mission 5:various types of soul ~魂と命のタイムリミットは…~
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死んだと思った。
ひんやりと痛みもある、刺すような冷たい床の感触にディーヴァは目を覚ました。
「……あれ?服が真っ白に戻ってる」
視界に飛び込むのは、あんなにも真っ赤だった服の、ブリーチ剤でもつけたかのように真っ白な姿。おニューかなと思うほど驚きの白さ。
赤いものといえば、ダンテからもらった真っ赤なストール、そしてネックレスに光るガーネットだけだ。
「着替えたんだっけ?それとも似た服に着替えさせられた??」
記憶がない。
血を死ぬほど失って、死んだかも。そう思ったところまでしか記憶がない。
ここは着替えさせられた、ということにしておこう。誰が着替えさせたのかについてはこの際考えないでおく。
あまりにも血染めで見られたものではなかった事だし、綺麗になっているのであればいいやと、そう思うことにした。
あんなに痛かった蔦もない。棘もない。つまり断続的なあの痛みがないのだから。
ふわふわしているし、妙に気だるいが体は元気そのもの、なのだから……。
「おなかすいてるような気がする……」
気がする、ではない。実際に腹の虫は大合唱。
幽閉されているとは思えないほど広くなった行動範囲。
最初の部屋から鏡状の扉で移動できる場所が増えた。
どうせ逃げられやしない、と思われているのだろう。実際簡単には逃げられないし。
歩き回るのが少しでも許可されている今、やれるのは料理だけ。
食べるのも好き、料理も好き。なら、自分の腹の虫を抑えるためにも食事を作るのが一番だ。それに、何かに没頭していれば、気持ちも落ち着く。
簡易的なキッチンのある場所へ、ディーヴァは急いだ。
「また何か作っているのか」
そろそろできたかと、味見用のスプーンを手にしていれば、冷徹な顔の男が顔を覗かせた。
「あ。グリフォンさん。
よかったら味見してみますー?」
悪魔とはいえ、人間の食事、思考と色々なことに興味があるようだ。
人間側の気持ちを代弁すると、こちらも悪魔の食事や思考が気になるところなのだが。
「む、美味い」
「ならよかったぁ…」
「………お前……、それ、」
その時、スプーンを取り落す勢いで手を硬直させ、細い目を丸くしてこちらを凝視するグリフォン。
悪魔に毒な食材は使っていないはずだが……。
「??何か気になるところありました?」
「………いや、なんでもない」
鍋の中身ではない、こちらを見て何かに驚いているようだった。
驚いたあと、気の毒そうな顔を向けられてしまった。
なんだなんだ、すごく気になるではないか。
だが、相手は悪魔。しつこく聞くと嫌われるどころか物理で首チョンパだと思う。
詳しく聞かないでおこう。
その時、グリフォンに次ぎ、どこか草臥れた空気を全身ににじませたネロアンジェロがやってきた。
みんな食べ物の匂いにつられたのだろうか。
しかたない、食欲をそそる香りは万国共通、種族も関係ない。
「なんだか、……とっても疲れてます?
飴ちゃんいる?あ、飴はないから味見いる??」
「要らん、気にするな」
「でも、」
「気、に、す、る、な」
「アッハイ」
そこまで言われれば黙るしかない。
ちょうど、食事を欲しがる雛鳥も隣で口を開けていることだし。
おっと、言い方間違えた。
隣でテーブル席に座ったグリフォンが、さっさと寄越せとこっちを睨んでいることだし。
おおこわい。
そんなディーヴァを見ながら、ネロアンジェロは固い鎧の下で、疲れをにじませつつ、悲しみのようなそれでいて悔しげな顔をあらわにしていた。
赤は心を乱し、狂わせる。
ディーヴァの胸元に揺れる赤と白のそれや、ディーヴァが羽織る赤いストール。それもまた、心を大きく掻き乱す。
あと一歩。
あと少しで、侵入者を。赤を纏うあの男を。
憎い半身を仕留め、奴から永遠にディーヴァを奪えたのに。
半身?奪う?
自分で思ったことだが、意味がわからない。
なぜ半身などと思ったのか、なぜ奪うという表現なのか。
俺は生まれつき悪魔だし、ディーヴァを獲物として欲しいなどと思ってはいない。
アレは俺の獲物ではなく、魔帝のモノ。そう言い聞かせるべきなのだ…。
それに、今のディーヴァはみたところ、普通の人間とはかけ離れているのだから。
グリフォンが人間の食事に辛口コメントしながらも舌鼓をうっていると、そのうちもう一人の魔帝の腹心が戻ってきた。
ファントムだ。
なんだここはいつから悪魔たちの愉快な食卓になった。いつから憩いの場になった。
悪魔たちを和ませてしまう天使の力ってすごいと思う今日この頃。いや天使関係ないか。
「くそ!だから自分の子供を城の中に遊ばせておくのはいやだと言ったのに!ここは保育所じゃないぞマネアラァ!
何匹もいるとはいえ、かわいい子供にあんな真似をしたあの男許さん!!
