらいするとしても、どうせお前じゃなくて、オレだろが。
オレが騒ぐならわかるがお前が騒いでどーする」
あとで見ればいいかと思い、とりあえず先に進んだ事で行き逃した小さな扉がある。
その場所を探せば、多分鍵、もしくは何か手がかりがあるはずだ。
…にちゃ。
「うわ、苔でぬめってやがる。ドアノブきったねぇ。
って、あーあ。一張羅がどんどん薄汚れてくぜ」
小さな扉のドアノブ。
手にしたそれは、やたら汚かった。
その汚さが我慢できず、ついつい、そばにあった自分のコートになびってしまった……OHH……。
「くそー…こんなくせぇとこ、はやく出たいもんだ。
このままじゃ、ファ●リーズでも臭いすらとれなくなる」
『……最終兵器ファ●リーズ先輩でも消せない臭いってやばいよね』
中に入れば、壁にたくさんのパイプ配管出口が突き出る広い空間が広がっていた。
そこからビチャビチャと流れ落ちてくる汚水が、ただでさえ臭い地下水路を、余計に臭くしていた。
だが、臭い的に洗面所の汚水が流れ落ちる場所ではなさそうでひどく安心している。
奥の暗がりに設置されたパイプ配管のひとつ、そこに何か光っている。
目を凝らして見るだけではだめだ。近づいて手に取ると、それこそが探していた鍵だった。
流れる水にさらされ、少ない光を反射していたようだ。
「ったく、こんなところにあった。
誰だよこんな場所に放置した奴……鍵はキーフックにかけとけよ。
ディーヴァに叱られるぞ」
依頼などから帰ったあと、鍵やコートをきちんと片付けないと、愛しの彼女に怒られてしまうダンテ。
その慣習はダンテにしっかりと根付いているようで何より。
『ははは!
でも、どぶさらいしないですんでよかったじゃん』
「まぁなー」
どぶさらいしていた場合、その道具はアラストル以外の長物がなかったであろう事を、アラストル本刃は知らない。
「にしてもまた古びた鍵か…これボロっちいから一回使うとブッ壊れるんだよな。
なのに、この城この鍵すげー必要だし。誰かスペアを今すぐ作ってくれねぇかな…」
『コピー能力持ってる桃色の丸い生き物とか、スライムみたいなナリの薄紫ののっぺり顔とか?』
「そうそいつら。会社やキャラクター名出したらアウトだが」
名前だしたら違う悪魔が直々にダンテを滅しに行くことだろう。
ピチョン。
天井のパイプからの雫が、ダンテの頭に落ちた。
…冷たいのは、今更か。
憂鬱なる魂の扉をくぐり抜けたその先、そこは地下水路だった。
もともと汚水が溜まっていた階段塔の床だったが、扉を開けた瞬間、水路の中からさらに水が入り込んできた。
水の浸入からは逃れられず、ダンテの服がびっしょりと濡れた。
思えば、ここに来てから海に落とされたり、噴水で濡れたりと、水も滴るイイオトコになってばかりである。
そのうち生乾きの匂いがして来そうだとは、思っても言ってはいけない。
これから先もまだ、全身ずぶ濡れになるような事が待ち受けているのを、ダンテは知らない……。
『進み辛そうだね。服重そー』
「重さより、張り付いた感触がイライラする」
たしかに、足元の水を吸ってコートが、ズボンが、何もかもがずぶ濡れで少し重く、そして肌に張り付いて邪魔だ。
重さと気持ち悪さで動きを制限されそうだが、これは合皮という分厚い生地が防御にも一役買っているのだ。だからといって脱ぐわけがない。
そもそも赤いロングコートはオレのトレードマークだ。アイデンティティだ。
水分による重さより、肌に張り付く布地よりも。
「さらに嫌なのはこれだ」
『…臭いでしょ?』
意を決して地下水路を進み始めていたダンテが一番こたえたのは、この水路に充満する下水のような臭いである。
流れが滞っていないだけまだましなのだが、それでも臭い。
くさすぎるため、文字も匂いではなく、臭いと言わせてもらおう。
長らく掃除ひとつ為されていなかったであろうここには、湿った空気により壁に生えたカビ、水気を含み塊になった埃、流れが緩やかな場所や角に溜まる汚いヘドロから立ち上る臭い。
そして臭気で湿気飽和状態、頭の上に臭くて冷たい水滴を垂らす、天井の空気が漂う有様だ。
「あー汚いし、汚い。クセェ・オブ・クセェ。
無駄に鼻がいいと、こういう時困るよな…鼻がもげそうだ」
『鼻削ぎ落とせばいいんじゃねー』
「人ごとだと思いやがって。お前の顔を砥石でけずり落とすぞ」
『…あだっ!殴るなんてひどい』
人よりも五感の優れているダンテだからこその嗅覚の辛さ。
けずり落としはしないが、とりあえずアラストルの顔らしい柄、そこに彫られた龍の意匠を殴りつけておいた。