しかし強かった!!腹立たしい!!次は!負けん!!」
だが、戻ってきたファントムはやけに気が立って大声をあげてテーブルに手を叩きつけていた。口から火でも吹きそうだし、叩く衝撃でいつ隣で食事中のグリフォンが怒りださないかヒヤヒヤもする。
ネロアンジェロといい、ファントムといい、一体どうしたというのか。様子がおかしい。
二人共に、ダンテという侵入者との戦闘が原因なのだが、それをディーヴァは知らない。
「お茶どうぞ」
「…あとその……メシも頼む」
「あ、はい。そう思って今用意してます」
目の前に置いた、暖かい食事。
それを一口食べ、ふにゃり。ディーヴァは表情筋が緩んでいるのを見てしまった。
笑った。目尻に柔らかな皺を寄せて、悪魔たるファントムが笑った。
「…美味い。
妻が用意する食事にゃ負けるが、その次に美味い!子供にも食わせてやりたいなぁ」
「ありがとう、ございます」
悪魔は怖い。怖い…のだが。
悪魔や種族、そういうのを抜きにしたら、この人(人じゃなくて悪魔か)は、愛妻家で子煩悩な父親なのだろう。
正直そう思えたし、そう見えた。
今は亡き、自分の父親を思い出した。
「家にかえりてぇ。妻が巨体を揺らしてそのへんを闊歩して歩く、あの温かい場所に」
食事も終え、腹も満たされ落ち着いた様子のファントムが、魔界の一角に置いてきたという妻とやらについてぼそりと漏らした。
悪魔自ら身の上話など珍しい。
グリフォンとファントムの食後の茶を、そしてネロアンジェロへ追加の茶を給仕していたディーヴァも、悪魔たちもその言葉に耳を傾ける。
「温かい場所?
貴様のいる場所は温かいではすまんだろう。
でかい蜘蛛が吐き出す炎で一面焼け野原」
「煉獄と違って常に火の海ってわけではないぞ!それに妻の炎は温かいだろうが!」
「ほのおタイプじゃないやつからみれば暑苦しい!
ましてや住んでいる悪魔は、虫やらハエトリソウやらムカデやら異形ばかり。きっしょく悪いったらありゃしねェ!」
「仲間を愚弄する気か!!」
ぺっ、と吐き出すようにグリフォンが言えば、真っ赤な顔をして抗議するファントム。
グリフォンはそれを毒を吐いて涼しい顔で受け流す。素が出てしまっているが。
対して、ネロアンジェロは、我関せずと仮面の隙間から茶を啜るのみだった。
ひんやりと痛みもある、刺すような冷たい床の感触にディーヴァは目を覚ました。
「……あれ?服が真っ白に戻ってる」
視界に飛び込むのは、あんなにも真っ赤だった服の、ブリーチ剤でもつけたかのように真っ白な姿。おニューかなと思うほど驚きの白さ。
赤いものといえば、ダンテからもらった真っ赤なストール、そしてネックレスに光るガーネットだけだ。
「着替えたんだっけ?それとも似た服に着替えさせられた??」
記憶がない。
血を死ぬほど失って、死んだかも。そう思ったところまでしか記憶がない。
ここは着替えさせられた、ということにしておこう。誰が着替えさせたのかについてはこの際考えないでおく。
あまりにも血染めで見られたものではなかった事だし、綺麗になっているのであればいいやと、そう思うことにした。
あんなに痛かった蔦もない。棘もない。つまり断続的なあの痛みがないのだから。
ふわふわしているし、妙に気だるいが体は元気そのもの、なのだから……。
「おなかすいてるような気がする……」
気がする、ではない。実際に腹の虫は大合唱。
幽閉されているとは思えないほど広くなった行動範囲。
最初の部屋から鏡状の扉で移動できる場所が増えた。
どうせ逃げられやしない、と思われているのだろう。実際簡単には逃げられないし。
歩き回るのが少しでも許可されている今、やれるのは料理だけ。
食べるのも好き、料理も好き。なら、自分の腹の虫を抑えるためにも食事を作るのが一番だ。それに、何かに没頭していれば、気持ちも落ち着く。
簡易的なキッチンのある場所へ、ディーヴァは急いだ。
「また何か作っているのか」
そろそろできたかと、味見用のスプーンを手にしていれば、冷徹な顔の男が顔を覗かせた。
「あ。グリフォンさん。
よかったら味見してみますー?」
悪魔とはいえ、人間の食事、思考と色々なことに興味があるようだ。
人間側の気持ちを代弁すると、こちらも悪魔の食事や思考が気になるところなのだが。
「む、美味い」
「ならよかったぁ…」
「………お前……、それ、」
その時、スプーンを取り落す勢いで手を硬直させ、細い目を丸くしてこちらを凝視するグリフォン。
悪魔に毒な食材は使っていないはずだが……。
「??何か気になるところありました?」
「………いや、なんでもない」
鍋の中身ではない、こちらを見て何かに驚いているようだった。
驚いたあと、気の毒そうな顔を向けられてしまった。
なんだなんだ、すごく気になるではないか。
だが、相手は悪魔。しつこく聞くと嫌われるどころか物理で首チョンパだと思う。
詳しく聞かないでおこう。
その時、グリフォンに次ぎ、どこか草臥れた空気を全身ににじませたネロアンジェロがやってきた。
みんな食べ物の匂いにつられたのだろうか。
しかたない、食欲をそそる香りは万国共通、種族も関係ない。
「なんだか、……とっても疲れてます?
飴ちゃんいる?あ、飴はないから味見いる??」
「要らん、気にするな」
「でも、」
「気、に、す、る、な」
「アッハイ」
そこまで言われれば黙るしかない。
ちょうど、食事を欲しがる雛鳥も隣で口を開けていることだし。
おっと、言い方間違えた。
隣でテーブル席に座ったグリフォンが、さっさと寄越せとこっちを睨んでいることだし。
おおこわい。
そんなディーヴァを見ながら、ネロアンジェロは固い鎧の下で、疲れをにじませつつ、悲しみのようなそれでいて悔しげな顔をあらわにしていた。
赤は心を乱し、狂わせる。
ディーヴァの胸元に揺れる赤と白のそれや、ディーヴァが羽織る赤いストール。それもまた、心を大きく掻き乱す。
あと一歩。
あと少しで、侵入者を。赤を纏うあの男を。
憎い半身を仕留め、奴から永遠にディーヴァを奪えたのに。
半身?奪う?
自分で思ったことだが、意味がわからない。
なぜ半身などと思ったのか、なぜ奪うという表現なのか。
俺は生まれつき悪魔だし、ディーヴァを獲物として欲しいなどと思ってはいない。
アレは俺の獲物ではなく、魔帝のモノ。そう言い聞かせるべきなのだ…。
それに、今のディーヴァはみたところ、普通の人間とはかけ離れているのだから。
グリフォンが人間の食事に辛口コメントしながらも舌鼓をうっていると、そのうちもう一人の魔帝の腹心が戻ってきた。
ファントムだ。
なんだここはいつから悪魔たちの愉快な食卓になった。いつから憩いの場になった。
悪魔たちを和ませてしまう天使の力ってすごいと思う今日この頃。いや天使関係ないか。
「くそ!だから自分の子供を城の中に遊ばせておくのはいやだと言ったのに!ここは保育所じゃないぞマネアラァ!
何匹もいるとはいえ、かわいい子供にあんな真似をしたあの男許さん!!
しかし強かった!!腹立たしい!!次は!負けん!!」
だが、戻ってきたファントムはやけに気が立って大声をあげてテーブルに手を叩きつけていた。口から火でも吹きそうだし、叩く衝撃でいつ隣で食事中のグリフォンが怒りださないかヒヤヒヤもする。
ネロアンジェロといい、ファントムといい、一体どうしたというのか。様子がおかしい。
二人共に、ダンテという侵入者との戦闘が原因なのだが、それをディーヴァは知らない。
「お茶どうぞ」
「…あとその……メシも頼む」
「あ、はい。そう思って今用意してます」
目の前に置いた、暖かい食事。
それを一口食べ、ふにゃり。ディーヴァは表情筋が緩んでいるのを見てしまった。
笑った。目尻に柔らかな皺を寄せて、悪魔たるファントムが笑った。
「…美味い。
妻が用意する食事にゃ負けるが、その次に美味い!子供にも食わせてやりたいなぁ」
「ありがとう、ございます」
悪魔は怖い。怖い…のだが。
悪魔や種族、そういうのを抜きにしたら、この人(人じゃなくて悪魔か)は、愛妻家で子煩悩な父親なのだろう。
正直そう思えたし、そう見えた。
今は亡き、自分の父親を思い出した。
「家にかえりてぇ。妻が巨体を揺らしてそのへんを闊歩して歩く、あの温かい場所に」
食事も終え、腹も満たされ落ち着いた様子のファントムが、魔界の一角に置いてきたという妻とやらについてぼそりと漏らした。
悪魔自ら身の上話など珍しい。
グリフォンとファントムの食後の茶を、そしてネロアンジェロへ追加の茶を給仕していたディーヴァも、悪魔たちもその言葉に耳を傾ける。
「温かい場所?
貴様のいる場所は温かいではすまんだろう。
でかい蜘蛛が吐き出す炎で一面焼け野原」
「煉獄と違って常に火の海ってわけではないぞ!それに妻の炎は温かいだろうが!」
「ほのおタイプじゃないやつからみれば暑苦しい!
ましてや住んでいる悪魔は、虫やらハエトリソウやらムカデやら異形ばかり。きっしょく悪いったらありゃしねェ!」
「仲間を愚弄する気か!!」
ぺっ、と吐き出すようにグリフォンが言えば、真っ赤な顔をして抗議するファントム。
グリフォンはそれを毒を吐いて涼しい顔で受け流す。素が出てしまっているが。
対して、ネロアンジェロは、我関せずと仮面の隙間から茶を啜るのみだった。