何が出てくるかわからないような仄暗い地下水路。普通の人間ならば、水音すらなるべく立てないよう進むだろうが、半分悪魔、怖いもの知らずのダンテにそんな真似必要ない。
水が溜まったそこをバシャバシャと大きな音を立てて進むダンテ。
「この城で使われてる水はここから送られてるんだろうなぁ〜。
どこか外に繋がっていそうだ…」
などと、間延びして答えるほど。
とはいえ、鉄柵が多すぎてどこが外に繋がる道かわからない。
下手に進んで迷うのはごめんだし、何よりディーヴァがいるのはこの島の外ではない。内側だ。
よって正規のルートを使うしかない。
正規のルート、とはいえ。
「一つ思ったんだが」
『ん?』
「こっちで道合ってるのか?この地下水路で」
『知るわけないじゃん。進めるところがここしかなかったっしょ?』
確かに、他に進めそうなところはどこにもなかったし、憂鬱なる魂をセットする場所はこの地下水路の入口だった。
つまり、どう転んでも次のステージを指し示す場所は、ここ以外なかったということ。
「ふむ。進みながら調べていけば、何かわかるかもしれない…。
こういうところまで調べるってのはお使いゲームの定石だからな」
どんな些細な変化も、どんな小さなアイテムも、取りこぼす訳にはいかない。
ロスタイムは死のカウントダウンが早まる。
ダンテは、目を皿のようにしながらも、先を急いだ。
「おっと行き止まりか」
デカ目の扉が前に立ちふさがる。
……が。
ガチャガチャガチャ!
『鍵かかってるやん!』
「……だな。こんな地下水路の扉、弾や斬撃ひとつで破壊できそうなんだが」
ダンッダンッ!
ガキィィィン!!
『ぁいたっ!?』
「こういうのって、まるで悪魔の封印かかってるみたいに弾かれちまうんだよな。うん、知ってた……」
『知ってるならやらないで!?俺痛いんだけど!
つか、鍵探すったって、こんな場所でどーすんの!まさか今度はどぶさらいして探せと!?
どこの清掃員だ!!』
斬れないものに刃が当たると結構痛いようだ。
アラストルは、痛みからか、キーキーと鍵への文句たらたらで騒ぎ立てた。
「落ち着けよ、どうせまだ行ってないあの扉の向こうだろ。
それに、どぶさらいするとしても、どうせお前じゃなくて、オレだろが。
オレが騒ぐならわかるがお前が騒いでどーする」
あとで見ればいいかと思い、とりあえず先に進んだ事で行き逃した小さな扉がある。
その場所を探せば、多分鍵、もしくは何か手がかりがあるはずだ。
…にちゃ。
「うわ、苔でぬめってやがる。ドアノブきったねぇ。
って、あーあ。一張羅がどんどん薄汚れてくぜ」
小さな扉のドアノブ。
手にしたそれは、やたら汚かった。
その汚さが我慢できず、ついつい、そばにあった自分のコートになびってしまった……OHH……。
「くそー…こんなくせぇとこ、はやく出たいもんだ。
このままじゃ、ファ●リーズでも臭いすらとれなくなる」
『……最終兵器ファ●リーズ先輩でも消せない臭いってやばいよね』
中に入れば、壁にたくさんのパイプ配管出口が突き出る広い空間が広がっていた。
そこからビチャビチャと流れ落ちてくる汚水が、ただでさえ臭い地下水路を、余計に臭くしていた。
だが、臭い的に洗面所の汚水が流れ落ちる場所ではなさそうでひどく安心している。
奥の暗がりに設置されたパイプ配管のひとつ、そこに何か光っている。
目を凝らして見るだけではだめだ。近づいて手に取ると、それこそが探していた鍵だった。
流れる水にさらされ、少ない光を反射していたようだ。
「ったく、こんなところにあった。
誰だよこんな場所に放置した奴……鍵はキーフックにかけとけよ。
ディーヴァに叱られるぞ」
依頼などから帰ったあと、鍵やコートをきちんと片付けないと、愛しの彼女に怒られてしまうダンテ。
その慣習はダンテにしっかりと根付いているようで何より。
『ははは!
でも、どぶさらいしないですんでよかったじゃん』
「まぁなー」
どぶさらいしていた場合、その道具はアラストル以外の長物がなかったであろう事を、アラストル本刃は知らない。
「にしてもまた古びた鍵か…これボロっちいから一回使うとブッ壊れるんだよな。
なのに、この城この鍵すげー必要だし。誰かスペアを今すぐ作ってくれねぇかな…」
『コピー能力持ってる桃色の丸い生き物とか、スライムみたいなナリの薄紫ののっぺり顔とか?』
「そうそいつら。会社やキャラクター名出したらアウトだが」
名前だしたら違う悪魔が直々にダンテを滅しに行くことだろう。